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第79話 善悪のギロチン

「我は平穏を求める。だがレーヴェリオンはそれを許さぬ。人の本質は争いだと考える奴はいずれここに攻め入る算段なのだ。そのために我は樹上世界の物を落下させ、そこからの反響により下層世界の情報を得ていたのだ。J、ウィレナよ。其方らをスパイとして落下させたのと同じようにな。」

「!?」

一同は驚愕する。

「ウィレナよ。貴様は我が子だ。」

「マジで!?ウィレナ、ヴォルクルプスの娘だったの?すごい!樹上世界でも下層世界でも王族じゃん!というか落果遺物ってそのために落ちてきてたんだ!」

「薄々そんな気はしていたわ。『お父様』。」

「ウィレナお姉さまは、父王とメイドの間に出来た妾の子なのですわ。父王はメイドを身籠らせた後、下層世界に落としお姉さまを下層にて産ませました。お姉さまは魔法を使えるからきっと王族の影武者として召し抱えられると考えたうえでの行動でしたのよ。」

「私が脱出に使ったポッドと同じかな……」

ロージナは神妙な面持ちで独り言を呟く。

――考えるとレーヴェリオンも結構抜けているよな。

――敵対しているところからの物を身内として召し抱えるなんてね。

「そしてJ、お前は、お前の視覚を記録、保存し、下層世界の現状を我と共有するために下層世界に我が送り込んだ、魔人族をベースに作った人造人間だ。お前は記憶喪失だと考えていたようだが、違う。記憶など初めから存在していないのだ。」

①『ふざけるな!』

②『俺が作られた人間……?』

③『そうなのか』

④『だからこんなハンサムなのか……』

Jは3番目の選択肢を選んだ。

『そうなのか』

「J殿……もう少し驚いてもいいのでは?」

「そう……全てヴォルクルプスの手の上だったってことね。気にくわないけど。」

目の前が上昇し、気づくと元の王城の王の間に全員が戻っていた。全員が雪崩のように入り込んできた情報の処理を行うために口を噤んでいると、ロージナが口火を切った。

「ヴォルクルプス王、なぜ私と妹を拉致したの?」

「簡単な理由だ。魔人族のサンプルが欲しかったのだ。別にお前達である必要もなかった。非礼で詫びよう。すまなかった。」

「いい!今更謝られたって、私の心の傷は癒えたりしない!それより!妹はどこ!この世界にいるの!?」

「ロージナよ。貴様の妹は既にこの世界にはいない。貴様が脱出した後に妹も同じく下層世界に落ちていった。」

「そう……また探さなきゃなー。」

――意外と軽いのね。ロージナ。

――ちなみに妹はこのルートでは出てこない。『魔族ルート』って言われるルートで出てくる。

――そうなの、会えないなんて可哀そう。

「Jよ、我が使い魔よ。では見せてもらおう。貴様のカルマを。」

 ヴォルクルプスが杖の柄でコンッと床を叩くと、Jたちとヴォルクルプスの間の空間にギロチン台が出現した。そのギロチンの刃は光で出来ており、本来の冷徹な印象とは違った雰囲気を醸し出している。

「カルマ?なんのこと?」

――正邪ゲージの意味がここで出てくる。

「Jよ、貴様が行ってきたこれまでの所業、その所業が善なるものか、それとも悪なるものか、このギロチンが示してくれる。」

ヴォルクルプスが再び杖をコンッと鳴らすと、Jの体が光るロープで拘束される。

「J!大丈夫⁉」

Jの体は宙に浮き、ギロチン台へと運ばれていく。そしてギロチンの刃の下に首をあてがわれる。

「ヴォルクルプス王!これは何事か!」

マウガンが憤慨する。

「この処刑台は善悪を断罪するギロチン台だ。首を差し出した者のこれまでの罪によって斬首されるかどうか決まる。そのものの善性が優勢であるなら処断刃はすり抜ける。悪性に偏っているならばその悪性が増幅し斬首される。」

「Jに罪なんてあるわけないよ!」

――このセリフ、邪ゲージが増加してても言う。

――罪深いわね。

「さあ、我が使い魔としてそのカルマ見定めさせてもらおう!」

「ダメーーーーーー!」

 タラサは目を両手で覆い見たくないとうずくまる。ウィレナは駆け寄ろうとするが、気づくとウィレナ達の足は光のロープで床に固定されており、いつの間にか身動きが取れなくなっていた。

ガコンッと処断の刃が切って落とされる。ギロチンの刃は左右のギロチン台の溝に沿ってスーッと落ちていき……

ドスッ!

 ギロチンはJの首をすり抜け下まで落ちて台に突き刺さった。

「J……死んじゃった……?」

タラサは前を見れない。仲間の死ぬ姿など見たくなかったからだ。ウィレナはタラサに声をかける。

「タラサ、目を開けて大丈夫よ。」

「Jはどうなったの……?」

「Jは無事だよ、タラサ。ね、マウガン。」

「うむ。どうやらギロチンはJの首をすり抜けてしまったようだ」

「よかったぁ……」

タラサはぺたんと座り込む。ヴォルクルプスは杖の柄で床をコツンと叩くと、ウィレナ達とJの光のロープの拘束が解け、ギロチン台が消滅し、Jはスタッと着地する。

ウィレナはJに駆け寄りJを抱きしめる。

「よかった……死んじゃったかと思ったじゃない!」

「神託は下された。Jよ、我が使い魔よ。我が命に応じよ。」

「勝手に生み出して勝手に裁いて……!何が王よ!何が神よ!」

ウィレナは憤慨する。

「そうだそうだ!ヴォルクルプス王様は勝手だぞー!」

タラサも便乗する。シェロ、マウガン、ロージナは武器を構えじっとヴォルクルプスを睨んでいる。

ヴォルクルプスはJ達に向かって一言詫びの言葉を入れる。

「ウィレナ達よ。我が非礼を詫びよう。どうか静まり給え。我は争いを好まぬ。」

「ヴォルクルプス王、いえ、父上とお呼びしても?」

「構わぬウィレナよ。」

「なぜこのようなことを?」

「我は平穏を求める。平穏は樹上世界の最優先事項だ。我が兵にも我が民たちにも、それを説いておる。故に、それを脅かすものを我は全身全霊を持って排除すると誓ったのだ。Jも例外ではない。私が造りだした兵士であるJに罪を重ねてもらっては民に示しがつかぬ故にだ。」

「なぜ私達を攫ったのですか?」

マウガンが問いかける。

「魔力は高きから低きへ流れる。其方たち下層世界の住民が樹上世界の人間に接すると魔力の流れから樹上世界の人間はそれが下層世界の人間だと気づく。すると樹上世界の人間は恐怖におののき、そして恐怖は伝染する。そのようなことを避けるために、わが近衛の兵を使い秘密裏に其方たちを輸送したのだ。これに関しても非礼を詫びよう。」

ヴォルクルプスは目を瞑りそしてゆっくり開いて、Jに話しかける。

「Jよ、此度の任務、誠にご苦労であった。」

『任務?』

「其方が生きてこの城まで戻ってくること。それが其方に与えた唯一の命令である。記憶には無かろうがな。無意識下で我がもとに帰ってくることを刻み込んであったのだ。其方が、下層世界を見て、聞いて、感じたこと。出来た仲間、友、敵、それらが世の平穏の為に役立つ重要な要素である。そしてJよ、ここに帰って来た其方に最後の任務を与える。」

①『なんだ?』

②『断る』

③『もう働きたくない。』

Jは1番目の選択肢を選んだ。


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