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第110話 かつての仲間は

ヴォルクルプスの首をゴトンと床に置き、ティグリスは両腰につけている細剣を二刀流のように腰の下と頭の上で構えた。シンミャは背中の巨大剣を肩で担ぐように構え、前傾姿勢を取っている。Jはハンマーを上段に構えウィレナに向かって突進する。

「ガァアアアアアアッ!」

ウィレナはその攻撃を細剣の背を使って受け流すと、Jのハンマーは地面をうがち床を叩き割った。その衝撃によって隆起した床板の石材が、その上に乗っているウィレナの体勢を崩す。

「くっ……!」

Jはすかさず体勢を崩したウィレナに向かって腹部にパイルバンカーをあてがい、射出した。

ドゴォッという鈍い金属音とともにウィレナが吹き飛び、ライフゲージが大幅に減少する。

――敵対した時のウィレナ達の装備はそのまま引き継がれるから、下着姿にしておけばそれだけで防御力大幅減だ。

――そのための下着のみ?

――そのための下着。

吹き飛ばされたウィレナをマウガンが受け止める。シンミャはその隙を見逃さなかった。担いだ巨大剣をウィレナとマウガンに叩きつける。マウガンはそれを大剣で防いだ。だが、あまりの威力だったのか、マウガンの体を通して衝撃が床に伝わりマウガンの足元がボゴォッと大きなクレーターが出来上がった。

一方で、ロージナとティグリスは踊るような剣戟を繰り広げていた。

「あははははっ!お姉さん人間のくせに中々やるねっ!」

ティグリスはロージナの胴体を切り刻もうと両手に持った細剣を乱れ突きする。ロージナは手に嵌めたドラゴンクロウでその細剣の乱れ突きを受け流す。何発か胴体に貰い体に切り傷か刻まれる。

「おあいにく様!私も魔人族よ!」

「へぇ!同族か!嫌いだね!」

ロージナは両手のドラゴンクロウの爪の隙間で細剣をからみ取りティグリスの攻撃を受け止める。そしてお互いに両腕が塞がった状態になったら、ティグリスの腹部めがけて前蹴りを行った。ティグリスは後方に吹き飛ばされ、口から少量の血を流す。

「あははっ楽しくなってきたね!お姉さん!」

「……チッ。やりづらいわね……!バトルジャンキーか……!」

ウィレナはマウガンから離れJと対峙する。

「J!お願い!目を覚まして!」

Jにウィレナの言葉は届かない、執拗にウィレナを叩き潰そうとハンマーを振り下ろす。ウィレナはそれを細剣で受け流すが、徐々に押されていく。そして気づいた時には背後に壁が迫っていた。

「しまった……!躱せない……!」

ドグシャァッとウィレナの頭部にJのハンマーが直撃し、壁に頭部がめり込む。

――うわぁ容赦ない。

ウィレナのライフゲージは0となり、そのまま頭部から大量の血を流し地面に倒れ込んだ。

「グルォオオオオオオオオッ!」

Jは雄たけびを上げ、ハンマーをかつぎマウガンへ向かっていく。マウガンはシンミャの相手をしながらJに気づきシンミャから視線を切る。

「J殿……!ウィレナ様は……!」

マウガンは倒れたウィレナの方を向くと底には血まみれになって地面に突っ伏しているウィレナの姿があった。

「Jィイイイイイイ!貴様ぁアアアアアアアアッ!」

マウガンは激昂しJに向かって大剣を振り上げる。だが、シンミャはこの隙を見逃さなかった。

「余所見ッ!御免ッ!」

シンミャに背を向けた隙だらけの背中に向かってシンミャは巨大剣を振り下ろす。その巨大剣はマウガンの重厚な筋肉と骨によって袈裟斬り切断とはいかないまでも、深手を負わせるには十分な一撃だった。

「グァハァッ!」

そして背中を斬られて体勢を崩したマウガンに向かって、Jは頭部にハンマーを横殴りで叩きつける。巨大剣の一撃によって斜めに背骨を断たれたマウガンにその一撃が加わることによって、腰を谷とした逆方向に「く」の字にへし折れる。マウガンのライフゲージは0となった。

Jは踵を返し、ハンマーを地面を引きずるように移動させティグリスと戦っているロージナに向かって走っていく。そして一気にロージナの背中に踏み込むと左右の肩甲骨の間にパイルバンカーをあてがい、ロージナの背骨を打ち砕いた。

「ぐぎぃぁあっ!」

そしてティグリスはロージナを切り刻み、ロージナは血だるまとなる。ロージナのライフゲージは0となった。

「J様。ナイスアシストです。」

ウィレナ、マウガン、ロージナの3人は絶命した。

Jは血の涙を流し雄たけびを上げる。

「オオオオオオオオオオオオオオオッ!」

「さぁ。J様。半身様。レーヴェリオン陛下の下へ参りましょうぞ。」

ティグリスは割れたステンドグラスの外を指さしJを誘導する。

シンミャ、ティグリス、そしてJはステンドグラスの向こう側へとジャンプして消えていった。後に残されるは、もとパーティの仲間の死体が3つ、国王の死体が1つ。そして今だ眠り続けている王女だけだった。

――なんで他の兵士たちは来ないの?あんなにうるさかったのに。

――多分防音の魔法でもしてたんじゃないかな?

~下層世界地下・魔王城城内王の間~

レーヴェリオンの前にJが立つ。レーヴェリオンはJ、ティグリス、シンミャたちを見下ろし、静寂の中、シンミャが口火を切る。

「レーヴェリオン陛下。陛下の半身であるJ殿をお連れ致しました。しかし少々暴走気味のご様子。レーヴェリオン様の魔力を注いだ結果、体が拒否反応を起こしているようです。いかがいたしましょうか?」

続けてティグリスが報告を行う。

「レーヴェリオン陛下。ヴォルクルプス王の首級をとってまいりました。また、その場にいたJ様の元仲間3名も同様に殺害してきました。これもレーヴェリオン陛下の気配遮断魔法のおかげでございます。」

「うむ、両人ともご苦労であった。面を上げよ。して、Jよ。貴様は余のことが分かるか?」

「レー……ヴぇリオン……?」

「そうだ。だがずいぶんと抵抗しているようだな。よかろう。」

レーヴェリオンは杖の柄でゆかをこつんと小突いた。すると、そこから青白い光の線がJの下へ伸びていき、Jの体を駆け上る。そしてJの瞳に光線が集中し、目が青白く発光し、口からも青白い光が発せられる。

Jの視界にレーヴェリオンからの様々な情報が与えられる。Jはレーヴェリオンの転生先として生み出されたものだと言うこと。それをヴォルクルプスが攫って調整したということ。自身の悪意とレーヴェリオンの魔力が共鳴して、自分自身はレーヴェリオンの半身として、樹上世界を滅ぼさねばいけない使命を帯びているということ。それらを脊髄レベルでJは理解した。自身は争いが大好きであると。殺戮を好み、人の道を外れた存在であると。

「そうだ。Jよ。貴様は余自身なのだ。余に変わり世界を変えて見せよ。安寧たる日々を送る樹上世界を混沌に誘うのだ。世界を騒乱に導け。」

レーヴェリオンはヴォルクルプスの首を掲げJを鼓舞する。

『分かった。レーヴェリオン。俺自身よ。これからは貴様に仕え、世界を滅ぼそう。』

ティグリスは拍手を送る。

「J様!ご誕生おめでとうございます!今日の良き日!J様にはこちらをお渡ししとうございます!」

シンミャはJに手乗りのスノードームのような半球を差し出した。そのドームの中には、木組みの小屋と牧場のようなものが広がっている。地面の質感を見るに地下世界を模したドームのようだ。

「こちらはレーヴェリオン陛下がお造りになられた魔道具!モンスタードームと呼ばれる代物にございます!これをもって魔力を込めると、このドームが投影された地下世界のとある牧場にモンスターが転移する仕組みとなっております。他にも装備品やご休憩の際はこの小屋にてご休憩なさるのがよろしいかと!」

――ドールハウスのモンスターバージョンって事かしら。

――そういうこと。


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