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第90話 俺が追放される前

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 たった一言「戻りたい」と呟くだけで、俺は過去に戻れるようになっていた。体は白く光り出し、真っ暗な空間には少しずつヒビが入っていく。広がっていったヒビの隙間からは、何度も見たことのある景色が見える。


 そう、時の石の賢者・クロースのいた教会の中。実際には時の石を保護していた地下室の中だが。そこにはなんとクロースだけでなくティナの両親のフォルスとウールもいた。


 彼らはどうやって時の石を完全に保護するか話し合っていた。結界を張るべきか、結界を張るなら強力な結界にすべきだとか。俺はそこにいる3人に話しかけてみたが、反応は無い。前みたいに少し時間が必要なのか、その時間に順応するためには。


 彼らが呪文を唱え始めたくらいに、ちょうど俺の姿が見えるようになったのか、クロースは2人に呪文を止めて別室で休むよう提案していた。それで2人が部屋の外に出たのを確認し、彼は俺に話かけてきた。


「マイト・ラスターか。時の石で君の未来は全て見ていたよ」


 彼は気さくに話しかけてくれたが、俺の未来を全て見ていたというのはどういうことだろう。時の石って他の人の未来を全て見れるのだろうか。


「時の石を使って私とアキラを助けに来たんだろう。だが心配するな、私たちの死は歴史に必要だからな」


 彼らの死は歴史に必要? 生きていた方が俺たちにとっても、残されたアイやウィドウやサタナにとってもいいはずだ。もしここで魔王を倒してしまえば全てが終わるし、俺も戦わなくて済むはずなのに。


「確認できる限りの未来を見てきた。私たちが生き残れば魔王は必ず未来で支配行為を行う。私たちが死ねば"ある時点以降"、魔王は消滅する」


 ある時点がどこだとは教えてくれなかったが、代わりに遠くの人とも会話できる呪文を使ってアキラとも話を繋いでくれた。しかし彼も「絶対に助けるな」の一点張りで、一向にこちらの話を聞いてくれない。


「あと5分33秒で魔王がここに来る、それまでに時の石を完全に封印し力の石を分配する。すると魔王は完全な石を取り込めないだろう。君には完全な石が2つともあるが、魔王は取り込めないまま封印される」


「ここからが本題だ、私たちは死に未来は変わらない。だがそれでいい、石の能力を覚醒させられるのは君しかいないのだから」


 石の能力を覚醒させた? というかあと5分で魔王がここに来るのなら早めに対策をしなければ。それに2人が死んで歴史が変わらないのなら、結果は同じじゃないか。


「私たちにもできないことを、君はこなした。時の石を使って過去に遡る、これは私にもできなかった。私にできることといえば、未来に声を送ることくらい。君が石に取り込まれそうになった時も、私たちで声をかけただろう」


 ……確かに、俺が戦意を喪失した時に2人の声が聞こえた。「儀式は開閉する」とか「内面から変えてみよう」とか。剣に戦い方を教えていたりもしたな。何の意味があったかは分からないが。


「それが力の石の完全な融合過程だ、ツイン・ワンネスはあくまでも準備段階。私たちにもできないことをやってくれた」


 ただ、時の石を使って過去に遡るようにしてくれたのはアイとウィドウである。その事を伝えると彼は高らかに笑い出した。


「もちろん見ていた。アイとウィドウとデリーシャの努力の結果だ……あと2分で魔王が来るから準備させてほしい。アキラの方はまだ時間がある」と、クロースはフォルスとウールを部屋に招き呪文を唱えさせた。彼らから流れる血は光り出し、少しずつ教会と石を守る結界となっていく。


 しかし目に見える結界に、大きな穴が空いている。これだとガラ空きで何も結界の意味を成していないようにも見えるが。


「魔王をおびき寄せる、私とアキラを魔王に殺させるのだ」と彼は汗を拭きながら答える。彼もこれから死んでいく運命なんだ、少しばかりは焦っているのだろう。


 俺はさっきの遠くの人とも会話できる呪文を使って、アキラと話してみた。俺の中にはサタナの魂が眠っているし、少しくらいは話す時間もあるだろう。


「サタナに言いたいことはありますか」


「……特に無い。私たちは過去から見守っているからな、嫌なことがあっても立ち向かえ、未来は必ずいい方向に進む」


 と彼は「特に無い」と言いつつも重要なメッセージを彼女に伝えていた。彼女も涙ぐんでいるが、肝心の姿を彼に見せることはできなかった。しかし彼らはこれからも過去から見守り続ける。時の石を使って俺たちに情報を教えてくれるはず。


 時の石の完全なる保護、力の石の分割……更に、二大賢者の死を見届けて、俺は別の時間帯に移動した。2人の死は必須だったから助けられなかったが、他の人の命は助けられる。例えば……デリーシャのメンバーとかなら。


 真っ暗な空間に戻った俺は、少し息を整えてから他の時間帯に移動しようと試みた。次に行くべき時間は、デリーシャのメンバーが死ぬ時。魔王によってサタナとソールの魂が奪われた時でもあり、ガルが俺を追放しフィンが俺を遠くに逃がした時。


 今のままだと4人はずっと俺の中で生き続けることになる。できればそれは回避したい、しかし魂を外に放出する方法も知らないし、もし放出できたとしてもモンスターの体に戻すのは嫌だろう。普通の生活が送れなくなるし、誤って別の討伐パーティーが討伐しに来る恐れもある。


 だから過去の4人を救って、魔王の息の根を完全に止める。改めて魔王と戦うのは気が引けるが、それで世界は救われるのなら何度でも挑んでやる。


「俺が追放される前、4人が教会に揃った時に戻りたい」


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