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第92話 お別れの時間

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 とにかく、4人を生かしたまま魔王を討伐すればいい。封印したらまたどこかの未来で復活してしまうから、前と同じように完全に討伐しよう。


 前は魔王の血を浴びた剣が光を纏い巨大化、それで心臓ごと切ったんだっけな。今回も同じことをすればいいが、さっき魔王に刺さったはずの剣には魔王の血が付いていない。刺さりが甘かったんだろう、次はもう少し深く刺さなければ。


「ソールとサタナ、ガルとフィンに分かれて周りのゴブリンを討伐して。討伐し終わったら共に魔王の相手をしよう。それとゴブリンの棍棒は俺に渡して」


 近くにいた4人に指示を出し、一旦バラけさせた。魔王は本来力の石を持っている4人を狙うべきなのだが、目の前には力の石を融合させて覚醒させた男が1人立ちはだかっている。ここは……俺を狙ってくるよな。


 奴は怒りながらもスケルトンを召喚し、スケルトンの骨を飛ばしてくる。仲間であるはずのスケルトンの体を、奴はわざわざ分解して投げてくる。もはやスケルトンの人権なんてあったもんじゃない。俺は木を使って軽々と避けつつも、ガルから棍棒を貰う。


 俺は棍棒を銀色に光るハンマーに変化させ、周りにいたスケルトンや飛んでくる骨を一掃した。といってもハンマーを投げるだけ。ハンマーは的確に急所を狙って飛んでいくから、特に何もしなくとも敵は全滅する。


 スケルトンの骨を手に入れた俺はそれを更に槍に変化させ、手に持ったまま魔王の方へ突進した。より深い傷をつけるには、より長い武器が必要だろう。魔王も巨人くらいの大きさになっているため動きが鈍い、だから簡単に刺さると思っていたがそれは甘かった。


 奴は瞬間移動で俺の後ろに周り、更に槍を奪って俺の腹にそれを突き刺した。スケルトンの槍は鋭く細い、腹に刺さった槍は抜けずに体を貫通した。大量の血が俺の体から溢れ出ていく。


 周りのゴブリンを討伐し終わった4人も、どうしていいか分からず戸惑っていた。「助けに来た」と言っていた本人が真っ先にやられているんだからな。


 どうにか槍を抜けないか試してみるも、完全に槍は俺の腹を貫通していて下手に抜くと死んでしまうということが薄々感じられた。力の石を持っているはずなのに、痛みには弱い。腹を貫通しているんだがら、そりゃそうか。魔王は周りにいた4人を襲おうとしてこの場を離れていった。


 しかし、それと同時に俺の頭は一気に冴え渡ってきたのだ。意識が朦朧とするのではなく。俺にはジュリーを治したように、傷を治す力がある。ウィドウとティナは助けられなかったが、今の俺ならできる気がする。


 俺は自分の腹に手を押し当て、ジュリーを治した時のように必死にあることを考えていた。それは「これ以上仲間を失いたくない」という望み。あの時俺はユーゴを失ったばかりで、ジェスとユーゴに続いてジュリーまで……となり落ち込んでいたが「失いたくない」と望むことで彼は復活した。


 ウィドウの時もティナの時も思っていたが助けられなかった。でも……今の俺なら……やってやろうじゃないか。魔王相手に負けられない、絶対に4人を救って、魔王を倒すんだ。


 そう考えていると、少しずつ俺の体が白く光り出していった。槍もへし折れ、体の傷はどんどん埋まっていく。溢れ出ていた血もまた体に戻っていくようにして……俺は復活した、あの時の力で。


 早速4人を襲おうとしている魔王の背後を取り、後ろからスケルトンの槍を突き刺した。当然、奴は俺のことを殺したと思っていたものだから驚いていたが、それよりも胸から大量の青い血が溢れていることに対して奴は驚いていた。


 流れ出ていく青い血に自分の剣を浸し、また持ち上げる。すると剣は光を纏い出して、更に大きくなっていく。これはさっき奴を倒した時と同じ流れだ、これなら倒せる。


「待て、止まるのだ。何でも望みを叶えてやろう、何が欲しいか?」


 魔王は俺の巨大な光り輝く剣を見て腰を抜かしたのか、手をついて謝ってきた。鋭い爪と牙を生やした紫の巨人が、未来では地球を破壊しようとしていた魔王が、人間相手に謝ろうとしていたのだ。しかしもう遅い、もう俺の手は止められない。そのまま重力の流れに沿って、剣をゆっくりと下ろした。


 奴の体は真っ二つに割れ、死体は青い灰となって消滅していった。周りにあったゴブリンやスケルトンの死骸も消滅し、ハンマーも光り輝く剣もまた元の形に戻っていった。これで本当に、全てが終わったんだ。魔王はもうどの世界にも存在しない。4人の命も助かったんだ。


「マイト、お別れ……の時間だ」


 と、突然脳内にいるガルの声が聞こえた。お別れの時間、何を言っているんだ。ガルは涙を流し始めたために、代わりにフィンが説明してくれた。


「マイトが過去の僕たち……を救ってくれたから、僕たちは魂になる……ことは無い。だから過去は改変され、体からは消……滅する」


 そうだった。俺はただ過去に来たんじゃない、4人の命を救って、魔王を完全に討伐しに来たんだ。で、それが叶ったため、脳内にいる4人は消滅する。だから彼らの声が少しずつ聞き取りにくくなっているんだな。


 それじゃあここで脳内の4人とはお別れか、1人ずつ話してみたかったが時間も無かったため一言だけ……「ありがとう」と伝えた。魔王を倒すことができたのは、4人がいたから。もちろんノーマッドもだけど、根本は4人がいたから。


「こちら……こそ」


 これで4人の魂は俺の体から消滅していった。それは今の4人が救われたということを証明している。今ので全てが終わったんだ、と思い元の時代に戻ろうとすると、脳内に新たな声が届いた。


「残念ながら君は戻れない」


 時の石を保護する賢者・クロースの声が、俺の脳内に響き渡った。彼らは死んだのに一体何故……とは思ったが、未来に声を届けることはできるんだっけな。


「もうマイト・ラスターが石を融合させることは無いからだ。君ではないマイト・ラスターは、これから魔王という存在に触れずに生きていくことになる。だから君と彼は同じ人物でも、全く違った人生を歩むことになる」


 ……その通りだ。過去を変えたことにより、俺はパーティーから追放されること自体無くなる。そこからウェール村に行くことも無ければ、シャリアのタイガたちに出会うことも無くなる。下手すればランも生まれないし、そもそもティナとも出会わない。


 全く違った人生になるだろうな。


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