第73話 馬上戦
――この後どこ行くの?
――情報屋が言っていた卸問屋のところに行く。そこでイベントをこなせばウィレナ達が捕らえられている城までこの鎧を持ったまま行けるようになるからな。
――城内での攻略が楽になりそうね。
――なかなか分かって来たね。
――ふふふっ。
ヌルは褒められて上機嫌だ。
Jとロージナはガシャンガシャンと鎧を纏い卸問屋の場所を目指す。道中、兵士たちがJとロージナを探しているが、難なく2人は通り過ぎていく。そして食料品の看板が出ていて、大量の木箱が並んでいる卸問屋までたどり着いた。卸問屋の店主に話しかけると、店主は困ったような表情で2人に説明しだす。
「おお、護衛軍の方々、お願いがあります。」
『どうした?』
「王城に荷物を輸送したいのですが、道中の廃工場に、主のいない野良ケッツァーが徘徊しているそうなのです。それで護衛軍の方々に護衛を依頼したく考えていたところ、ちょうど来ていただき、これは僥倖にございます!どうか、王城まで私たちの護衛をしていただけないでしょうか?」
『ああ、いいだろう。』
「ありがとうございます!では、出発の準備がございますので、兵士様方も出発の準備が整ったら私にお知らせください。」
『準備は整った』
「お早い。それでは参りましょう。お二人はこちらのケッツァーにお乗りください。」
商人は店の横に泊めてある馬車に乗り御者として手綱を握ると、馬型ケッツァーに手綱を打ち馬車を走らせる。Jとロージナは商人が用意した馬型ケッツァーにまたがる。鞍も鐙も付いており見た目以上に安定感のある乗り心地だ。
――操作方法は馬と同じ。
Jは馬車の右側後方に、ロージナは左側後方に付き護衛として移動する。馬車が街の入り口まで移動すると、行きではいなかった門番の兵士達が商人を見送る。
――こいつらはどこから湧いたのかしら?
――俺たちを逮捕しようとした兵士達だと思う。あのイベントやらないとこいつらいないからな。
Jたちは兵士たちの見送りを受けセプティモの街を後にする。
馬車が土の地面を進み、街道らしき道を進んでいく。後には馬車の轍とケッツァーの点のような足跡が続く。既にここは雲の上だが、さらに頭上には世界樹の葉が広がっており、その隙間から青空が覗き見られ、日光が降り注いでいる。
――この樹上世界はどうして浮いているの?
――世界樹の木の葉と、固体化した雪状の雲が混じり合って大地を形成してるらしい。街を探索して図書館に行くと、そのあたりの世界の成り立ちとかが書いてある本がある。あと世界樹の葉がそこに積もって腐葉土と化したのが今進んでいる地面らしい。
――今まで走りっぱなしだったからこんなゆっくり進むのは初めてね。
――プレイ済みだともどかしいけどな。ただ、それもここまでだ。
一行が道を進んでいくと、道の途中で平原右手にて犬型のケッツァー3匹が上空のドレイクタイプの飛翔モンスター2匹に向かって吠えている。馬車がそれらの視界に入ると、犬型ケッツァーと翼の生えたトカゲタイプのモンスター、ワイバーンが馬車に向かって襲い掛かってきた。
「兵士様方!進行方向3時に野良ケッツァーにモンスターです!討伐をお願いします!」
御者は手綱をバチンと打ち馬車を引いている馬型ケッツァーに加速を促す。
Jは先に飛んできたワイバーンにターゲットをとりロージナに指示を出す。
『ロージナ、あいつを狙え!』
「分かったよー!」
ロージナはカウボーイの如くドラゴンクロウの付いたウィップロープを頭上で回転させ、ワイバーンに向け放った。ドラゴンクロウはワイバーンにの翼に噛みつき羽ばたけなくなったワイバーンは地面へと落下する。その地面では犬型ケッツァーが商人が手綱を握る馬型ケッツァーに噛みつこうとしている。Jはロージナにワイバーンを任せ、犬に対し馬上からハンマーでまるでゴルフをするかのようなスイングで犬を打ち払う。犬は吹き飛びその体がバラバラになるが、まだ残りの2体が襲ってくる。Jは馬車の前方に馬を走らせ、残りの2匹がそれぞれ馬型ケッツァーに襲い掛かるのを前もって防いだ。Jは右側から近づいてくる犬を1匹ずつ殴って処理をし、ロージナの方へ減速して移動する。ロージナは1匹のワイバーンをウィップロープに通電し倒していた。ロージナは2匹目のワイバーンにドラゴンクロウを嚙みつかせ、地面へ引き寄せる。Jはその引き寄せたワイバーンめがけてハンマーを馬上から振り下ろして地面に叩きつけた。
「さすが兵士様!ですが10時の方向!ワイバーン3匹がやってきます!」
Jはロージナの後ろを通ってから加速し馬車の左斜め前に移動する。
『ロージナ!拘束しろ!』
「行っくよー!」
ロージナはドラゴンクロウをワイバーンに投げ、噛みつかせ力の限り引っ張る。ワイバーンがJの攻撃の届く高さまで来ると、Jは鐙に立ち乗り状態になりハンマーの棘部分で殴りつけた。ワイバーンは血を流しながら地面に叩きつけられ後方にゴロゴロと転がっていく。Jとロージナは巧みな連係プレイで、ワイバーンを拘束しては叩きつけるを繰り返す。一方、犬が襲撃してきたらJはそちらに移動し、鞍上からハンマーを振り子のような軌道で犬を打ち払う。そのようにして、Jとロージナは兵士の格好をしたまま馬車の護衛を行うのだった。
そうしてしばらく進んだ後、森の手前までやってきた。商人は馬車の御者台から2人に説明する。
「この先の森には廃工場となったケッツァーの生産廃工場がございます。この森を迂回すると大変時間がかかってしまい、生鮮食品が腐ってしまいます!なんとしてもこの森を直進したいのですが、道中の廃工場から野良ケッツァーが這い出てきて襲ってくるのです。どうか、この森を抜けるため護衛をお願いします。」
――いつもどうやって城に届けてるのかしら。
――どうやってるんだろうね。
一団は森の中へと入っていく。すると森に入ってすぐに正面から犬型ケッツァー2匹と、下半身が馬タイプで上半身が人の形をしたケンタウロス型のケッツァーが正面から突撃してくる。サイズは馬に人が乗ったくらいのサイズ感だ。ケンタウロス型のケッツァーは両腕の三角柱を分裂させ鞭のように引き延ばしそれを地面にこすりながら接近してくる。Jは馬の上に立ち、馬車の上にジャンプして全体を俯瞰してみる。11時の方向から犬型ケッツァーが2匹、林を掻い潜りやってくる。12時の方向からケンタウロス型のケッツァーが1匹、荒れた街道をこちらに向かって走ってくる。先にエンカウントするのはケンタウロス型のモンスターのようだ。Jは馬車の屋根の上で端から端へ助走をつけ、進行方向に向かって大きくジャンプした。着地する先にいるのはケンタウロス。Jはケンタウロスの背に着地すると反転し鞭化したケンタウロスの両腕を掴み体重を右側にかけ犬型ケッツァーの方に移動する。そしてケンタウルスの鞭を犬型ケッツァーに対して打ち払い、犬型ケッツァーを撃破した。Jはそのまま指笛で馬を呼びケンタウルスに並走させる。そして鞭化した腕にパイルバンカーを押し当て射出し、ケンタウロスの両腕を切断する。そして並走しに来た馬に飛び移った直後、Jは鞍上で大きくハンマー振りケンタウロスの脚部めがけてハンマーを振り子のように打ち払い、足を粉砕した。足が粉砕されたケンタウロスはその場で勢いよく転倒し、2度と起き上がることはなかった。
そのまま周囲の樹上を飛び跳ねてやってくる猿型ケッツァーをロージナのドラゴンクロウによって感電、落下させたり、二本足で姿勢よく全力疾走してくる人型ケッツァーを鞍上からの振り子打法で打ち払ったりしているうちに、進行方向正面に巨大な廃工場が森の中から姿を現した。
Jたち一行はその廃工場を直進して突っ切るために廃工場内に入っていく。




