第76話 ウィレナの妹、シスネ
「3人と一緒に捕まった後の話よ。私だけこの城の別室に連れていかれたの……」
Jの目の前が暗転して、すぐにどこか女の子らしい感じだが、豪華に飾られたこの城の1室らしき部屋の中に視界が明転する。
ウィレナはどうやらベットの上にあおむけになっており、手かせを嵌められている。ようだ。ベットのレースの天蓋がひらひらと舞っている。ウィレナはスッと起き上がると、左に見える扉がガチャっと開き、フリフリの真っ赤なドレスを身に纏ったウィレナに似た少女が入って来た。その少女はウィレナに対してスカートをつまみ上げ頭を下げる淑女的な挨拶を行うと、続いてウィレナの目をじっと見て話し始める。
「お初にお目にかかりますわ。ウィレナお姉さま。わたくしはシスネ。あなたの腹違いの妹にございますの。」
「……妹……?……シスネ。聞きたいことは山ほどあるわ。その前にまずこの手かせを外してくれないかしら?」
「あら、そうでしたわね。ではちょっと失礼致しますわ。」
シスネと名乗る少女はベッドの上に登ってきてウィレナに顔を近づける。そして鎖骨、首筋、耳の裏へと鼻を忍ばせ、クンクンとにおいを嗅ぐ。
「はぁああああっ。とても良い香りですわ。ウィレナお姉さま……」
そしてシスネはウィレナの耳にかぷっとかぶりついた。
「ひぅっ!」
「ひゃっぱり。おねえひゃまもおみみがよわいんでひゅね……かわいい……」
「いいから……!さっさと外しなさい……!」
シスネの手がウィレナの太ももをなでる。そしてどんどん上半身の方へ向かって指を滑らせていく。
「やめなっ……さい……」
シスネはウィレナの脇から首筋をツーっと舐め、ウィレナの体がびくんっと跳ねる。
「うふっ。お楽しみはこれからですわ。お姉様。」
「……シスネ!」
ウィレナはガバッと起き上がりシスネを逆に押し倒しシスネを抱き締める。
「おっ!?おっお姉様!そんな大胆な!」
シスネは目をぐるぐると回し混乱している。
ーー何度見てもよき百合だ
ーーJは何を言っているの?
「そんな……!お姉さまの方から来るなんてわたくし想定外ですわ!」
「シスネ……」
ウィレナは自身の下敷きになっているシスネに顔を近づける。
「まさかお姉様……!わたくしとキキキキキキキキッスをぉ……!」
シスネは思い切り目を瞑るり唇を伸ばした。
ウィレナはそのままシスネの顔の横に顔を近づけ。
「ひゃぁあああん!」
かぷっとシスネの耳を唇で甘噛みした。
「お返しよ。」
「はわっ。はわわっ。はわわわわわわわっ。」
「シスネ。」
「はいぃ……!」
「私が姉っていうのはどういうこと……?私のお母様は私を身ごもっていた時に下層に落果してその後私を生んだ。あなたが私の妹と言うことは……あなた、父親は誰?」
「はぁ……はぁ……わたくしの父はこの国の王、ヴォルクルプスですわ。」
シスネはウィレナに馬乗りにされながら答える。その口には涎が垂れていた。
「ヴォルクルプス……そいつが私の本当の父親……。」
――前にウィレナは姫じゃないって言わなかったっけ?
――俺は「この国」の姫じゃないって言ったんだ。
――あー。そういう。ネタバレにギリギリ配慮してたのね。
ウィレナはシスネの目を見てシスネに自分の答えを言う。
「あなたの母親はこの国の女王(王妃?)なのね。そうか。腹違いの妹ということ……」
「正解ですわ。お姉さま。私がこの国の第一王女のシスネです。……このままの体勢でもいいのですが、わたくし、そろそろ真面目な話をしたいのです。」
「ええ、そうね。どくわ。はい。」
ウィレナはシスネに馬乗りの状態から ベットの上に移動し、シスネに手を差し伸べる。シスネはその手を取り、礼を言った。
「ありがとうございますわ。」
ウィレナとシスネはベッドの上に向かい合うように女の子座りの体勢になり、互いの目を見つめ合った。
「ではお姉さま。何から聞きたいですか?」
①『私の仲間達をどうしたの?』
②『ヴォルクルプスについて教えて。』
③『なぜ私が姉だと分かったの?』
④『気持ち良かった?』
Jは1番目の選択肢を選んだ。
『私の仲間達をどうしたの?』
「お姉さまと一緒に捕らえた3人は離れの塔に軟禁しております。」
「解放して頂戴。」
「それは出来ません。」
「どうして?」
「下層の者は不浄の存在。もし下層の者が樹上世界に来たと知れたら、人々は恐怖におののくでしょう。あの3人は近いうちに処刑されるはずですわ。」
「そんな……!シスネ、やめさせて!」
ウィレナはシスネに顔を近づけ懇願する。
「ひわっ!お姉さま近いです……」
①『下層世界の人間が不浄の者?』
②『私の仲間は人々を恐怖に陥れたりしない!』
③『処刑を止めて見せる!』
Jは①の選択肢を選んだ。
『下層世界の人間が不浄の者?』
「ええ、樹上世界の人間は皆魔法が使えます。それはこの世界にある魔力水晶から食物にはマナが流れ、そのマナを摂取することで体内に魔力回路を形成、魔法を行使できるのです。」
「魔法が使えないことが不浄であると……?」
「ええ、樹上世界の人間は幼少よりそういった教育を施されます。生まれながらに魔法の素養がない場合、産婆にその場で殺されます。」
「そんな……ひどい……!」
――キナ臭いわね
「そして不浄の者は魔法を使えない下等生物であるにもかかわらず、強大な膂力を行使し本能のままに暴れまわる蛮族であると、また、魔力を持たない人間は無意識に魔力を吸い取る性質を持つという、樹上世界の民はそう教わっています。」
「そんなことない!あなたも会ってみればわかるわ!タラサもシェロもマウガンも!下層の人々は皆そんなことしない!魔法が使えないだけの普通の人間よ!」
「お姉さま。残念ですが、わたくしを含め、皆そう教わってきているのです。今更変えられませんわ。正直、わたくしもウィレナ様がわたくしのお姉さまだと分かるまではとても怖かったのです。」
「そうなの……でも心配いらないわ。私の仲間たちは皆安全よ。」
「それを判断するのはお姉さまではありません。わたくしたちの父王、ヴォルクルプスですわ。」
「ヴォルクルプス……その方が私の本当の父親……」
「父王は樹上世界の平穏を望んでおります。争いごとは好みません。」
「その割に兵士はちゃんといるのね。私達を拉致したみたいに。」
「ええ、自衛のための暴力は必要ですわ。」
「あれのどこが自衛なの……?」
「わたくしの兵は精鋭ぞろい。お姉さまとお仲間には傷一つつけずお運びしたはずですわ。それとお姉さま、お姉さまと一緒にこの世界に来た、魔人族の女ともう一人の男……その男に我が父王は大変興味がおありのようです。」
「それってどういう……」
ウィレナとシスネが言い争いをしていると、部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえてきた。
「シスネ様。ヴォルクルプス様がお呼びです。王の間に来てほしいとのことです。」
「分かりました。すぐに参ると伝えて。」
「お姉さま。お楽しみの続きはまた今夜致しましょう。それまでこの部屋でごゆるりとしていてくださいまし。」
シスネはウィレナに耳打ちするとベッドから降り、部屋の入り口に向かっていく。
「ああ、そうそう。お姉さまのお仲間の処刑は明後日に秘密裏に行われます。何かお伝えしたいことがあるならそこにある紙と万年筆でお手紙をお書きになるとよろしいですわ。そのくらいの慈悲はして差し上げます。」
「余計なおせわよ。」
「ふふっ。そのしかめっ面を発情した猫のようにさせるのが楽しみですわ。」
バタンと扉が閉まり、外から鍵を掛けられる音が聞こえる。




