第64話 再戦
Jは世界樹の洞から外に飛び出し、鷲型のモンスター、アリョールに向かってフックを伸ばす。そして上方からくる樹皮の塊を躱しながら次々と飛翔モンスターを乗り換えていく。そうしているうちに木の幹に落果遺物が埋め込まれたエリアが現れ始めた。Jはそのまま落下することなく上昇を繰り返し飛び出た太い枝部分に着地する。するとそこにも木組みのロッジが居を構えていた。だがJはそこをスルーしてその枝から伸びる太い蔦を足場に上方へ登っていく。
――なぜ寄っていかないの?
――何もくれないからな。ストーリーが知りたければ寄るべきだが、寄らなくてもシナリオには何も問題ない。爺さんたちの関係性とか、今後気を付けるギミックとか教えてくれる。
Jはロージナを操作したまま世界樹上層を登っていく。天井から直径数メートルはある太い蔓が絡みつき空中に垂れ下がっており、そこの側面に巨大サルノコシカケやハネリダケが生えている。Jはハネリダケで跳ねながら、蔦を上方に登っていき、途中でドレイクに捕まりながらさらに上昇を続ける。道中、巨大クワガタのモンスター『カーヴァス』が蔦を食いちぎり、落下してくる蔦を躱しながら道中世界樹に開いた横穴に逃げ込む。そこには、ロージナと同じような装備の登頂者たちが焚火を囲んで談話していた。
だが、Jはそれをスルーしシェロと操作を変更し、横穴から縦に伸びる穴を登っていく。
――話さないの?
――聞ける話はこの先のギミックのヒントで、落果遺物のワープホールの迷路になっているから、それについて教えてくれる感じだな。
Jが縦穴を進んでいくと、J達が利用していたようなワープホールが3つ展開された洞のような場所に出る。そこで『コキシネル』という巨大テントウムシモンスターに襲われている登頂者がいた。
Jはウィレナをドールハウスから呼び出し細剣ビームでコキシネルを細断した。
「うわぁあッ!……助かったよ。ついうっかり麓にここで使う落果遺物を忘れてしまってね。どうしようか悩んでいたらモンスターに襲われてしまったんだ。」
――「J、この人じゃない?下層の小屋で会った兄に渡してほしいっていうのは。」
ウィレナがJに尋ねる。
『あんたに渡してほしいと頼まれたものだ』
Jは下層で受け取った荷物をその登頂者に渡した。
「ああ!助かるよ!これでここの迷路で迷わなくて済む!あれ?中に予備の落果遺物のロケーターが入っているな。全く、あの弟め、そこまで兄を信用していないか……そうだ。」
登頂者はJに袋から円盤状の落果遺物を手渡した。
「これはお礼です。もしかしたら持ってるかもしれないけど……じゃあ僕は先に進みますね。お達者で!」
登頂者はそういうと3つあるワープホールの右側に入って消えていった。
タラサがドールハウスから出てきてJの持っている落果遺物を見る。
「これ、今アタシたちがいる場所が表示されてるみたい。ほら、この私たちがいる場所、青い点だよきっと」
タラサが円盤を指し示す。
「世界樹を輪切りにして水平にしたのがこの円盤みたいだね。多分上下に移動すると表示も変わると思うよ。世界樹って結構虫食いみたいに洞が多いんだね。」
Jはタラサをドールハウスに入れ、ロージナに憑依し、左のワープホールを進む。
――右じゃないのね。
――右に行くとさっきの登頂者が襲われててまた助けなきゃいけない。
――あの登頂者は馬鹿なの?
――辛辣。
――だけどこれで右は外れっていうのが分かる。このロケーターのおかげでワープホールが赤と青で表示されるようになった。正解は青のワープホールだ。
Jが進んだ左のワープホールは青色だった。ワープホールに入った先には、再びワープホールが3つある。ただ違いは、その前にトカゲ人タイプのモンスター『リザードマン』が3匹、ワープの前で蠢いている。リザードマンはトカゲ姿ので2足歩行でその手は鋭い爪、しっぽの先端は船の碇のように反り返った鱗がとげとげしくその存在感を放っている。リザードマンは鋭い眼光でこちらを見るとその大口を開けて両手を開き襲い掛かってくる。
Jはそれをしゃがんでリザードマンの脇の下を抜け、青色に見えるワープホールにダッシュする。
――リザードマンは足が遅い。一度抜けて逃げに徹すると追い付かれることはない。
Jはワープホールに入り転送される。転送先は世界樹の洞の中だが、目の前にワープホールは見当たらない。Jは壁から生えている光ファイバー蔦を引っ張り、正面の壁に生えている巨大な赤いキノコに向かって、蔦の先端から漏れだしている光を当てる。すると、赤いキノコはゆらゆらと揺れた後しゅるるると小さく縮んでしまった。そのむこうにはワープホールがあるが色は赤色だった。
――外れだ。
――覚えてないの?
ここのワープホールはワープするたびにランダムに入れ替わる。ワープホールを通る回数は決まっているが、ここは一つずつ確認するしかない。
Jは洞の天井を見る。天井から生えている蔦にジャンプして飛び捕まり、天井へ向かう。そして天井から横に生えている黄色い小さなキノコに蔦を手繰って光を当てると、黄色い小さなキノコが成長して巨大化した。そして黄色いキノコに飛び乗ると、向かい側の空洞に青色のワープホールを発見する。
――当たり。
Jはそのワープホールへと入る。ワープホールからJが出ると、蔦が分厚く絡まり壁を作っている。蔦の隙間からは向こう側にワープホールが3つあるが、その前には草に絡まった一つ目の機械巨人、『サイバークロプス』が蔦に絡まって鎮座している。
――久しぶりねこいつ
――前のと同型だ。
Jがワープホールから一歩踏み出すと、サイバークロプスの目がヴオンと光り、赤い目がこちらをぎょろりと向いて立ち上がる。それと同時に頭部上部に体力ゲージが表示され、
Jはウィレナ、タラサ、マウガン、J本体をドールハウスから呼び出し、憑依を解きロージナをドールハウスに入れる。
サイバークロプスは背中から棒状の武器のようなものを取り出すとその棒状の武器の側面から光の刃が飛び出し光の大剣となった。サイバークロプスはその光の大剣を振り回しながらJ達に攻撃を仕掛ける。
『マウガンは盾でウィレナを守れ!』
Jはサイバークロプスに対し前転ローリングで光の大剣の攻撃を躱しサイバークロプスの後方へ回り込む。マウガンはウィレナの前に立ち黒鋼の大盾でサイバークロプスの攻撃を受けウィレナを守る。
『ウィレナ、突撃だ!』
『タラサ!粘着弾を!』
タラサはJに向かって攻撃を空振りした左手に向かって粘着弾を発射する。粘着液がサイバークロプスの腕に絡みつき侵食し動きを鈍化させる。
ウィレナは振り終わりのサイバークロプスに向かって細剣を突き立て、細剣の先端から魔法のレーザービームを照射する。
うしろに回り込んだJはハンマーを下段に構えサイバークロプスの背中を殴打する。それと同時のタイミングで、マウガンは巨大剣を片手で構え、サイバークロプスに薙ぎ払い攻撃を仕掛ける。
サイバークロプスは後方から打ち付けられた勢いのまま巨大剣の横薙ぎを喰らい、膝をつく。体力ゲージはもうあとわずかだ。
――すごい。前に戦った時よりもずっと早く倒せるのね。
――仲間もいるし俺も強くなってるからな。
Jはとどめと言わんばかりに膝をついたサイバークロプスめがけて大振りの攻撃を仕掛け、頭部に命中する。
サイバークロプスは後方に大きくたじろぎ、上半身を水平にぐるぐる回転させながら蔦の壁へ激突しし持っている大剣で蔦の壁を切り裂きその場に倒れ込み爆発した。




