第53話 1回戦
「そうだ、言い忘れた。明日の試合は1日を通しての3人一組のトーナメント方式をとる。今日中に仲間を後2人集めるんだな!ガハハハッ!」
奴隷たちも部屋から出ていき、部屋に一人マウガンが取り残される。
場面は変わり、Jたちはマウガン邸で食事をとっていた。そこへマウガンが帰宅するやいなや、Jたちに頭を下げマウガンは懇願した。
「すまない!J殿、私に力を貸してくれないだろうか!」
ウィレナは急に頭を下げるマウガンに狼狽える。
「どうしたの!?マウガン!何かあったの!?」
『力になれることなら手を貸そう。言ってくれ。』
マウガンは事の成り行きを話した。
「はぁ!?信じられない!何なの!そのコルヴォってやつは!アタシがミランちゃん取り戻してくるよ!」
今にも飛び出しそうなタラサをシェロは制止する。
「タラサ、場所も知らずにどこに行くつもりだい?マウガン殿、コルヴォのアジトを教えてくれれば僕が偵察に行こう。」
「それがコルヴォは知らないんだ。あいつは自分と同じかそれ以上の貴族階級のものとしか交流せず、チャンピオンの俺でさえやつの屋敷に呼ばれたことはない。」
『明日の大会について話そう。』
「そうね。マウガンは参加するとして後の二人をどうするべきかしら。」
「ならまずJが適役でしょ!私たちの中で一番強いもの!」
「そうか、それは心強い。なら、後の一人は、J殿、誰がいいと思う?」
『ウィレナ』
『タラサ』
『シェロ』
『ソーコル』
Jは4番目の選択肢を選んだ。
――初めて最後の選択肢を選んだわね。
『ソーコル』
『いるんだろう?そこに、出てこい。』
Jが扉の方を向くと全員が扉に視線を移した。扉がガチャリと開けられ、そこからソーコルが出てくる。マウガンはソーコルに謝罪する。
「ソーコル!聞いていたのか。すまなかった。お前の妹を守れずに……」
ソーコルはずかずかとマウガンに近づいていき、拳を振り上げ、マウガンの頬を殴り抜けた。その拳にはかすかに炎が舞っている。それに気づいたウィレナは思わず口にする。
「熱属性の炎魔法……!」
ソーコルの体から炎が吹き溢れ、被っていた帽子が燃えてなくなる。そこには逆立った紙の中から角が2本生えて、大きな耳がロップイヤーのように垂れていた。
「オレがミランをとりかえす。オレが3人目だ。」
マウガンはそんな燃えているソーコルの肩を持ち説得する。マウガンの掌が焼け肉の焼けるにおいがあたりに充満する。
「ソーコル、お前はまだ幼い……!ここは私とJ殿に任せて……!」
「オレはもう子供じゃねぇ!ずっと鍛錬もしてきた!」
「ああ、盗賊ごっこの目的は鍛錬のためだったのか。」
シェロは合点がいったと納得する。
――幼いっていうけどタラサも戦ってるのに今更感ない?
――俺もそう思ってた。
ソーコルは言葉を続ける。
「マウガンはオレたちの両親を助けられなかったことに負い目を感じる必要はねぇ!オレは……オレもミランももう立派な魔人族だ!妹はオレが助ける!」
「だが……」
『俺はソーコルを信じたい』
「J殿……」
『ソーコルはもう1人前の戦士だ。それに何かあったら俺たちが守ればいいだろう』
「ああ、そうだな。私たちが守ればいい。」
「はんっ!守られるつもりはねぇ!マウガンこそ!弱体化して足手まといになるなよ!」
「ハハハッ。ソーコルにそんなことを言われる日が来るとはな。」
『チームマウガン結成だ。』
「ああ、明日はよろしく頼む。」
「絶対に優勝してミランをとりかえす!そしてコルヴォをぶん殴る!」
Jたちは決起した。マウガンは騎士の誓いを果たすため、ソーコルは大事な妹を助けるため。それぞれの意思が一つになり、夜が明ける。
翌日、コロシアムはいつにもまして盛況だった。普段とは違うイベントと言うこともあって、立見席まで人があふれんばかりとなる。Jたち3人は選手登録をして控室に、ウィレナ、タラサ、シェロは観客席からの応援となった。トーナメントに参加するチームは合計で8チーム。3回勝てば優勝となる。
オープニングセレモニーが行われ、ダンサーや楽団員が音楽を奏でるなか、主催者席にはコルヴォが、そしてその横には魔人族の囚人や部下たちに紛れて手かせを嵌められたミランの姿があった。闘技場の周囲にある控室から、マウガンはその姿を見てひとまずの無事を確認し安堵すると同時に、己の内からあふれ出る闘志を滾らせた。
セレモニーの最後に主催者であるコルヴォのスピーチが行われるようで、主催者部屋のコルヴォに城内の視線が向く。コルヴォは城内に手を振りながらスピーチを始める。
「紳士淑女の皆様!本日はコルヴォのコロシアムにお集まりいただき!誠にありがとうございます!本日のメインイベントは普段とは違う一風変わったトーナメントを催しております!普段賭けに興じられている皆様!我が闘技場のチャンピオン、マウガンはどのようなチームで来るのか!1人なら最強のマウガンはチームでも最強なのか!目が離せない一戦となっております!奮ってお賭け下さい!なお、優勝チームにはスペシャルマッチとして私のコレクションの1つと戦っていただきます!さぁ!最強のチームは一体どこの野郎どもだ!さぁ第1回戦の開始だぁー」
城内がドっと沸く。コルヴォは主催者席とは反対側にある大扉を指さし、席に座る。
その大扉がバンッと開き、中から上半身が裸の大柄の男が3人現れた。そして反対側からはボロ布と皮の鎧を着こんだ野盗たちが現れる。それぞれの手には木製の剣や盾、木槌が持たれている。
両チームは互いににらみ合い、試合開始のドラが鳴る。
銅鑼が鳴ったと同時に大柄の男たちは木槌を構え野盗たちに突っ込んでいく。野盗の一人が地面を蹴り上げ砂を大柄の男たちにかける。男たちは目つぶしを喰らいせき込みながら2人が勢いのまま後方の壁に激突し、もう一人は踏みとどまり目をこする。その最中、踏みとどまった男の首めがけて野党の一人が木剣を突き立てる。突き立てられた大柄の男は喉を抑えのたうち回り、その隙に頭部めがけて木剣を叩き下ろしあっという間に一人がノックダウンとなる。壁に激突した二人のうちの片方の背後には木剣を大きく振りかぶり後頭部を狙い野盗2名が剣を振り下ろす。だがその、瞬間フリーになったもう一人の男がタックルを野盗2人にぶちかまし、野盗たちとともに地面に転がり込んだ。その男が二人を押さえつけている間に、もう一人が巨大な木槌を振りかぶり、野盗の一人に叩きつけた。野盗の頭部が地面にめり込み、あえなくノックダウンとなる。もう一人の男?は馬乗りにされている状態から折れた歯を野盗の目にめがけて吹き出し、野盗をひるませた隙に脱出した。
野盗と大柄の男たちが2対2になり、観客から歓声が沸き出る。血沸き肉躍る戦いが観客と闘士を一体化させ、自分の賭けたチームに勝ってほしいとこぞって応援する。一方、負けてほしいチームには罵声を浴びせチームの士気を下げさせる。
片目に傷を負った大柄の男は、死角を味方にカバーしてもらいながら再び2人で突進する。
野盗はそれを躱そうと左右に飛びのく。が、大柄の男たちはそれを呼んだいたのか、その避けた先へ巨大な木槌を投げる。野盗たちに木槌がぶつかり、体勢を崩す。その隙に大柄な男たちはタックルをかまし、二人ともマウントポジションを取る。その状態で両こぶしを交互に顔面に叩きつけ、あえなく野盗たちはノックダウンとなり勝負は決した。
会場は歓声と罵声が沸き起こり、大きな盛り上がりを見せる。その後も、同様に2戦、チーム同士の戦いが行われ、そのたびに血と汗が闘技場の砂地を濡らす。そして1回戦最終試合。J達のチームの戦いの番となった。
控室、Jには準備タイムが与えられて、スタッフに話しかけると戦闘が開始される。
Jは武器と防具の選択があり、パーティメンバーも同様に装備を整える。
Jは木大剣を装備し防具は付けない設定にした。ソーコルは短木槍と小盾、マウガンは木大剣と大盾をそれぞれ片手で装備させ、ソーコルとマウガンの装備はデフォルトにした。
――コロシアムのサブイベントを進めると闘技場専用の装備がどんどんグレードアップしていくんだけど、これは最初の装備で進めていく。ちなみに普段の装備で出るモードもある。
――そのサブイベはやらないのね。
――ああ、やらない。時間かかるからな。
Jは装備が整させスタッフに話しかけ会場へ出る。
――マウガンとソーコルに話しかけることもできたけどスルーで。
――決起集会的なのはないのね
――しない。
Jたちは控室から闘技場への回廊を進んでいく。そして暗闇から光の当たる闘技場内へでて目が一瞬くらみ、そして調光機能が働いて闘技場全体を見回す。すると実況者が場内を盛り上げる。




