第101話 選択肢、殺害
「オオオオオオオッ!」
大男が雄たけびを上げる。
「よくも!よくもォッ!オラの飼い犬をよくもォッ!許さねぇ!ぶっ殺してやる!」
次は人型の敵だ。
「J!私も戦うわ!」
突如、ウィレナがスカートを割き動きやすい格好に身を変えJの隣へ並ぶ。
「こんな状況になったのは私のせいだし、戦ってる方が退屈しないで済みそうだもの!」
「嬢ちゃんの細腕で何が出来る!」
「あら?落果遺物ってご存じない?」
ウィレナは髪飾りのかんざしを一本抜き取り大男の方へ投げる。かんざしが大男に接触した瞬間。
「あびゃびゃびゃびゃ!」
大男を中心に雷がはじけ飛ぶ。そしてひゅるりとかんざしがウィレナのもとへ戻る。
「王家に伝わる魔法の力!見せてあげる!」
――ウィレナにも自由に攻撃させる。
Jパイルバンカーの杭を付け替える。今までは先端がつぶれた打撃属性の武器だが、刺突属性を持つ先端がとがったパイルバンカーの杭に変更する。
――魔族ルートはグロテスク注意。
大男が突進してくる。Jはそれをサイドステップで無敵時間を利用し躱し背中へ周り込む。膝に向かって前蹴りを行い体勢を崩す。そして男の頭部にパイルバンカーを当て、手首を捻る。
グチャァッと男の頭部がはじけ飛ぶ。頭蓋骨が砕け血が飛び散り目玉が吹き飛び、脳漿が両目の穴から噴き出した。
――わぁグロい。
ウィレナは口を押え青ざめる。
「な……何もそこまでしなくても……」
Jは返答する。
①『襲ってきたのはこいつだ。』
②『お前を守るためだ』
③『やらなかったらやられていた』
④『コロスノタノシイ。』
Jは①番目の選択肢を選んだ。
『襲ってきたのはこいつだ。』
「そう……よね……」
『殺さなければ殺されていた。』
「そうよね……仕方ないものね……J,助けてくれてありがとう……」
ウィレナは続けて言う。
「この後どうする?こいつ、たぶんこのあたりを根城にしている野盗よ。きっと哨戒で見回りに来てたに違いないわ。ここにいると危険だと思うのだけれど。」
①『夜も深い。このままここで夜明けを待とう。』
②『そうだな。すぐにここを出発した方がいい。』
③『野盗なら退治するのが王族としての務めでは?』
④『こいつの身ぐるみをはぎ取ってから行こう』
Jは②番目の選択肢を選んだ。
『そうだな。すぐにここを出発した方がいい』
「ええ、そうね。J、あなたが先行しなさい。従者としての務めよ。」
Jが川にそっ進み始める。まだ夜は深い。
「ああ、了解した。」
『後を付いてきてくれ、あと、危険だから俺の指示に従ってほしい。』
「頼りにしてるわ」
『ウィレナ姫が仲間になった!』
――服を脱がすのね。
――その通り。
Jはゲームメニューを開くように思考してメニューを開く。防具は姫の鎧と豪華なボロボロのドレス。それをどちらも『外す』コマンドを選択する。
「きゃあ!いきなり何をするの!?」
すると目の前の姫自体も鎧と服をはがされガーターベルトにニーソックス、上下そろった豪華な下着のみの姿となる。腰から下げたソードベルトには何も携えていない。
「いきなり服を脱がせるなんて信じられない!王族をなんだと思っているの!」
――最終的にこの姿でラスボスまで行くなんて……
『必要なことなんだ。指示に従ってくれ。』
「そうなのね……何かあったら許さないから。」
パンツ一丁のスキンヘッドの男に下着姿に剥かれた美少女姫の変態御一行がそこにいた。
「今からどこに行くの?」
『まず川を遡上しよう。俺たちが落ちた馬車の残骸があるはずだ。ジラフィム達はそこにまだいるかもしれない。』
「そうね。じゃあ出発しましょう。」
メインクエスト:馬車の残骸の場所まで行こう!
――そういえばメインクエストって出るのあまり見なかったわね。
――このゲーム自由度高いから、メインシナリオ以外でメインシナリオを進めるとよくある。多分フラグ管理が難しいんだろう。
川に沿って川上へ遡上する。暗闇から狼の魔物が出現するが、Jはこれをダッシュで回避し先へ進む。
――たしか前回では狼をダウン取ってその間に逃げていなかったっけ?
――レベルアップして全力ダッシュの移動速度も上がってるから、ダッシュで躱せる。
――ウィレナもついてこれるのね。
ヌルは振り向いてウィレナを見る。Jの移動速度に付いてきているようだとヌルは言った。
――視野外のプレイヤーキャラクターは操作キャラクターに追従するように出来ているからな。
川岸を遡上していくときに、Jは右手に見えるヒビの入った岩に向かう。
――その岩の裏にフラグメントがある。
――壊して確認しましょう。
Jはハンマーを構え岩を砕く。
岩の向こう側は小さめな洞穴となっており、その中心にはフラグメントが光浮いている。
Jはそのフラグメントに手をかざす。すると目の前が一瞬暗転し、すぐに明転する。
高校の教室らしき部屋で月音とギャルの「亀井日葉」がこちらを見ている。日葉がこちらを見ながら月音に話しかけた。
「ねぇ月音ちゃん。私にプログラミング教えてよ!」
「え?私が亀井さんに?」
「もぉー!亀井さんなんて堅苦しい呼び方やめよーよ!私らもうマブダチじゃん?日葉でいいって!それともひよっち、がいい?」
「じゃ……じゃあ日葉。どうしてプログラミングを習いたいの?授業でもやってるのに。」
「あれとか簡単過ぎだし!もっと実践的なの知りたくてさ!それにこの子ちょー可愛いじゃん!私も手伝いっしょに作りたいってこと……月音ちゃんとの……子供をさ……!」
「含みのある言い方おかしくない!?」
「おっ案外ノリいいねー!ナイスツッコミ。まぁ私インテリギャル目指してるじゃん?」
「初耳だけど。」
「それでプログラミングも出来たらウケるっしょ!ギャルなのにプログラム組めるとかさ!」
「日葉は将来プログラマーになりたいの?」
「いや、全然?ただウケるなーって思っただけ。」
「そんな軽い気持ちで……」
「いいじゃんいいじゃん!入り口はガバガバな方が入りやすいって!それに私プログラムのテスト学年2位だよ?」
「え……私1位……」
「ええー!くやしいくやしいくーやーしーいー!」
「でも私ちゃんと勉強してて一位だから才能は日葉の方があるかも」
「へへーん!そうです!私ちゃんは天才なのです!でもおしえてほしーなー。」
「そこまで言うなら……」
「ほんと!?月音大好き!いっぱいやって私たちの子共……作ろうね!」
「だから言い方!作れないし作らないし!」
「あははっ!」
Jの目の前が明転する。
――百合はいいぞ……
――Jは何を言っているの?花は確かにいいと思うけど。
――いや、何でもない。次のフラグメントを目指そう。
J達は川岸を遡上して野盗の拠点に着いた。
――ここでワープホールを手に入れるのね。
――正解。
――またステルス?
――いや、堂々と移動していく。
野盗の拠点には6人の野盗がいて、2人は川の両側を見張っていて中央の小屋に2人が酒を酌み交わしている。残りの2人は小屋の周りをウロウロ哨戒している。Jはハンマーを構え堂々と川岸にいる野盗の前に姿を現す。
「誰だお前は!?」
J達の姿を見て野盗が驚きの声を上げる。それに反応して、拠点の野盗たちも何事かとJたちのところへ武器を構えてやってこようとする。Jは直近の野盗を全力ダッシュでスルーし、中央の小屋へ一気に駆け寄る。Jは目の前を遮る二人の野盗をハンマーの棘の横薙ぎで思い切り叩き貫いた。
「ぐぎゃぁッ!」
野盗達は断末魔とともにライフゲージが0になって絶命した。
――命って軽いのね。
――ゲームだからね。
Jは拠点の中に入って宝箱を開く。すると中から「転送の落果遺物」であるワープホールが3つ手に入った。
「ごめんなさい。私達に必要なものなの。せめて、安らかに……」
ウィレナは倒れた野盗に手を合わせる。
その後、Jは拠点の外に出てすぐに全力ダッシュで野盗の追手を振り切る。
野盗の拠点を後にし、上流に進むと進んでいると二股に分かれている川の合流地点に到達した。




