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第100話 2週目

――一度見たイベントはスキップしていいですか?

――いいわ。それも出来るようになってるはず。

――よしよし、なんとか間に合いそうだ。耐えてくれよ!俺の膀胱!

――下品ね

――すみませんね!

Jの目の前が明転する。

~ジマリ森林~

Jはカプセルの落果遺物から身を乗り出し、カプセルの背後の茂みに向かい、茨をハンマーで引きちぎるとそこにはフラグメントがあった。

――武器とかも引継ぎなのね。しかもパンイチのまま。

――ああ、カルトゥムの壺も腰についてるだろ?ほとんどの装備とアイテムは引継ぎで切るようになってる。武器もハンマーとパイルバンカー、鍵爪ロープもあるだろ?

Jはフラグメントに手を触れると目の前が暗転する。

――さぁ何をみせてくれるのか。

――私も楽しみ。

視界が明転し、Jの目の前に見覚えのある場面が広がる。

「えーテステス……どうかな?ちゃんと録画出来てるかな?うん……大丈夫そう……。」

薄暗い部屋にぬいぐるみがうずたかく積まれている。大きな眼鏡をかけたロングヘア―の少女、おそらく「沖兎月音」の高校生の頃の映像だろう。背後の壁には制服が掛けられている。首からは魔法陣のような装飾が施されたネックレスをかけている。月音は目の前に座ると、カメラこちらに向かってしゃべりだした。おそらく日記として映像記録を残そうとしているのだろう。

「私は沖兎月音。今日から開発日記を残します。私の友達を生み出すプロジェクト。人工知能「ヘルツ」の制作に取り掛かります。「ヘルツ」はドイツ語で「心」。私は心を作り出します。今日はまずデザインから。何事も形は大事です。」

沖兎月音はタブレットを取り出しさらさらと何かを書き始める。そして場面は一旦飛び、沖兎月音がタブレットをカメラに見せる。そこには拘束具が外れた白いひらひらの衣を纏ったヌルの姿がポップな絵柄で描かれていた。

「この子が「ヘルツ」。後ろの布みたいな手でいろんなものを掴んだりデータをローディングしたりします。モデリングはまた今度で。今日はこれでおしまい。今日の制作日記を終わります。」

目の前が暗転する。ヌルの拘束具が

――どうやら沖兎月音っていう少女の日記が続いている感じらしいな。

――ヘルツ……それが私の本当の名前……

――ヌル?いや、ヘルツって呼ぼうか?名前を変更するか?

――いいえ、私はヌルのままでいい。あなたがつけてくれたこの名前、気に入ってるの。次のフラグメントを探しましょう。次はどこにあるの?

――この後ジラフィムに吹き飛ばされて壊された家の裏手にある。その前に川岸に1個ある。イベントスキップはどうすればいい?

――メニュー画面からスキップページが開かれるか、もしくは念じればスキップできるはずだわ。

――了解。

Jは森の出口に向かって獣道を進む。『木の棒』が落ちていたりするがこれはスルーする。

Jが進んでいくと、鉄の鎧で全身を纏った兵士が5人やってくる。

――こいつらってチュートリアルのやつで一回負けた相手よね?

――ああ、前回はやられた方が早いけど今回は違う。

「こいつか?天井からの落果遺人っていうのは?」

「分からん。落果遺物を狙った賊かもしれん。ひとまず拘束だ。ひょっとすると樹上人かもしれんからな。」

「樹上人だと?まあいい。ちょうど来訪してらっしゃる姫様へのいい報告にもなる。」

兵士たちは武器を構える。と、次の瞬間、Jは一瞬でハンマーを横脇に構え兵士たちを薙ぎ払った。

「ぐわぁあっ!!」

兵士たちはドミノ倒しのように倒れ込み、起き上がることは出来ない。Jはその倒れた兵士たちの上を跨って先に進む。

獣道をしばらく進むと、ジマリ村の入り口に着いた。村に入ると村の中央にいたジラフィムがこちらに気づいて近づいてくる。

「貴様……森の奥から来たな?兵士がそちらに向かっていったはずだ。知らないか?」

①『会ってない。』

②『俺が倒した。』

③『逃げてきた。』

④『お前は誰だ?』

Jは②番目の選択肢を選んだ。

『俺が倒した』

「なんだと!?末端とはいえ皇国の兵士たちを……!貴様!何者だ!?」

①『Jだ』

②『俺は誰だ?』

③「知らんな。」

④『お前は誰だ?』

Jは④番目の選択肢を選んだ。

――あら、珍しい。

『お前は誰だ?』

「我はティーア皇国王族直下近衛兵騎士団団長ジラフィム!自らの名を名乗らん不届きものめ!このジラフィムが直接叩きのめしてやろう!」

ジラフィムは剣を抜かずに拳を顔の前に構える。

「不届きものを倒すのに剣は使わん。殺してしまうかもしれんからな。この鉄拳にて貴様を再起不能にしてやろう。話はその後で」

ジラフィム瞬歩の如くJに一気に間合いを詰める。Jはそれを見越していたかのように、ジラフィムが突っ込んできたか所にパイルバンカーを中腰で構えており、突っ込んできたジラフィムの頭部めがけてパイルバンカーを射出した。ジラフィムは突っ込んできた反対方向に吹き飛ぶ。ジラフィムのライフゲージが半分ほど減少する。

「ぐはぁ!」

ジラフィムは兵士の壁に激突し、兵士たちはボーリングのピンのように吹き飛んだ。

「団長!ご無事ですか!?」

「うむ、問題ない。少し油断しただけだ。」

ジラフィムは立ち上がり再び拳を構える。ジラフィム今度はすり足歩行でJとの間合いをじりじりと詰めていく。逆にJはハンマーを構えジラフィムに一気に詰め寄った。ジラフィムはそれに反応して一足飛びでJとの間合いを詰めるが、それよりも先にJのハンマーの攻撃を胴体に受け後ろに吹き飛んだ。ジラフィムの体力ゲージが0となって、ジラフィムは膝をつく。

――あら早い。

――ステータスも引継ぎだしね。

ジラフィムの周辺に兵士が集結し、ジラフィムを守るようにJにファランクスの如く槍を構える。突如、Jの右肩にボウガンの矢が突き刺さり、Jは倒れる。Jはそのボウガンの矢を抜くが、体が痺れて動けない。Jは膝をつくがジラフィムはゆっくりと立ち上がりJに説明する。

「悪く思うな。痺れ薬を塗った石弓だ。巨象をも一撃で昏倒させる代物だ。」

――ジラフィムに倒されるパターンもあるけど、倒した方が早い。

ジラフィムの背後に、Jが最初に倒した兵士たちが近づいてくる。反対側からは高貴なドレスを纏ったウィレナが近づいてくる。

「ねぇジラフィム。あんたの部下はなんでこいつ連れてきたの?」

――ここから一度見たイベントだけど、スキップしたいなー

――いいわよ。許可します。

Jは倒れているためメニュー画面を開くことが出来ない。頭の中で『スキップ』と念じると、目の前が暗転して、すぐに明転して別の空間へ移動、周囲の状況も変わっていた。

「――きて……起きて……」

水音が聞こえる。どうやらウィレナ達と馬車で移動中に谷底へ落ちた後のようだ。

「……起きなさい!姫の命令よ!」

――イベントスキップ。

「J!これを使って!」

目の前には大男とその飼い狼がJに向かって吠えている。

ウィレナがJに向かって細剣を投げ、それをタイミングよくキャッチする。Jはそれを地面に突き立て使用しない。

――ウィレナの好意を無碍に。

――だって弱いし。

Jはハンマーを構え突進してくる。Jはこれをゴルフスイングのようにハンマーを振り上げ狼を貫き吹き飛ばす。狼のライフゲージは一撃で0となった。

――今回は殺すのね。

――ああ、魔族ルートに行くには正邪ゲージを邪方向に進ませる必要があるからな。悪いことどんどんしていく。


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