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第89話 今までありがとう

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 助けられたはずの命が目の前で失われていく。力の石と時の石、地球を守ってきたはずの2つの石を手にしていても助けられなかった。ずっと俺のことを待ってくれていた人も、俺のことをサポートしてくれた人も、ノーマッドとして一緒に活動してきた仲間も失った。


 じゃあ今、俺は何をすべきか。

 それは、過去に干渉して彼らを救う。せっかく時の石が手元にあるんだ、彼らを救いつつも魔王によって失われた全ての命を解放する。


 具体的には……まだ考えていない。

 前は肉体的干渉ということで、過去に遡ったのにも関わらずただ記憶を覗き見するだけで終わった。ただ今回は精神的干渉、今回こそは過去に干渉できるはずだが……まだ過去に戻れていないのか周りは真っ暗。


「僕は時の石の使い方なんて知らない」

「あくまで力の石の賢者の孫だから、もう少し考えてから行動して」


 錬金術師の末裔であるフィンも、力の石の賢者・アキラの孫であるサタナも時の石の使い方は理解していなかったようだ。もちろん呪文を唱えることのできるガルも、魔王の中に閉じ込められていたソールも知らない。


 そうだったな、彼女を失ったこの喪失感と怒りから本能的に過去に遡ると言ってしまった。時の石を持っていたとしても、使い方は分からない。しかし周りは真っ暗、ここがどこだか分からない。だから何かしら行動しないと。


 とにかく俺は、過去に遡ることだけを考えた。

過去に干渉するとしても、どこに戻るのが1番適しているんだろう。俺が追放された時期か、それなら4人の命も助かる。または二大賢者が殺された時期か、これならそもそも力の石が分けられることも無くなる。


 偽物のデリーシャが復活する前でもいいかもしれない、これならランや酒屋の主人が生き残る。ただ4人の命を助けられる時期と言ったら、俺が追放される時か賢者が生きている時か。


 ……その前に、ティナに会いたい。


 そう願った瞬間、空間が少しずつ歪められていった。真っ暗な空間に大量のヒビが発生する。ヒビの隙間からは風と火の粉が舞い込んでくるが、ここはどこなんだ。ヒビは広がっていき、周りの景色が見えるようになったが、森が広がっているくらいで特に変わった物は見えない。


 ただ空気が悪い、遠くからはパチパチと火の焼ける音が聞こえる。空を見上げてみると、そこには紫色の体をした巨大な人間が浮いていた。木で見えにくいが、間違いない。これは……魔王だ。俺はティナに会いたい一心で、魔王の存在する過去に来てしまったようだ。


 早速森の中に入ろうとするも、そこからタイガとホークとシータとジュリーとユーゴが出てくるのが見えた。俺は思わず声をかけそうになったが、彼らには俺が見えていないのか素通り。多分彼らがここにいるということは、俺は魔王の中に閉じ込められている時だろう。


 もしかしたら過去に干渉できていないのかもしれない……と不安になったが、足は動く。だから前とは違うのだろう。森の中に入るとアイとウィドウとジャラが話し合っていた。何か作戦を話し合っているんだろう、声をかけようともしたが俺が視界に入っているはずなのに彼らは無視。


 意味が分からず隅の方で話し終わるのを待っていると、突然声をかけられた。


「マイトさん、何でここに」


 声をかけてきたのはアイとウィドウ。2人は俺の体に近づき、本当に実在しているのかどうか確かめるようにペタペタと触ってきた。彼らからすれば、俺は今魔王の中に閉じ込められているか死んだと思っているのだろう。


 と、ここであることを思い出した。

 俺が魔王の体に閉じ込められている間、アイとウィドウだけが俺に会っていたとか言っていたな。もしかして……偽物の俺だと思っていたが、本当は過去に遡った俺だったんだな。


 彼らはそれを覚えていたとなると、これは本当に過去に干渉できている。ただ、ジャラやノーマッドのメンバーには干渉できなかった。2人にもさっきまでは無視されていた。しかし今はできているから良いだろう。


 確か彼らは俺から"瞬間移動の呪文"を教わったとか言っていたな。もちろん当時の俺は魔王に閉じ込められていたし、上級の呪文なんか1つも知らない。


「瞬間移動の呪文、マーキュリだ。これでティナを安全な場所に連れて行ってほしい」とだけ告げて、俺はティナのいる方へ向かった。彼女は川の近くで服を洗っていた、話しかけるチャンスは今しかないだろう。


「ティナ」


 そう声をかけた瞬間、俺は時空の彼方に飛ばされそうになっていた。彼女は振り向いてこっちに駆け寄ってきたものの、体が白く光り出している俺を見て「何があったの?」と声をかけることしかできない。虹色の光も混じり、俺の意識は遠くに飛ばされそうだったが必死の思いで彼女を抱きしめ、感謝の言葉を告げた。


「今まで一緒に居てくれてありがとう」


 彼女はにこやかに笑っていた。返事を聞く時間もなく、俺の意識と体は時空の彼方に飛ばされてしまったが、彼女のその笑顔と声を聞くことができた。それだけでもう満足だが、俺の使命は変わらない。今からは魔王によって失われた命を救っていこう。


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 また真っ暗な空間に飛ばされた俺だったが、別の時間へ移動するのは容易にできた。心から「この時間に戻りたい」と願うだけ。さっきはティナに会いたい一心で、彼女の生きている時間に戻った。


 次にすべきことは、賢者を助けることだろう。彼ら2人を助けて魔王を討伐すれば、力の石が分けられることもなければ2人も助かる。それに結界と化して亡くなったティナの両親も助けられれば、ティナの祖父である村長の命も間接的に助けられる。


 脳内にいる4人も納得している。特にサタナにとっては祖父が失われることは避けたいだろうし、5人にとっても力の石が分けられることは避けたい。とにかく二大賢者が助かれば、全てが元の生活に戻るだろうから。


「クロースとアキラが殺される前に戻りたい」


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