第71話 情報収集
Jは地図を持って先行するロージナにさらに先行して魔力水晶の隙間を縫うように移動していく。ロージナは「待って!私が案内するから!」と上下逆さまの地図を持ってJの後をぽてぽてと付いていく。
そして数十秒ともに移動すると、ウィレナたちが待つ世界樹近くの小屋へと到達した。Jはドアの取っ手を握りガチャリと開く。中の様子を見てロージナは驚きの表情を見せる。
部屋の中は棚やベットが散乱しており、壁には剣によって傷つけられたような斬撃痕が周囲に見受けられる。そして最も甚大なことに、ウィレナ達4人の姿はどこにもなかった。
「ウィレナちゃん!どこ!?タラサちゃん!マウガン君!シェロ君!……J君!ここで一体何が……!」
ロージナは慌てふためく。
『落ち着け』
『あたりを調べてみよう。』
Jは2番目の選択肢を選んだ。
『あたりを調べてみよう。』
「ええ、そうね。焦っても仕方ないものね……」
Jは散乱したベッドの下を覗き込む。するとそこからヒュッと黒いフリフリの人形が飛び出してきた。
「カルトゥム!」
ロージナはカルトゥムを抱きしめる。
「怖かったメェ……怖かったメェ……!」
『カルトゥム、何があった?』
『ウィレナ達はどうした?』
Jは2番目の選択肢を選んだ。
『ウィレナ達はどうした?』
「ウィレナ様たちは白い服で全身をおおった武器を持った男たちに攫われてしまっためぇ……」
カルトゥムは目に涙を浮かべながらさらに言葉を続ける。
「ウィレナ様が必死に抵抗したけど、何か魔法みたいなのでウィレナ様は眠らされてしまって僕は隠れることしか出来なかったメェ……悔しいメェ……」
「ううん、カルトゥムが隠れてくれたおかげでウィレナ達がまだ無事って言うことが分かったよ。それだけでも十分ありがとうだよ。」
ロージナはカルトゥムをぎゅっと抱きしめる。
「ウィレナ様たちは無事メェ?」
『ああ、攫ったってことは何かしら身の安全は保障されているだろう。この場で殺されなかったってことは、ウィレナ達に何か用があるはずだ。その男たちは何か言っていなかったか?』
「世界樹がどうとか、王族がどうとか言っていたメェ。くぐもっててよく聞こえなかったメェ。」
「白衣の集団を探してみましょう。さっきの地図に近くの街が書かれていたわ。一旦そこで情報収集をしてみましょう。」
「ボクも行くメェ!今度は隠れてないで一緒に戦うメェ!」
Jはカルトゥムとロージナとともに小屋を退出した。地図によると小屋から東に向かった、世界樹や遺跡とは反対方向に町があるようだ。
J、ロージナ、カルトゥムの3人は東へと走る。青白く光を反射する雪雲がだんだん減っていき、見慣れた地面が雪雲の下から顔を出す。魔力水晶の数も次第に減っていき、草が生い茂り始めている。人が長い年月をかけて踏み固めたであろう草の生えてない土の道を道なりに走ると、遠目に白い壁の建物が目立つ街らしきシルエットが姿を現した。Jたちは
そのシルエットが実体を帯びるまで近づくと、白いコンクリートで打ちっぱなしにされた5階建てほどのビルや直方体を敷き詰めたような街並みが見て取れる。どこもかしこも直線で構成されており、とても無機質な町だ。
住んでいる住人も出歩いているが、全体的に統一されたファッションで、男はボタンの無い丈の長い白い学ランのような服で、女はアオザイやチャイナ服のように体のシルエットがはっきりわかるワンピースタイプの純白な服をしている。動きやすいように腰あたりからスリットが入っており、前布と後ろ布をひらひらさせて歩いている。
また、人以外にも異形のモンスター、ケッツァーが人とともに歩いており荷物を持って人の後ろを歩いている。また他の少女は犬型ケッツァーを散歩させているようだ。
それに対し上下下着姿のJとロージナは異端の目を向けられつつ情報収集しようと街の入り口の町人の男性に話しかける。
「ようこそ、ここはセプティモの街です。名産品は魔力水晶の加工品と魔力機械です。」
『なにか情報が集まるか所はないか?』
「そうですね。街の酒場とかどうでしょうか?」
――この会話はRTA的に必要?
――ここでフラグを立てておかないと、酒場での会話が増えることになる。
「酒場はどちらに?」
「ここから北東に向かっていくと酒場の看板が見えますよ。マスターに私からと言えば1杯おごってくれるでしょう。」
「ありがとう。次は私におごらせてね。J君、酒場に行ってみよう。」
Jとロージナは言われた通り北東の酒場へ向かう。ジョッキの看板が目印になっている酒場に入ると、「いらっしゃい」と初老のバーテンダーが出迎えの挨拶をしてきた。バーテン内を見回すと、白を基調とした酒場のようで、どこか近未来間のある酒場だ。主人公たちが入店すると何人かの客が主人公たちを見ていた。
『街の入り口のやつからの紹介なんだが。』
「これはこれは、では私から1杯どうぞ。お連れの方にもこちらを……」
「ありがとう。いただきますね。」
『ここに来れば情報を仕入れられると聞いたんだが。』
ロージナは出された酒らしきものを両手で持ちクピクピと飲む。
「はい、ここは街の酒場、良きうわさも悪き噂も流れてくる場末の社交場にございます。」
『白服の集団を見なかったか?』
『仲間が攫われた』
『住民は何故同じ服を着ている?』
『この酒うまいな。もう1杯くれ』
Jは2つ目の選択肢を選んだ。
『仲間が攫われた』
「これはこれは物騒な。樹上世界でそのような良からぬ行為を行うものがいるとは」
「ねぇマスターさん。その仲間を攫ったのは全身を白い服で覆った男の一団らしいの。何か心当たりはないかしら?」
「白服の集団……ふむ……ここ樹上世界では外出時の格好は白が規範とされております。白服の集団と言えば我らのことを指し示すことになってしまうでしょう。お客様のような恰好は珍しく、そちらの方が目立ちますでしょう。おあいにく、私の下には白服の集団という情報は入っておりません。情報屋がご所望でしたら、そこで酒を飲んでいる男がこの街きっての情報屋にございます。」
バーテンダーは掌を上に向けて白衣の男を指さす。
「マスターさん、彼にいい酒を。」
「畏まりました。」
バーテンダーは酒を盃に注ぎその男に差し出す。




