第58話 砂漠の隠しダンジョン
道中、巨大なワーム状のモンスターが地面から出たり入ったりしているのと並走する。
――デザートワームは強敵だが、こちらから攻撃しないかぎり敵対はしない。
Jはそのままデザートワームと並走していくと、巨大なモンスターの骨が地面に突き刺さっている。
――ドラゴンの死骸だ。肋骨内に入ると蟻地獄型のモンスターに地下迷宮に引きずり込まれる。行くと時間と引き換えに強力なアイテムが手に入るが、コスパはよくない。
ドラゴンの死骸を横目に進むと、砂漠の遺跡が目の前に姿を現す。
――寄っていかないの?
――正ルートのシナリオに関係ないし、寄るとしたらもう少し先に行った別のダンジョンだ。
砂丘の稜線の向こう側に丘陵地帯が見えてくる。
――どこまで行っても茶色ばっかり、寄り道もしないし、つまらないわ。
――君なんかどんどん感情的になってきてませんか?
――分からない。何か胸の奥がピリピリするの。
ヌルの拘束具もいつの間にか膝下あたりまで解除されている。累計5つ。足の拘束が解除されたところでJの背後を浮遊しているため、大した意味をなさないようだが。
――今までに集めたフラグメントの数と一致するな。謎を謎のままにしておくのは気持ちが悪い。道中あるフラグメントは回収していこう。
――そうね。私も知りたいところだもの。
Jは砂丘を滑り降り丘陵地帯へ行く。丘陵地帯の崖上へ登るようにジグザグに崖を登っていく。後方には先ほどまでJが走っていた砂丘地帯が遠くに見える。丘陵地帯を登っていき、一番高いところに行くと、ヌルは声を発した。
――なんだようやく見晴らしのいい気持ちい景色に出会えたわね。
丘陵地帯から見えるは、一面の大瀑布だった。大瀑布の向こうには世界樹が荘厳なたたずまいでどっしりと地に根を張っている。大瀑布は1つの巨大な大滝とその周囲に何本かの小滝が流れており、Jはその手前から3本目の小滝に向かって馬を走らせる。1本の大河岩によって分断されて滝が複数本できており、大河の中心部に行くほど深くなっている、Jはその滝の外側の浅瀬部分を走り、目的の小滝の上部に到着した。滝つぼの方を覗き込むと、大瀑布は滝つぼまで一直線に水が流れているのに対し、周囲の小滝は階段状に滝が流れている。階段状とはいっても、その1段1段が十数メートルの高さがあり、滝つぼにかかる水圧は相当なものだ。
Jは馬の近くにワープホールを設置し、滝つぼめがけて頭から落下した。Jは滝に沿って落下していき、そのままバシャリッと滝つぼに落下する。水圧で水底に叩きつけられるが、上昇水流の場所までもがいて何とか滝つぼから脱出した。
隣の小滝の裏には水晶のように結晶上に凍った氷があり、その中に落果遺物が氷におおわれて凍結されている。
――本来なら、邪ゲージに振り切って『魔族ルート』に行って、火を吐けるモンスターと放電出来るモンスターを使役してこのギミックを解くんだ。このギミックを解いた先にあるダンジョンにある武器とかを手に入れる。
――新要素が出たわね。使役?今できないと言うことはまたバグ技を使うのね。
Jは滝つぼの向かい側にいる2枚貝から触手が無数に生えているモンスターまで走っていき、触手を伸ばしてJを拘束しようとする2枚貝の後ろに回り込み、持ち上げて滝つぼへ落とした。Jは2枚貝が水流によって滝つぼへ到達するのを確認してJも滝つぼへ飛び込んだ。Jは水流に揉まれながら水底へ沈み込む。底には先ほど投げ込んだ2枚貝のモンスターがJに向かって上昇しようともがいているが、滝つぼへの水流で上に上がれない。だが、Jに向かって貝の隙間から触手を伸ばしてくる。Jは水流に揉まれながらも下流へ自ら潜っていき、2枚貝の下側に潜り込みそこで触手に捕まった。Jはもがきながら手足をばたつかせ滝つぼの底に体をめり込ませる。そして2枚貝の触手から解放されるように地面に押し出されると、Jの下半身が滝つぼにめり込んだ。Jはそのまま水中で下方向に泳ぎ、体を捻る水中ローリングを地面に向かって何度か押し込むと、Jの体が完全に滝つぼの床の下に入り込んだ。そして謎の地面に足が付き、しゃがみ込むと呼吸が出来るようになり、しゃがんだまま暗闇をまっすぐ進んでいく。そして突然移動をやめ、ローリングを暗闇に数度繰り返すと、突然下に落下し、落果遺物のダンジョンへ侵入した。
――ちなみに今のバグショトカはタラサ操作でやるともっと簡単に押し出してすり抜け出来る。
――なぜやらなかったの?
――キャラの変更に時間がかかるし、女キャラに触手を這わせたら変態って言わない?
――そんなこと考えてたんだ。変態。
――ひどい。
Jはそのままキャラクターをマウガンに変更する。ダンジョン内は以前入った落果遺物の倉庫のようになっており、螺旋階段状に2メートルほどのブロックが積みあがっている。
それらは青緑色の発光体の線があるものとないものがあり、螺旋階段状の段差にはところどころ欠けた個所が見受けられる。その近くの壁には発光するスイッチが付いている。それ以上に目につくのは、地面でのたうち回るモンスター達だ。
のたうち回っているのはサメの頭としっぽを先端と末尾に生やした胴体が芋虫のような見た目をしているサメタイプのモンスターだ。
――あいつは通称「イモムシザメ。」水中では機敏にその体をくねらせてプレイヤーを追尾して噛みついてくるが、地上では名前のように芋虫のようにしか動くことが出来ない。
――なんでそんなモンスターが水の無いところにいるの?
――本来ならここは水没したステージのはずだからな。バグ進入したから水がない状態になってる。このダンジョンは1FからB5まであって、1Fにある大量の水を下の階に排水していって解いていくギミッグなんだ。だから水がない状態の敵しか出てこない。ここはB1だからな。あの箱も水に浮く箱なんだけど、水がないから下に落ちている。
Jは光の線が入っていない箱を指さす。
――前の遺跡で見たようなものもいるようね。気味が悪いわ。
ヌルの視線の先にはイモムシザメではない別のモンスター、落果遺物の遺跡にあった球体と三角錐の集合体で構成された敵がいた。そのモンスターは、フナ蟲のような見た目をしており、球体と三角錐で構成された大量の足をカサカサと這わせ壁や天井を張っている。
――閉ざされた遺跡なのに落果遺物モンスターと通常のモンスターのどちらもいるのね。
――1Fに入るルートは、大瀑布にある中央の川底から潜水タイプのモンスターに捕まって入るルートもあって、そこから通常のモンスターも入り込んでいるっていう設定だと思う。他にもダンジョンあるけど、入り口が1か所のところは落果遺物モンスターだけで、入り口が複数あるタイプは通常のモンスターもいるっぽいからな。
Jはその階の一番下に螺旋階段状に巨大なブロックがあるところを下りていき、そこに到達する。Jは底にある発光線がないブロック前まで行き、周囲を這っているイモムシザメにハンマーを叩きつける。イモムシザメは後方に吹き飛び壁に叩きつけられる。壁に叩きつけられたイモムシザメは起き上がりゆっくりとJの方にむかってのそのそと這ってきている。Jはドールハウスからマウガンを呼び出し、憑依髑髏を使用してマウガンを操作する。J本体はドールハウスに入れ、Jは箱の下に指を入れ、重心を後ろに傾け箱を持ち上げた。
――重量のある物を持ち上げたり動かしたりするのはマウガンにしかできない。
そしてJは箱持ったまま反対に振りむき、床に置いた。
箱の下にはハッチがあり、Jはそれを引き上げハッチを開き下に降りる。JはB2に落下するが、下には水がないため落下ダメージを受けてしまう。Jは素早くカルトゥムの壺からスライムキューブを取り出し地面に投げた。Jはスライムキューブの上に着地し、落下ダメージを防ぐ。Jはそのまま自分に群がってくるイモムシザメとフナムシモンスターを大剣を用いて吹き飛ばす。体を捻り回転させ周囲のモンスターを一刀両断するかの勢いだ。
Jはマウガンとの憑依を解除し、続いてシェロに憑依を行う。Jは壁を登り始めた。壁に窪みがあり、そこにある宝箱を取るためだ。その窪みはブロック状に切り取られたような窪みになっている。そこのブロックの周囲にはフナムシモンスターが徘徊している。




