表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/100

第91話 未来から助けに来た

----------


 真っ暗な空間に、1つだけヒビが入っていく。そのヒビは少しずつ広がっていき、隙間からはそよ風が入ってくるのと共に、過去の風景を見ることができる。ヒビが大きくなれば、実際に過去の風景の方へ足を踏み入れることも可能。


 俺はさっき「4人が教会に揃った時に戻りたい」と願った。それで願いが叶ったため、俺は今教会の前にいる。デリーシャの4人が魔王を討伐しようと集った場所でもあり、フィンが黒いローブを着て俺にウェール村に行くよう勧めた場所でもある。


 過去に来ているからか、まだ自然の温かみを感じることができる。何せ今の世界は魔王のせいで全て焼かれているから。森も草原に生えていたであろう草も、1本たりとも残らず全て奴に焼かれた。


 だから森を見ると心が落ち着く。


 それにこの教会はそれほど廃れていない。俺が過去に黒いローブを着たフィンに会った時は、草木は生い茂り教会の壁も壊されていた。それらが魔王との戦闘の跡なんだろう、今はまだ綺麗だ。


 まずやるべきなのは、何も知らない4人に説明をすること。魔王が復活する少し前に戻ってきたことだし、サタナとソールの魂が抜かれる前に事を済ませたい。


 森に囲まれた教会の中に、鎧を着て剣を持った4人がある石を前にして立っていた。石と言っても見た目が石にそっくりなだけであって、力の石や時の石のような力を持つ物じゃない。恐らく魔王を封印している物、それが床から突き出して生えている。


「今日が魔王の封印解放予定日だが……まだ封印されているのか」


 過去のガルはそう呟きつつ、石の塊を触らないように辺りをうろつく。それを俺は教会にある椅子の隙間から覗いている。力の石と時の石の存在は知っていても、過去に遡ってきたとか2人は魂を吸い取られるとか急に言われても理解できないと思うから、一旦様子を見ている。


 現に俺の脳内にいる4人が「急に言われても、当時なら魔王の手下かと疑う」と言っているのだし。


「マイトは今頃何をしているんだろうな」

「あいつのことは放っておけ」


 彼らの会話を他所に、俺は魔王の討伐の準備を始めた。さっき魔王を討伐した手順で大丈夫だろう、奴から血を奪って剣を巨大にする。それで心臓を貫けば終わりだ。周りにゴブリンが召喚されていたらしいし、ハンマーの供給もある。


 それに教会の周りには民家もない。森の中に孤立した教会があるだけだから、魔王が暴走したとしても市民への危害は加えられないだろう。まぁ今の俺たちなら魔王を完全に討伐できるさ----


「誰だ」


 教会の椅子の裏にもたれかかって剣やナイフの準備に集中していた結果、過去のガルに気づかれてしまった。彼は俺の前に立っており、俺の胸倉を掴むや否や軽く投げ飛ばした。俺は彼らより8歳くらい上だ、それなのに軽々しく持ち上げられるとは。


 俺は出していた剣とナイフを腰にしまい両手を挙げたが、"マイト・ラスター"とは気づいてもらえずに逆に剣を向けられる。この顔を見ても気づかないんだろうか、と思い声に出して言ってみた。


「俺はマイト・ラスターだ! 時の石を使ってここに来た、俺は未来から来たんだ!」


 手を挙げて自分は無害な人物であるという証明をしながらも大声でそう発した。信じてもらわないと事が進まないし、何より今は協力すべき展開だから。


「……確かに似ている。けど、何でピンク色の髪をしているの?」

「魔王が作った偽物の可能性だってある、証拠を示せ。今すぐ」


 彼らもまだ疑っているようで剣は下ろしたものの、目つきは何一つ変わっていない。何ならサタナに至ってはナイフを隠し持っているのが見える。ずっと近くで見ていたから分かる、彼らからは本当の殺気を感じる。それは脳内にいる彼らもそう。


「ごめん、やっぱり疑っているね」


 過去が変わっているため今起きている出来事というのは、脳内にいる彼らも体験したことない出来事。だからどうやって対処すればいいのか、俺も分からなければ本人も分からない。


 とりあえず「アキラとクロースから頼まれた」こととか「未来で魔王が地球を破壊しようとした」こととかを話せば信用してくれるだろう。少なくともウェール村の村長の本名だったり、力の石の存在だったりと当時の俺が知り得ないことを言えば。


 と、その時。彼らの後ろにあった石が急に紫色に光り出した。彼らは前にいる俺を見ているため、誰も後ろを向いていない。あの石は……魔王を封印していた石だ。どういう原理かは分からないが、見た記憶だとここで魔王が復活しソールが復活する。


「ごめん、ソール」


 俺はソールに向かって、腰に差していたナイフを思いっきり投げた。危険を察知したガルはソールに飛びつき、間一髪というところでナイフを避けることができた。続いてもう一発、俺は背中に差していた剣をソールと石の間に向かって投げる。


 ここで近くにいたサタナがナイフを取り出して俺の方へ向かってきていたが、その前にグサッ……という剣の刺さる音がした。その音に気づいたサタナは一旦攻撃をやめて立ち止まった。同様にフィンもソールもガルも。


 剣は空中に留まっていて動かない。明らかに何かに刺さっているんだ。では何に刺さったのかというと、それは……透明な魔王にだ。


 魔王は透明の効果を解除し、姿を現す。奴は腕に刺さっている剣を抜き、歩きながらも体を巨人くらいの大きさに変化させていった。何とかしてソールとガルをこっちに連れてくるようにとサタナに伝えたが、彼女は「本当は誰なの」というばかりで話を聞いてくれない。


 だから俺は手短に、本当のことを伝えた。




「ソールとサタナはこの場で、ガルとフィンは俺を追放した後、魔王に殺される。俺は未来から助けに来た、力の石と時の石の力で」と。




 彼女は納得していない様子だが、2人をこっちに連れてきてくれた。ガルも納得していないのか「未来から来たという証拠を見せろ」と言ってくる。「今は目の前で魔王が復活しているから」と言っても聞いてくれない。やはり魔王が作り出した偽物だと思われているんだろう。


「今、俺の中には訳あって4人の魂が入っている。混乱しないでよく聞いて、未来では魔王に全てを破壊された。ウェール村の村長も亡くした。それもこれも全て変えるために来た」


 こう説明するしかない。いきなり説明されて衝撃を受けるかもしれないな、だって自分たちはここで死に、色々とあって俺の体に魂が入っていくとか聞かされたら。しかし証拠を示せと言われても、それに見合った証拠を探すのにまた手間がかかる。今はこうするしか。


 と、ここで脳内にいるフィンがある提案をしてきた。


「自分にしか分からない秘密を話し合おう。他の人に言ったことのない秘密を」と。


 確かにそれなら、俺の中に4人の魂が入っているという証拠にもなるし、時の石や力の石の石が関与しているという証拠にも繋がる。本当にどうでもいい情報でいい、魔王がわざわざ知りたがらないようなつまらない情報でも。


 脳内にいる他の3人は「この際仕方がない」と腹を割って話すことにしてくれた。俺は剣を手元に戻しつつ、作戦を伝えるために4人を呼んだ。魔王にはソールの方へ投げたナイフをもう一度お見舞いしてやった。ナイフだから心臓を貫通することはないだろうが、自動で勝手に飛び回ってくれるから時間稼ぎにはちょうどいい。


 4人を外に連れ出して、脳内にいる4人の情報を渡せるだけ渡した。


 ガルの秘密は「暗闇が苦手」、サタナの秘密は「ソールのことが一時期気になっていた」、ソールの秘密は「デリーシャと名付けたのは自分」、フィンの秘密は「最近一人称を俺にしようかどうか迷っている」だった。


 それを全て彼らに伝えた。「これで俺の中に魂が入っている証拠になるだろ」と。皆恥ずかしがっていたが、実際証拠にはなったようで俺の言うことを聞いてくれるようになった。


 伝え終わったのと同時に、ちょこまかと動くナイフをへし折った魔王が教会の中から現れた。しかも近くの森からゴブリンを数十体召喚し、俺たちを囲むように配置させた。奴は本気だ、何せ俺たちを奇襲する最大のチャンスを、よく分からないピンク髪の男に邪魔されたのだから。


「デリーシャ、俺の未来では活動を休止していた。だから揃ったのは久しぶりなんだ」


 俺は1人でそう呟きつつも、バラバラになったナイフの欠片を手元に戻し修復した。これも石の力だ。この作業を見た者は皆驚いていた、魔王含めて。


----------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ