第84話 仲間は助けに来ない
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フィンの思いついた「無限巨人化作戦」とは何だろうか。名前からは一切想像もできないような不思議な名前をしている。巨人化……巨人になれということか。
「マイトが巨人の腕を掲げた時、巨人になった。それを繰り返していくんだ。ただそれだけ」
確かにさっき巨人を討伐した時、巨人にも何か特殊な効果があるんじゃないかと考えて巨人の腕を切り、それを空に掲げた。すると何故か俺の体と持っている武器が巨大化。それで周りにいるモンスターを楽々と蹴散らせるようになったのだが。
それを繰り返す……というのは。
まさか、やってもいいが危険が伴いそうだ。まぁ、行動にはもちろん移す。フィンによると「ゴブリンの棍棒やスケルトンの骨は、それぞれハンマーや槍に変化した。それも巨大化したということは、モンスターの効果に上乗せすることが可能」らしい。
つまりは……実際にやってみよう。
まずは近くに巨人がいないかどうか探したが見当たらなかったため、シータの力を借りてサタナの魂を近くにいたソールとは別のドラゴンに移し、巨人の体を借りた。巨人の腕を切り取り、それを空に掲げるだけで俺の体は巨大になっていく。
もちろん、持っている武器、ハンマーや槍も共に巨大化していく。ここまではさっきもやったが、ここからが肝心。俺は巨大な体のまま走り出す。下にいるタイガやホークといった人間を踏み潰さないように慎重に。
それで俺はとある物を探しに行く。
それは……巨人だ。今は巨人と同じくらいの大きさ。そこからフィンの言う「無限巨人化作戦」を実行するには、何体もの巨人が必要だ。俺の作戦には魔王に関する何らかの物が必要だが、それらを手に入れるためにはどちらにせよフィンの作戦を行う必要がある。
まぁ、自ら探しに行かなくとも待っていれば巨人はやってくる。魔王が口から召喚したものだろう……それも数匹の赤いドラゴンを連れて。空を舞うドラゴンの討伐はソールとサタナに任せておいて、俺はこっちに向かって走ってくる巨人の相手をしよう。
生殖器も持たなければ髪も生えていないような、性別も何もかもが判別し辛い形をしている巨人は俺に向かって走ってくる。目に見えるだけでも10体はいるな、でもそれでいい。今は多ければ多い程いい。早速1番近づいてきた巨人の心臓めがけて、持っている巨大な槍で頭を貫く。
そこで討伐した巨人の腕をもぎ取り、それを空に掲げる。すると……俺の体は更に大きくなった。フィンの予想通り、効果は上乗せされる。巨人の効果が既に付与されていたとしても、巨人の腕を掲げれば新たな効果が更に付与されるのだ。持っている武器も同じく巨大化していた。
だから別の巨人からすれば、自分より2倍程度大きい人間が目の前に立っているのである。いつも見上げていたはずの巨人に見上げられる、二度と経験できないことだろう、特に経験したいとは思わないが。
人間たちの集まっている所から遠ざかりつつも、周りに群がる巨人達の腕をもぎ取っては空に掲げ、もぎ取っては空に掲げるという行為を繰り返していった。ブチッ……と生々しい肉の千切れる音をよそに、俺はどんどんどんどん大きくなっていく。
今の大きさ……恐らく、俺が過去から戻ってきた時にハロス城で暴れていた魔王、それと同じくらいの大きさだろう。周りは更地になっていて比べる物が今は存在しないが、手を伸ばせば雲に届くくらいになってしまった。
当たり前だが、今の自分の力が恐ろしい。
恐れていた魔王と同じくらいの大きさになっているのだから。でもこれは魔王を討伐するためだ、ここまで大きくなったんだから必ずやり遂げよう。今間違いを犯してしまえば、全てが無に帰す。絶対に討伐して、全てを終わらしてやる。
それはそうと、もうそろそろ空気が薄れてくる高さになるはずだ。早めに終わらせないと、俺が呼吸困難で死んでしまう。魔王は酸素が無くても生きていけそうだがな。俺は一応は人間だから。
で、片方の手に持っている巨大化したハンマーで地面を叩くと地割れが発生する。ゴオオ……という轟音と共に地面が割れていくのだ。タイガたちがその地割れに巻き込まれることはない、彼らからは物理的に距離を置いたから。地割れに巻き込まれるのは、周りにいるモンスターだけ。
次々に巻き込まれていくモンスターの中から巨人だけを取り出し、そいつの体ごと持ち上げて空に掲げると更に巨大になることができる。両手で巨人をすくうようにして何十体の巨人を同時に持ち上げると、何十倍にも大きくなる。
これが石の力か、本当に何でもできるな。
ここからは俺の作戦に移る。右手に持っている巨大な槍で奴の眼球目掛けて思いっきり投げるだけ。投げ槍の要領だし、走っても疲れないから助走はいくら付けてもいい。自分の身長は既に雲のある高さを超えているから、ぶっちゃけどうにでもなる。
ただ魔王の血か肉片さえ手に入れば、それでいい。後は実行するのみ。
俺は助走を付け、槍を持ったまま走り出した。体が大きくなった分ノロマに見えるかもしれないが、魔王は微動だにしないため外すことはない。あんなに的が大きいんだし。だが届かない可能性はある、そうした時は更に体を大きくするくらいしか他に方法は見当たらない。
「いける」
そう言って俺は槍を投げた。槍は放物線を描いて、魔王の眼球目掛けて飛んでいく。そもそも奴は動いていないし、俺の投げた槍も魔王に刺さりそうだった。だから投げた瞬間に確信し、そう声に出してしまったのだが----
----結果は甘くなかった。
槍は届かなかったんじゃない。届いたが、俺と同じくらいの大きさをしている魔王に槍を止められたのだ。見上げれば魔王の体は確かに存在する、でも目の前にも魔王の体が存在する。
今更別個体なんているのか……なんて思ったがそれも違う。ハロス城で暴れていた魔王と同じ見た目をしている、俺の目の前にいる奴は動かない上にいる奴と同じ個体。
ただ何らかの方法で肉体を分裂させ、魔王は自由に動けるような体を持ったんだ。これはとんでもない事態だ、動けない的だと思っていた魔王が急に動き出すのだから。
目の前で槍を持っている魔王は、その白くて鋭い槍を赤黒い全く別の槍に変化させていく。呪文を使ったのか、それにしてもこの赤い槍はどこかで見たことがある。確か……過去に教会でサタナの魂を奪うために彼女を殺した時に魔王が使っていた槍だ。
となると……まずい。
奴は何も言わずにその赤黒い槍を俺に返してきた。それもただ普通に返すんじゃない、俺と同じように投げて返してきたのだ。
放物線を描いて、槍は俺の左腕に突き刺さる。避けようとしたのに避けられなかった。足がすくんでいたんじゃない、ただ奴の投げる速さが段違いだっただけ。まるで今までの俺たちの抗いを「無意味」と捉えさせるような、そんな返し方。
「仲間は助けに来ない。お前が遠い地を選んだからな」
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