第39話 マッドサイエンティスト
「おや?ガスの効き目が弱かったようですね。ようこそ、我が屋敷へ。私はマオス・フレーダー。この屋敷の主であり至高の科学者にございます。」
マオスと名乗るその男は、常人の3倍ほどに頭部が肥大化しており何かの機械を頭に埋め込んでいるようだった。黒装束のスーツに腰から飾り布をぶら下げ、背中からは大量の触手掌を伸ばし壁の機械を触っている。
「して、皆様はテルティウムの街の住人ではありませんな?私のデータに存在しないものです。旅のお方かなにかかな?」
『ああ、そうだ』
『拘束をほどけ』
『お前は人間なのか?』
『いい趣味してるな』
Jは1番目の選択肢を選んだ。
『ああ、そうだ』
「おお、これはこれは、貴重なデータが取れそうでございますな。いえ、街の住民のデータは取り終わっております故、そろそろ活動拠点を移そうかと思っている次第。外からのご客人という貴重なサンプルを手に入れられたことは非常に僥倖でございます。ぜひ、皆様にも憑依実験のご感想をば聞かせていただきたく存じ上げまする。」
『憑依?』
『調査隊にも実験をしたのか?』
『その体はどうなってる?』
『俺のデータは高いぞ?』
Jは2番目の選択肢を選んだ。
『調査隊にも実験をしたのか?』
「ええ、街の住民からのいいプレゼントでございました。私は幸せ者にございます。そのものらにこの憑依顎部をつけ、対になる憑依頭骨をモンスターにつけるのです。すると頭骨を付けたモンスターの精神と顎部を付けた人間の精神が入れ替わるのです!素晴らしい発明ですよ!長年落果遺物を研究してきた私の誇り高い研究成果でございます!」
「こんなの……全然立派じゃない……!」
タラサが怒りがこもった口調で反論する。
「んん~?お嬢さん、何をおっしゃいますかな~?人は不完全な生き物でございます。聡明な頭脳を持ちながら貧弱な肉体を持つ。だからこそ、モンスターの肉体に知能を移動し、強靭な肉体に人間の頭脳を併せ持つ上位種となるのです!この研究が立派と言わずして何が発明か!」
「そうしてモンスターの精神を入れた人間を街に返すのか」
シェロは悟ったように語った。
「その通りでございます。貧弱な肉体に蛮族の精神が入ったものなどもはやゴミも同然!私の知るところではありませんので、街にお返ししている次第にございます。」
――分かりやすいクズ野郎なのね。
タラサが周りの檻に入れられたモンスターを見てマオスに反論する。
「この実験は成功しているの?アンタがやった研究結果一つも成功しているようにはみえないんだけど!」
「聡明なお嬢さんだ。その通り、精神を入れ替えた直後はモンスターも人の心を持つ立派な生命体になるのですが、時間が経つにつれ自我が崩壊し、身も心もモンスターとなってしまうのです。ほとんどの実験は長期的な目で見れば失敗に終わりました。しかし!失敗こそが成功への道しるべ。99回失敗しても1度成功すればその実験は間違いではないのです!現に、いまだに精神崩壊を起こしていない検体が一つだけあります!すなわち、その検体を調べ尽くせば何がいけなく、何が成功の鍵だったか分かるのです!」
――これ、キャナリの父親
――またネタバレをくらってしまったわ。元に戻せればハッピーエンドね。
「しかし、そろそろ街の住民も私の実験に協力してくれることも減ってきてしまいました。非常に残念であります故、そろそろ他の街へと拠点を移すことを考えている最中!あなた達のような新鮮な旅人が私の前に現れたではありませんか!ぜひとも、我が実験の糧となり失敗にお付き合いいただければと……おや?」
マオスは突然壁に掛けられたモニターを見る。そして喜びの声を発した。
「これはなんとう幸運……!今日は新鮮な旅人に続き幼子の検体まで手に入るとは……!」
J達はマオスが見ているモニターを注視する。そこには、正面扉から中を覗き見るキャナリの姿が映し出されていた。
タラサは声を上げる。
「キャナリちゃん……!」
マオスはキャナリが映し出された映像を見ながらひとりごとをしゃべり始める。
「キャナリ・アナトラ。メス。8歳。父はエンテ・アナトラ。父、エンテはいまだに精神崩壊を起こしていない唯一の被験体。娘も同様に精神崩壊を起こさない可能性が高い。……これはぜひとも実験材料としてほしいですねぇ!」
マオスは部屋の出口へ向かいながら3人に声をかける。
「優先順位が変更されました。3人ともその場でお待ちくださいね。キャナリ・アナトラの実験が終わったのち、あなた方にもモンスターの精神を憑依させてあげますから。」
マオスはそういうと部屋のドアを閉め、Jたちは部屋の中に取り残される。




