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第85話 お前の生命もここまで

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「ようやく2人きりになれたな、マイト・ラスター。お前が力の石と時の石を持っていようとも無意味だ、絶対的な支配者として管理してやろう」


 奴はニヤリと笑みを浮かべ、石を返すよう手招きをしていた。仲間は絶対に助けに来れないような位置に、俺は自ら来てしまった。地割れに巻き込まれるのはモンスターだけ、タイガやガルたちには巻き込まれてほしくない……と俺は、自ら遠い地で作戦を決行した。


 結果はというと、このザマだ。


 全てが魔王に見透かされていた気がする、魔王の手の平の上でずっと転がされていたような気もする。魔王をあと少しで討伐できそうとなっていた時も、魔王が石を回収するためにあえて弱ったフリをしていた。今だってそうだ、俺を遠い地に誘き出して2人きりにさせた。


 まぁ、来たのは俺だけだ。

 ここでは思う存分、暴れることができる。


 左腕に刺さった槍を激痛と共に抜き取り、左手に巨大なハンマー、右手に巨大な赤黒い槍を持ちそのまま魔王の方に向かって走っていった。奴は特に呪文で攻撃を繰り出すようなことはせず、棒立ちのまま。


 これもまた何かの演技じゃないか……と思った時にはもう遅かった。振り下ろしたはずのハンマーが、何故か奴の体に当たる前に消滅したのだ。続けて槍で貫こうとするも、奴の体に触れた瞬間に灰となって消えていった。


「私に触れようとしても無駄だ、全て灰と化す」


 奴は何も無い空間から新たに武器を作り出した。それはさっきも持っていた赤黒く鋭い槍、それを何十本も一気に生成した。そうして奴はそれらを持たずに空中に放り投げた後……呪文で俺を狙うよう槍に命令していた。


「全ての槍よ、マイト・ラスターの心臓を狙え」


 奴はわざわざ声に出してくれたから分かりやすかった。とはいえ、空中に放り投げられた何十本もの槍は全て俺のことを狙ってくるのだ。俺は全速力でその場から駆け出した。後ろを振り向いてはいけない、少しでも隙を見せれば俺は槍に刺される。


「逃げるな」


 奴が何を言おうとも槍は真っ直ぐ、一直線に飛んでくる。だから一種の攻略法を見つけることができた。それは「槍は真っ直ぐにしか進まない」ということ。曲がりながら走れば、真っ直ぐにしか進まない槍は途中でぶつかり合い、両方とも地面に落ちていく。


 とは言っても奴は次々に槍を生成していくから、どんなに避けて地面に刺さったり衝突したりしたとしてもまた新たな槍が飛んでくる。背負ってある盾を取り出したが、槍は鋭く盾などいとも簡単に貫通する。それで左腕に槍の先端が刺さってしまった。


 必死に走りながらも槍を抜いて、次の策を考えようとしたが……遅かった。


 別の槍が俺の左足に刺さったのだ。その槍は俺の足を貫通し地面に刺さったため、左足から槍を抜こうにも抜けずにモタモタしていると、後ろから何十本もの槍が俺に向かって飛んできた。


 もちろん避けることなんて出来なかった。何十本もの槍によって、俺は串刺しにされたのだ。足に刺さっている槍のせいでバランスを崩して倒れる。そこに何十本もの槍が降ってくる。左腕、右腕、腰、股関節。地面にうつ伏せになったまま、全ての関節が動かせなくなった。


 手元に転がって落ちた剣を拾おうにも、別の槍によって手までもが地面に固定される。苦痛以外の何物でもない、少しでも動こうとすれば新たな槍が飛んできて体の部位を刺していくんだから。


 反撃しようとしなくとも、地面にガッチリと固定するために別の槍が飛んでくる。人間だから痛みだってある、ずっと苦痛だ。逃げたくても逃げられない、痛みだけがずっとずっと体に染み込んでくる。


「お前に全ての石が集まるのを待っていた。更に石の力を覚醒させるのも待っていた」


 魔王が何を言っているのかも聞こえなくなってきた。理由は簡単、首にも槍が刺されたから。神経を切られたような痛み、それなのに死ねない。力の石の効力だろうか、こんなに槍が刺さっているのに頭は冴えている。血は大量に溢れ出ているのに、死ぬ気配だけは一切ない。


「ソルラマ、魂を奪い取る呪文だ」


 奴がそう唱えると、俺の体から虹色に光る魂が離れていく。うつ伏せになっているのに魂がゆっくりと抜かれる場面は見えている、それは俺の意識が魂と共にあるからだ。虹色に光る球体と共に俺は天に召されていく。ただ、天ではなく実際には魔王に吸収されていった。


 魂を抜かれた俺の体は少しずつ縮んでいくのが見えた。力の石の効力を失ったんだ、だから巨大化することなく普通の人間の死体となった。それを俺は上から見ている、魔王に回収される魂として。


「全てこの日のためだった。お前の生命もここまでだ。石は回収させてもらう」


 奴の言葉と共に、俺はまた暗闇に閉じ込められてしまった。ここは魔王の体の中だろう、分かっている……俺は魔王に魂を取られたんだ。死んではいないが外に出る術もなく、今までの疲れからか眠ってしまった。


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 時の石と力の石を手に入れた魔王は、両手を広げて石の効力を試し出す。


 見上げれば地球の大きさを超えて巨大化した魔王が、地面には雲を突き抜けるくらいに巨大化した魔王がいる。上にいる魔王は動けないからか、その下にいる魔王の方が石の力を試し始めている。


「力が手に入った」


 魔王はそう呟くと、指を鳴らすのと同時に大量の赤い雷をそこら中に落とした。轟音と共に、モンスターに立ち向かう人間たちの近くに大量の雷が降り注ぐのだ。避けることができた者もいるが、避けれずに雷を直に受けてしまった者や、雷を受けて動けなくなってしまった者の方が多い。


「他の力も使えるな」


 そう言って、魔王は拳を上に掲げた。たったそれだけで、天からは大量のモンスターが召喚される。赤い翼を持ち炎を吐くドラゴン、細くうねる体を持つバジリスク、爬虫類のような見た目をしていて鋭い爪を持っているリザード。


 他にも、空を舞いながら大量の爆発物を投げ込む"ランタン"や、八本の足を持ち自由自在に操ることのできる"オクトパス"、電気の力を操る"エレクト"といった、地球には存在するが深海に暮らすなどとして人間と触れ合ってこなかったモンスターまでもが召喚されていった。


 召喚されたランタンは大量の爆発物を手に持ち、魔王に歯向かう人間らに向かってそれらを投げ込んだ。雷の攻撃を受けてもなお生き残っていた者たちは、爆発に巻き込まれて次々と消滅していく。


 それでも生き残っていた者たちには、エレクトの電気ショックにより次々と倒れていく。ポリスタットと言われ国内では3番目に栄えていた都市が、モンスターによって荒らされていくのだ。極めつけに、オクトパスの攻撃によって建物が次々に崩壊してゆく。


 デリーシャやノーマッド以外にも、生き残った者たちは少なからず存在する。彼らはポリスタットやツェッペリンを拠点にしつつ、魔王の召喚するモンスターを討伐してきた。大体はシティストに向かっていくため、ここに来るのはせいぜいゴブリンくらい。


 そこに見たこともないようなモンスターが大量に襲いかかってくるのである。ゴブリンですら討伐するのに一苦労な彼らにとって、もはや新種など討伐できる相手ではなかった。彼らは最後まで市民を守ろうと奮闘したが、残念ながら倒壊した建物の瓦礫に押し潰されて死んでいった。


「ご苦労さま、後はシティストに残る奴らのみ。石は全て手に入れた、後は時間の問題だ」


 全ての力を手に入れた魔王は、高らかに笑い出した。もう為す術など……ない。


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