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第28話 3つ目のフラグメント

鉄格子の前にはフラグメントがふわふわと浮いている。Jはそれを回収すると視界が暗転してまたもや映像記録が目の前に映し出される。

薄暗い部屋にぬいぐるみがうずたかく積まれている。左手に見える扉から大きな眼鏡をかけたロングヘア―の少女が入ってくる。首からは魔法陣のような装飾が施されたネックレスをかけている。少女は目の前に座ると、キーボードを打ち始めた。どうやら再びパソコンのカメラ越しに見ているようだ。

少女はキーボードに打鍵しながら独り言を呟く。

「性格の為のアルゴリズムは構築したから、AIに私の性格を学習させてそれをトレースすれば……」

少女は自分の言葉が可笑しかったのか、ふふっと笑った。

「AIを作るためのAIを作るためのAIを作ってるなんて……おかしな話」

少女はマウスをカチカチとクリックして、パソコンのショートカットキーも同時に押して何やら作業を行っている。

「中身はひとまずこれでいいかな……次は見た目だけど……うーん……3D

って難しい……」

眉間にしわを寄せながらやや猫背気味にこちらを覗き見る少女。少しすると少女の背後の

ドアがコンコンとノックされ、ドア越しに大人の女性の声が聞こえてきた。

「月乃―。ご飯よー。あっためておくから早く降りてきなさいねー。」

月乃と呼ばれた少女は返事をする。

「はーい、お母さんすぐ行くー。」

月乃はこちらに再び顔を向ける。

「ご飯食べたら続きするからね。」

ここで目の前が暗転し、Jは再び水路の鉄格子前に視界が移動した。

――おそらくwebカメラを通しての映像記録が何らかの理由で4BXの中に入ってしまったのかな?プログラマーの個人的なデータを間違えて入れてしまったとか。ヌル、何か変化はあるか?

Jはヌルの方を向きヌルの体を注視する。フラグメントを回収する前と後で変わった点は……

――やはり拘束具が一つ外れているな。

ヌルの体に大量に巻き付かれた拘束具の足の部分のパーツが一つ外れている。

――私自身は特に何か変わった感じはしないわ。ただ、少しだけ頭がふわふわしてる。これが気分の高揚というものなのかしら。

――拘束具が外れると内面に何か影響があるのか。また次のフラグメントを回収したら検証してみよう。

Jはフラグメントの向こう側にある鉄格子へ視線を移す。

橋の下にも水路があったが、鉄格子が一か所なくなっている。Jとタラサはその隙間から城下町の水路の中に侵入した。

――他の方法として馬車に乗りこんだりすることもできるが、荷物チェックは運ゲーになるからそれは避けたい。あと関所門から城壁に橋渡ししてあるロープの上を伝っていくことも出来るが、兵士を倒していかないといけないから、後々面倒なことになる。この水路進入が一番スマートだ。

 Jとタラサは水路に入っていき、しばらく泳ぐ。城下町下の水路は迷路のように入り組んでいるが、Jはすいすいと目的の道をたどっていく。そしてしばらく進むと何やらビッグバンドのような音楽が聞こえてくる場所まで泳いできた。

 Jとタラサは水路から横の足場に上陸し、中腰の状態で足音を殺して近くの階段まで移動する。

 階段の上には木製の扉があり、その手前でスーツ姿の若者が独り言を呟いている。

「はぁ……毎晩毎晩パーティーを開いて御屋形様は飽きないのかねぇ……つい先日も噂のシェロ盗賊団が侵入してきたっていうのに……まぁそこはさすが御屋形様ってところか。進入してきたシェロ盗賊団して即日お宝を取り返したあげく盗賊団を壊滅させて頭領をラトロ牢獄に送っちまうんだからな。」

――J、シェロ盗賊団って何?

――これから仲間にしようっていう義賊団の呼び名さ、本来なら関所にいた連中に話を聞けばそのあたりの情報をくれるんだけどな。

「J、アタシ聞いたことがある。」

タラサは声を小さくしてJにだけ聞こえるように話しかけてくる。

「多分ここグルニ伯爵のお屋敷の地下だよ。前にカバリオが旅人から聞いた話を聞かせてくれたんだ。グルニ伯爵は落果遺物の蒐集癖があって、レアな落果遺物は全てこの伯爵の家に集まるんだって!きっとここにならスライム魔法が組み込まれた落果遺物があるはずだよ。」

タラサは言葉を続ける。

「それにそのシェロって義賊は悪い奴しか狙わないんでしょ?ならグルニ伯爵だって悪い奴だよ!アタシたちも義賊になっちゃおうぜ!目の前にレアな落果遺物があるなら頂きだよ!」

タラサは目をキラキラさせながらJに提案する。

『ああ、そうだな。頂いてしまおう。』

『盗むことはよくないぞ』

『タラサは本当に落果遺物が好きなんだな』

『怪盗タラサ爆誕だな!』

Jは1番目の選択肢を選んだ。

『ああ、そうだな。頂いてしまおう。』

Jは中腰のままスーツ姿の若者の背後に忍び寄り、チョークスリーパーを決め、気絶した男をゆっくりと担ぎ階段下の水路足場にそっと寝かせる。

 Jとタラサはそのまま中腰の忍び足で、男が立っていた後ろの扉を開け中に侵入する。その中は大量の樽が所狭しと並べられており、芳醇なワインのにおいが部屋を充満させた酒蔵のようだった。

Jは酒樽をよじ登り天井の梁部分に登る。

下ではスーツに蝶ネクタイの使用人達がワインを瓶やグラスに注ぎ部屋の外へ運び出している。Jとタラサは梁を伝って扉の上部まで移動し、使用人たちがいないのを確認して地面へ着地する。ここから先は複数人で行動すると警備兵や使用人に見つかりやすくなる。Jはそう判断し、タラサをドールハウスへ移動するように命令する。

『タラサ、ドールハウス入れ。』

「分かったよ。」

タラサがドールハウスに入室すると、ドールハウスはカルトゥムが背負うことになった。壺はドールハウスの横に備え付けられている。

Jはワインセラーの扉を開け屋敷へ入っていく。屋敷内は警備兵や使用人が巡回しており、警備兵に見つかると敵対行動が発生し、使用人に見つかると警備兵を呼ばれる。どちらもRTA的には避けたい自体だ。Jの脳内には屋敷の見取り図がしっかりと入っているため、まずどこに向かうかJの中で決まっていた。


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