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第92話 ロージナの試練

「うん、タラサちゃん行ってくるね。大丈夫。お姉さんを信じなさい。」

ロージナは大回廊左の部屋に向かって歩き出した。シェロは大回廊右斜め下のスイッチの上に戻る。

ロージナの進行方向の扉の鉄格子がガシャンと開き、Jはロージナに憑依し、その部屋の中へ歩を進める。扉の横の石板にはこう書かれている。『此の先、一人のみ進入を許す。其の者、雷を操り身軽である者也。其の力試さしてもらわん。』

 ロージナが部屋に入ると、扉がガシャンと閉まり、鉄格子が上から降りてきた。

 ロージナの目線の先には、透明な壁、ガラスのような物質の向こう側に部屋が見える。

「あそこに行けばいいのね。でも……」

ガラスの壁の下方向は無限に続きそうな奈落が広がっており、落ちたらひとたまりもないだろう。ロージナは上を見ると落果遺物のキューブの下面にフックのような返しが付いたものが空中に浮いている。ロージナはそのフックにウィップロープを絡みつかせ、雷の魔法を詠唱する。

「雷よ。我が体に宿りて放射せよ。ケラヴノス!」

ロージナの体がバチバチと帯電しだし、ウィップロープを通して落果遺物のフックへ電流が流れる。キューブ状の落果遺物に電流が通ると、その表面の溝に青白い光が這い走り、ヴオンという起動音とともに落果遺物が上昇した。それに釣られている形でロージナも同様に上昇する。そして上に上がっていくと、他の中に浮かんでいる落果遺物が部屋に複数見受けられる。ロージナは開いている左手でもう1本のウィップロープを掴み、正面にある落果遺物キューブのフックに向かってウィップロープを伸ばして掴んだ。そして右手のロープをほどき、左手から通電の魔法ケラヴノスを利用してさらに上昇する。すると、別のキューブが空中を左右に動いている。ウィレナはそのキューブについているフックにターゲットを合わせ、ロープを伸ばす。ロープ先端のドラゴンクロウが巻き付き、ロープをガシッと噛んだ。そして空中を左右移動するキューブに移動し、左手の上昇するキューブからロープを外す。左右移動しているキューブの先には、透明な壁の上を往復しているキューブがあり、ロージナはそちらへロープを伸ばす。そうして透明な壁の向こう側に行ったロージナは。ロープを外し落下する。

奈落へ落下していくロージナは、空中で一番下にあったキューブのフックにターゲットを合わせ、そこにウィップロープを投げて体勢を整える。そしてそのキューブに通電して下に降下し、床面に着地した。

「ふぅ……いいスリルだったわ。」

ロージナは透明の壁の向こうに見えた扉の奥へ進む。

――ここも迷路上になっててさらに上に進むとパーティメンバー全回復のアイテムがあったりする。

――もし奈落に落ちたらどうなるの?

――不思議な力でダメージを喰らった状態で入り口に戻される。

ロージナがマネキンの部屋に入ると、ロージナにスポットライトが当たり、出来た影が蠢いてマネキンまで移動し絡みつく。

「これがウィレナちゃんたちが言ってた自分の影ね……いいよ、かかっておいで!」

 シャドウロージナはウィップロープを伸ばして中距離から鞭攻撃を仕掛けてくる。ロージナはそれを左右のステップで躱し、鞭攻撃の往復時、シャドウロージナが鞭を手元に引き戻すタイミングで同時にシャドウロージナに詰めより、ドラゴンクロウを手にハメてシャドウロージナを切りつけた。シャドウロージナはのけ反り、距離を取ろうとバックステップを行う。シャドウロージナはバックステップと同時に引き打ちを行い攻防一体の技を見せる。が、ロージナは前転ローリングの無敵時間を利用し、バックステップと同時にシャドウロージナの間合いを詰める。そして再び、ドラゴンクロウによる引き裂き攻撃をシャドウロージナの胴体めがけてお見舞いする。

シャドウロージナは鞭での攻撃を諦め、魔法の詠唱を行い始める。詠唱の声は聞こえないが、詠唱時間から察するに、雷撃光線魔法、グロムレイだろう。ロージナは詠唱中のシャドウロージナに対し、ドラゴンクロウの連撃を喰らわせる。

――敵の詠唱中はノックバックの発生しないスーパーアーマー状態だから、ある意味殴り放題。

――やっちゃえ。

シャドウロージナの詠唱が終わるまでの数秒で10数発のクロウラッシュを叩きこんだロージナはバックステップで一旦距離を取る。そしてシャドウロージナはロージナに向かって指を差し、その指先から電撃光線を放った。ロージナは電撃光線が発射されると同時に一旦右にステップで回避し、光線に向かって左斜め前に前転ローリングで光線をすり抜ける。シャドウロージナは体ごと光線を回転させ、ロージナに当てようとするが、ロージナはドラゴンクロウで攻撃しつつシャドウロージナの後ろに回り込む。シャドウロージナは光線の攻撃をやめ、別の魔法の詠唱を始める。その隙にロージナはドラゴンクロウの連撃を行いシャドウロージナのライフゲージをどんどん減少させていく。シャドウロージナがうずくまると同時に、ロージナはバックステップを2回行い距離を取る。2回目のバックステップとほぼ同時に、シャドウロージナを中心に同心円状に稲妻のバリアが展開される。そしてシャドウロージナを中心とした6角形の頂点の延長線上に、雷のビームが放射されそれが回転してロージナを襲う。ロージナはウィップロープをシャドウロージナに絡みつかせ、自身を避雷針に雷ビームを受け、それをシャドウロージナに返した。

自身の雷の直撃を喰らったシャドウロージナはその体から黒い煙を出し、プスプスと焦げ臭いにおいがあたりに充満する。そしてシャドウロージナのライフゲージが0になり、シャドウロージナはバタンと倒れ、その体から影が地面に染み込んでいき、その場にはマネキンだけが残された。

「まぁ、こんなものか。魔人族、舐めないでよね。」

ロージナは倒れたマネキンをまたぎ部屋から出ていく。

帰りの落果遺物の部屋では、透明な壁がなくなっており、部屋の中央には向こう側とこちら側を往復するフック付きの落果遺物が浮遊している。ロージナはその落果遺物のフックにウィップロープを絡みつかせ、反対側へ移動した。そしてロージナが部屋から出てくると、ウィレナ達が労いの言葉をかける。


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