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第34話 裏切り

そこからは僕たちは住んでいた町の貴族街を標的に盗みを繰り返した。僕は貴族の屋敷に忍び込んで、お宝を盗み出す作戦を立案、計画しあるときは集団で、ある時は僕一人で盗みを働いていった。そして集めたお宝は、足がつかないものを手元に残し、残りを食料や金貨に変え、人目につかないように貧民街の軒先へと配り歩いた。もちろん僕たちが置いたと分かるようにだ。そうしていくにつれて、貴族街では僕の名を冠した盗賊団が恐れられ、平民街、貧民街では『義賊』と感謝された。僕たちの町はわずかだが平等になっていったんだ。そしてしばらくして僕たちは王都に拠点を移した。そこの方がより稼げるし、より名声も得られると考えたからだ。そして、僕の予想は当たった。王都に行っても貴族たち相手にやることは変わらなかった。多少警備が強化されていたり、屋敷の構造が複雑になる程度だった。王都は平民街の人々は豊かな暮らしをしているが、貧民街、スラムは僕たちの町程ひどくはなかった。だから、お宝をそこに分け与えても、僕らの街より得た名声は少なかったんだ。そしてある日、あの事件が起こった。

 潰れて放置された酒場、平民街のはずれにある秘密の隠れ家、以前の街にいた時よりも身体的に成長した少年たちは、次の標的の窃盗計画を考えていた。

「僕が調べた結果、グルニの屋敷は地下水道への秘密の抜け道がある。つまり地下水道からなら逆に正面の警備を無視して屋敷内部に潜入できるんだ。これも情報を仕入れてくれたエイナスのおかげだよ。」

「暴力担当の俺はいつも暇だからな。街の住人脅しての情報収集くらいしかやることないしな。そうだ。シェロ。グルニ邸には『モロ』って考えて喋る落果遺物があるらしい。それはコレクターに高く売れるそうだ。盗んで来いよ。」

「ああ、分かった。」

「王都に来てからシェロ単独での盗みが多くて暇だぜー。」

シェロの立案に盗賊団員は愚痴をこぼす。

 王都に来て僕たちの活動は主に僕一人で行うようになっていた。とはいっても、以前の街で行っていたような荷馬車への強襲や大人数での強奪は行わず、各々が単独で貴族街の屋敷に潜入、そのまま盗みを働き退散という失敗しても盗賊団への被害が少ない方法を取っていた。一度、貴族の屋敷へ襲撃をかけてその隙に金庫から強奪という作戦を取ったけど団員の半分がやられてね。それ以来こういった安全策をとっていたんだ。それでエイナスや一部団員からは不満の声が上がっていたんだ。今まで手に入れていた大量の財宝が少量しか手に入らなくなっていたからね。そしてグルニ邸へはいつも通り僕一人での潜入となったんだ。

 その日はグルニ邸で毎夜行われているが、エイナスの情報通り、なぜか行われておらず、屋敷内は静まりかえっていた。僕は難なくグルニの部下3人から鍵を盗み出し、金庫室の前までたどり着いた。だが、それは罠だったんだ。

シェロは金庫室で持てるだけの財宝をバックパックに入れ、最後に中央にあるモロに手をかける。するとモロはけたたましい声を上げなき始めた。

「キケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!」

「ぐぁ!?なんだ!?」

 シェロは耳をつんざくようなその鳴き声で両耳を塞ぐ。意識が朦朧として足がふらつく。

「まずい……これでは、警備兵が……来る……!」

シェロは耳を塞ぎながらおぼつかない足取りで宝物庫を後にし、正面の扉を開ける。シェロは扉を閉め、一目散に長廊下を駆ける。

そして廊下を抜けた先の扉を開けると、ホールを埋め尽くすほどの警備兵が槍やボウガンを携えてシェロを待ち構えていた。

その正面にはグルニ伯爵、そして隣にはエイナスの姿があった。

「エイナス、これはどういうことだ?」

「悪いな、シェロ。お前を売らせてもらった。グルニ伯爵にお前がここに今日盗みに来ることを知らせたんだ。」

「ぶひゃひゃひゃ。盗賊シェロ、貴様は仲間に裏切られたのだ!」

「取引ってやつだ。俺たちはお前を売ることでグルニ伯爵に貴族街の屋敷を一つ与えてもらえる。もうこそこそ隠れなくても生活していけるほどの資金もくれるってな!俺たちは此処までのし上がれた!全部お前のおかげだよシェロ。感謝するぜ。」

「……エイナス……貴様……!」

「ぶひゃひゃひゃ!ワシはもう金も時間も余りあるほどある!しかし名誉はいくらあってもよい!貴族街を震撼させたシェロ盗賊団の団長を捕らえ、壊滅させたと知られればわしの評判はうなぎ登りよ!きっと上級伯爵への昇格もしてくれるであろう!ぶひゃひゃひゃ!」

「そういうことだシェロ。俺たちに平等をくれた。感謝してもしきれねぇぜ。あばよ。」

「ぶひゃっ。シェロ、貴様はラトロ監獄で幽閉され6日後の重要な処刑の前座として王城前広場で処刑される!せいぜいそれまでの命、ラトロ監獄で大切に扱うがいい!」

 そして場面はゆっくりと暗転していく。そして、舞台はドールハウス内に移る。

 タラサが憤慨したように声を張り上げる。

「はぁー!?おかしいんじゃないの!そのエイナスってやつ!今までさんざんシェロに世話になっておいて目の前に餌ぶら下げられてほいってついて行っちゃうなんて!義理も人情もありゃしない!」

「そうだね。でも何か僕にも落ち度があったのかもしれない。」

『他の仲間は?』 

「僕はグルニ邸で捕らえられてからすぐにラトロ監獄に移送された。だから団の仲間たちがどうなったかは知らないんだ。」

「他の仲間たちもお世話になったリーダーが捕まったっていうのに助けに来ないなんて変だよ!」

「おそらく皆エイナスの下についたんだろう。それにラトロ監獄は堅牢な監獄だ。もし助けに来ようとも返り討ちに会うのが関の山さ。君たちが凄いんだよ。」

「えへへ。照れますぞー。」

タラサは足をばたつかせて頬を紅潮させる。Jはそんなタラサを尻目に本筋に切り込んだ。

『復讐と言うのはエイナスへの復讐か?』

「ああ、まぁ復讐と言ってもまずは話をしっかり聞きたいんだ。きっとエイナスにも何か理由があるはずだ。」

「ねぇJ。さっきから思ってたんだけどなんでシェロは盗賊なんてやってるんだろうね?めっちゃいい奴じゃん。」

「他に選択肢がなかっただけさ。盗みはいけないことなのは分かってる。だが、これしか生きる道がなかったんだ。」

シェロはJの瞳をじっと見て言う。

「どうか、僕とエイナスを会わせてほしい。助けてもらった恩もまだ返せていないが、それさえ済めば、君に忠を尽くすと約束しよう。」

『分かった。契約成立だ。』


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