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第88話 ウィレナの試練

ウィレナ(J)はその模型に近づき、模型に手をかざし魔力を込める。すると、ヴオンという起動音とともに壁一面の巨大なピンボールに青い光の線が這うように光る。それと同時にピンボールの左上から落果遺物の文様が入った球体が落ちてくる。どうやら、手元の模型と壁の模型は連動しているようだ。だが、落ちてきたのはそれだけではなかった。ドスン、ドスンと左右から骨の怪物、スケルトンが4体、天井に開いた穴から落下してきた。スケルトンたちは剣や槍を持っていかにも戦闘が開始される装いだ。ウィレナはピンボールの球を見ながらスケルトンたちも視界に捉えながら模型を操作する。模型と壁のギミックは連動しており、魔力を込める箇所によってピンボールの壁やハッチが前後に動き、球を誘導できるようになる。

ウィレナは模型を操作してボールを誘導していく。それを妨害するかのように背後のスケルトンがウィレナに攻撃を仕掛ける。ウィレナは音を頼りに一旦模型から離れて、バックステップで攻撃を躱す。スケルトンたちが模型の周囲に集中したのを見計らって、斬撃の魔法を繰り出す。

「王家に伝わる斬撃の共鳴、瞬き、きらめきの残光、その根源を成す刹那の振動、受けて見よ!ヴォラルネイル!」

ウィレナは呪文とともに居合の如く抜刀しその刀身を朱く発光させる。そしてウィレナがその場から消えたと思うと、次の瞬間、模型を中心に反対側にウィレナが出現し、ウィレナの元居た個所と直線でつなぐ経路の空間が揺らぎ、光の斬撃がスケルトンたちを襲った。スケルトンたちは上半身の骨を飛び散らせ下半身がその場に倒れ込む。ウィレナは再び模型に近づき、ボールをパチンコの如くギミックに魔力を込め、扉の下部へ誘導していく。ボールが青色に光るゲートを通過すると、四隅の天井の穴から、中心に魔力水晶をコアとした粘液状のどろどろしたモンスター、ヘドロスライムが落下してきた。べちゃべちゃと音を立ててゆっくりとウィレナに近づいていくヘドロスライム。ウィレナはそれを無視して、ボールを誘導していく。ボールが台の上に来たら、それを押し出すギミックに魔力を込め、穴に落ちそうになったら魔力を移動させ穴をふさぐ。そうしてボールを誘導していく。そして次の青い線にボールが到達すると、頭上の穴から豚の顔をしたずんぐりむっくりの人型のモンスター、オークが2体、落下してきた。オークたちはスケルトンと同様に槍と剣をそれぞれ携えて、簡素だが鎧や兜も身に纏っている。ウィレナは、スライムが近づいてきたタイミングで、一旦後方に下がり、細剣を抜刀し、地面に突き立てる。

「凍結せよ。その身を貫け。冷徹を重んじる無垢なる刃。氷冷の柱。伝播し、凍てつき、突出せよ。過負荷なる刀剣!フレッドイスパーダ!」

突き立てた細剣を中心に魔法陣が展開され、スライムとオークの足元が青白く発光する。次の瞬間、発光した足場から無数の氷の細剣が飛び出で、スライムとオークを貫く。

「ブヒィイッ」

下半身を貫かれたオークは、足を凍結され身動きが取れなくなる。一方、スライムは、飛び出た細剣によって魔力水晶を貫かれ体を霧となって霧散させるものや、細剣が魔力水晶を外れ全身を凍結されるものがいた。

――今のうちに

周囲のモンスターが動けなくなっている間に、ウィレナはギミックを解いていく。そして最後の発光線を通過すると天井の穴から2つ首の狼、しっぽは蛇になっている番犬、オルトロスが2体降って来た。ウィレナはオークやスライムに攻撃したのと同様に、氷の細剣、氷刃魔法でオルトロスの足を凍結させる。その隙に、ウィレナは、扉の下にあるゴールにボールを誘導し扉を開けた。ウィレナはすぐに走り出し、足の氷が溶けて襲い掛かってくるオークとスライムを前転ローリングで回避し、足が凍結したオルトロスに嚙まれないように注意しながらあいた扉を進む。 

扉の先は、30メートルほどのドーム状の空間になっており、中央にはマネキンのような人型の人形が1つ立っている。ウィレナがその空間に入ると、後ろの扉がドスンと閉まり、ウィレナに対してスポットライトのようなとても眩しいライトが照らされる。そしてその光によって出来たウィレナの影がもぞもぞと蠢き中央のマネキンに向かって移動し始める。

ウィレナの影はそのマネキンに絡みつきその姿を徐々に変形させていった。瞬く間にその影は形を帯び、黒いウィレナの姿そっくりとなり、影の細剣を抜刀する。

「私の知らない魔法……!自分と戦うなんて初めてなんだけど……!」

ウィレナも抜刀し自身の影と向かい合う。その頭上には体力ゲージと『シャドウウィレナ』という名前が表示されていた。

――攻撃モーションも使う魔法もウィレナと同じ『シャドウウィレナ』だ。こっちのパラメータを基準に敵のステータスが決められるから、防具を装備していない状態だと紙装甲になる。

――そのための薄着?

――全裸に近いほうがいろいろ便利だからな。

――語弊が生まれそうな言い方ね。

シャドウウィレナは剣を自身の前に構えて、呪文を詠唱し始める。ウィレナはその隙を見逃さずに、自身の細剣に魔力をエンチャントし、連続突きをお見舞いする。シャドウウィレナはひるんでバックステップを計り、細剣に魔力をエンチャントする。シャドウウィレナはウィレナに対し魔力がエンチャントされた細剣を振るう。ウィレナはその攻撃で細剣で受け流すパリィを行い、シャドウウィレナの体勢を崩す。体勢の崩れたシャドウウィレナの心臓に細剣を突き立て、貫き、押し倒す。シャドウウィレナの頭上の体力ゲージが30パーセントほど減少する。

――いいダメージね。

――最強クラスの武器使ってるから。

シャドウウィレナは倒れた状態からバク転の要領で起き上がり、その反動で胸部に突き刺さった細剣を抜きバックステップを2回行い体勢を整え、ウィレナに対して剣線の連撃で攻撃する。ウィレナはその攻撃を前転ローリングで回避し、シャドウウィレナの後ろに回り込む。そしてシャドウウィレナに対して切り上げ攻撃を行い、シャドウウィレナの腕を切断する。が、実際は切断されず、その体をすり抜け剣線が通った後のエフェクトがその身に刻まれた。シャドウウィレナの体力ゲージが10パーセントほど減少する。

シャドウウィレナはウィレナに対し詠唱破棄による凍結魔法を繰り出す。詠唱破棄は通常の詠唱ありの魔法より魔法の発動が早いが、威力は弱めだ。シャドウウィレナの足元からウィレナに向けて氷柱が幾本も伸びていきその身を貫かんとする。ウィレナはそれをサイドステップで躱し、前方ステップで間合いを詰め突き攻撃の連撃をお見舞いする。シャドウウィレナはダメージを減らそうと、ウィレナと同様に前方ローリングでウィレナに近づき無敵時間を利用する。が、ウィレナはそれを読んで突き攻撃を途中で中断し、薙ぎ払い攻撃を回避先に向けて攻撃する。見事、回避読みで仕掛けた攻撃はシャドウウィレナに命中し、体力ゲージを10パーセントほど減少させた。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」

……と、シャドウウィレナは咆哮を上げる。その声はウィレナの声を低くしたような叫びだった。シャドウウィレナは地団太を踏むように足を地面になんども叩きつける。その足が踏んだ地面が割れ炎が噴き出し、その炎が波打ってウィレナに襲い掛かる。地面を踏むリズムに合わせて、ウィレナは炎に向かって前方ローリングを行い、無敵時間を利用して炎の波をすり抜けていく。一気にシャドウウィレナに接近したウィレナは、シャドウウィレナの心臓めがけて突き攻撃を連打する。シャドウウィレナの体力ゲージが大きく減少し、後ろにのけぞるが、シャドウウィレナもバックステップを行い距離を取り、ウィレナと同様に突き攻撃を連続で仕掛ける。

ウィレナはその連撃を細剣の腹でいなし、リズムよく連撃をパリィしていく。最後の一撃を剣で受け流し手首を返してシャドウウィレナの細剣を地面に突き立てさせ、その細剣を遡るように剣の背を滑らせてシャドウウィレナの首めがけて細剣を振り払う。シャドウウィレナはそれを背中を添わせることで回避する。ウィレナの切っ先がシャドウウィレナの顎をかすめ、ウィレナは剣を空振る。シャドウウィレナは腰を伸ばして振り向きその反動で剣を逆手に持ち右後方にいるウィレナに突き攻撃を仕掛ける。ウィレナは右足に重心を乗せ、その右足を軸に腰を回転させ、振り終えた細剣を人差し指を軸に回転させ逆手に持ちかえる。そして細剣を握ったもの同士、相手の頭部をめがけて互いに細剣を突き立てる。

ズブリッという音がドーム内に響くが、両者ともに動かない。そして一時の時間が流れたのち、ウィレナがガクッと膝をつく。が、次の瞬間。ドサッっとシャドウウィレナが倒れる。シャドウウィレナの頭部にはウィレナの細剣が、ウィレナの体にはシャドウウィレナの細剣が掠めた跡があり、その剣は地面に突き刺さっている。

「自分に負けるわけにはいかないのよ。」

ウィレナがそう独り言を言うと、何やら声が聞こえる。

「汝は試練を突破した。我への謁見を許そう。」

「今のは、レーヴェリオンの声……!」

レーヴェリオンの声が聞こえると同時に鉄格子で閉ざされていた入り口の扉が開く。その向こうにいたモンスターは消えていた。ウィレナは元来た道を戻り、壁のピンボールの部屋へ入り、模型を横切り外へ出ていく。すると、Jたちが待つ広間に上の扉へ進む光の階段が人一人が登れる幅で出現していた。


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