第96話 違法主催者と治安兵士と6人
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ふと、俺は考えた。
この世界で1番力を持っているのは俺だろう。地球を守ってきた力の石と時の石を、同時に手にしているのだから。誰が相手でも勝てるだろう、相手がモンスターであっても、人であっても。
二大賢者にできなかった石の覚醒を無意識にさせ、石の効力を最大限引き出せるようになった訳だが……この力があれば世界を征服することもできるな。魔王を倒した力を持っているんだ、全てのモンスターを従えることだって。
バベル城もハロス城なんて簡単に壊すことができるだろうし、その気になればシティスト全体を消せるだろう。もちろんそんなことはしない、全員平和に生きていてほしいから。
だが俺の力が……魔王じゃなくとも他者に利用されてしまえば世界は今度こそ終わる。だから俺が力を制御して、他者に力を利用されなければ……世界を守ることができるだろう。
または……俺自身を消すか。
俺がいなくなれば、力を悪用する奴もいなくなる。石の力で石の力を消したいがそれは難しそうだ、1番簡単なのは……命を落とすこと。俺がもし石を持ったまま死ねば、同時に石も消滅するだろうし、俺の心も蝕まれなくて済む。
今はちょうどバベル城の頂上に立っている。ここから飛び降りれば一溜りもないだろう。バベル城に暮らしている人からすればとんでもない光景を見せることになるが。空から人が落ちてきて、砕け散るのだから。
今まで出会ってきた人に心の中で感謝を告げて、いざ飛び降りてみるも……助けられてしまった。時の石の効力なのだろう、飛び降りる前に戻ってしまった。飛び降りる前というのは、バベル城の周りを歩いていた時。まだリンゴを食べ終わってもいないし、頂上にも登っていない。
死のうとしても、石が止めてくる。
俺は絶対に死ねない存在となったのだ。絶対的な不死身の存在に。死のうとしても時の石が時を巻き戻す。人智を超えた石、人間の想像する物全てを凌駕してくる。
何もすることが無くなった俺は、1人寂しく家に帰ることにした。といっても実家に戻るとまた話が変わってくるだろうし、酒屋の倉庫に行ってもそこには彼がいる。シャリアの6人に会いたいが、下手な介入はこれ以上しないでおこう。
とりあえずポリスタットの郊外にあるボロボロの空き家を利用した。どうせ人は来ない、来るとしてもシャリアの6人くらいだがそれは何とか回避すればいいだけ。
なけなしの金で買った紙を壁に貼り、状況を整理する。彼が追放されることはなくなったし、魔王を討伐したことによって4人が殺されることもなくなった。よってティナとは出会わなくなるが、俺が助言しておいたし彼なら訪れるだろう。
で、シャリアの6人には治安兵士を勧めた。たった3日間でもの凄く上達していたし、魔王との戦いの時にジャラとの相性もバツグンだったから、この世界でも共闘してくれるだろう。
それで魔王は死んだからバジリスクが現れることは無い。マーナガルムとかリザードとかは現れるだろうが、それはデリーシャが討伐してくれるだろう。他にも若い討伐パーティーが沢山いるからな、彼らとも切磋琢磨してよりよい世界になるだろう。
もう少しで夜になるし、今するべきことは……1つだけあったな。
この問題もいつしか解決させなければならなかった。特に上層部の連中だ、汚く金儲けをしている奴らは早めに取り締まっておくべきだ。治安兵士の人達も目を付けていただろうし。
俺は夜遅く、ポリスタットの中心部にある喫茶店を訪れ……そこの地下からパワー・コンテストに出場した。この問題は大きかったが、今の俺なら簡単に潰せる。といっても上層部の彼らを殺すんじゃない、ただ更生させるだけ。
パワー・コンテストの参加者に治安兵士のメンバーがいることを確認し、俺も参加した。どうやらこの時期から彼らはパワー・コンテストに潜入していたみたいだな。ならいつかは潰れるだろうが、心残りにならないうちにも。
「新入りですか?」
受付している女性の声を無視し、係の人を無理やり押し切って中に入る。中では鎖に囲まれた巨大な部屋で、数人の若い男が巨人と戦っていたがボコボコにされていた。あのままだったら死んでしまうと思い、すぐさま飛び跳ねて巨人の背中に傷を入れる。
たったそれだけで巨人は倒れた。謎の侵入者が巨人を倒した……となり会場は大盛り上がりだったが、係の人に捕まる前に事を終わらせるために俺は高く飛び跳ねた。上から見ていた4人の上層部の前に降り立ち、1人の首を掴んで持ち上げる。
「何をする気だ……」
「違法主催者を取り締まりに来た」
それだけを告げ、4人を隅に追いやる。一旦下に戻り会場を囲う金の長い鎖を拝借し、また上に戻って4人を締め上げた。これで持ちやすくなった、一応は俺よりも歳をとっているお偉いさんだ。傷を付けないように慎重に下まで運び、唖然としている治安兵士のメンバーの前に置いた。
「違法コンテストの主催者を捕まえました」
多少無理のある捕まえ方だったが、証拠はいくらでもある。この場でコンテストを主催していたという事実も、どこからかモンスターを違法に捕まえて放っていたという事実も全て出せる。
集まってきた治安兵士のメンバーの中には、若かりし頃のジャラもいた。この時はまだ入りたてなのか、指示する立場ではなく隅の方で証拠集めに勤しんでいた。
治安兵士から事情聴取を受けるが適当に流す。後は治安兵士の仕事だ、俺は捕まえるだけ。証拠くらいならある程度提示できるが、既に潜入していたということは何個か持っているんだろう。
と、ここで治安兵士からスカウトされそうになったが、俺は断りつつもある6人を推薦した。
「治安兵士という団体です、興味があれば是非連絡を----」
「私の友人に、ある6人組がいます。彼らの方が適しているでしょう。協調性もあって何よりも飲み込みが早い」
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