第83話 デリーシャ、完全復活
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確かに魔王の言う通り、時の石も力の石も両方とも俺に集結している。だから俺さえ倒せば、地球を守ってきた2つの石は行き場を無くして消滅するかもしれない。それで魔王が絶対的な支配者となることも可能になる。
なら俺は絶対に死なない存在になるぞ。こんな奴に負けてたまるか、奴が絶対的な支配者となるなら俺は絶対的な不死身となる。
奴には仲間がいないが、俺には沢山いる。今だって、奴の呪文によって何度も何度も吹き飛ばされているが、それでも俺に絡む樹木を切ろうとして立ち向かってきている。お前の手下にそんなことを、自分の意思で出来る奴は何体いるのか。
と、ちょうどいいタイミングで、上の方から声がした。
「マイト、タイガ、待たせたな」
この声は……シータの声だ。力持ちで性格の明るい彼、もう声だけでその明るさが伝わってくる。首に絡む樹木のせいで見えにくいが、彼は俺の剣を手にしている。遠くの彼方まで吹き飛ばされたと思っていたが、彼が手に入れていたとは。
シータは呪文を食らいつつも俺の元に駆け寄ったと思いきや、何故か剣を渡さずにさっき討伐したムスルの死体の前に移動した。何をする気なんだ……と見ていると、彼は倒れているムスルの首元にその剣を突き刺した。
一瞬、何がしたいのか分からなかったが、彼が剣をムスルの首元に突き刺したのと同時に、ムスルの今までの視点が記憶の中に入ってきた。スケルトンの腕から作った巨大な白い槍に貫かれる様子が鮮明に、自分の記憶の中に存在するような感触。どう説明したらいいか分からないが。
死んだはずのムスルは突如起き上がり、首に刺さっている剣を抜いてその場にそっと置いた後、俺の首を絞めている樹木を巨大な手で破り始めた。ムスルは何で俺のことを助け始めているんだろうか、というか奴に触られても熱くない。
「あくまでジャラさんの考えだけど、俺がハロークとの戦いのことを話したのさ。そうしたら『剣を刺したからハロークは味方になった』とか言い出して。とりあえず試した」と、シータは余裕そうにジャラの真似を含みつつ話をしてくれた。
俺の体に絡んでいた黒い樹木は再生もせず、ムスルの熱い体に触れてしまって溶けていった。これで俺は元通り、俺を縛る物はもう何もない。それと同時に、ガルの声が脳内からではなく上から聞こえるようになった。
遂に彼も体を取り戻したのか……と思っていたが、実際は違った。横にいる巨大なムスルが、何故かガルと同じ声で喋っているのだ。さっきの剣を刺して仲間に無理やりした代償なのか、それとも……分からないけど。
「不思議な感触だ、久々に外に出たと思えばムスルの中だなんて」
ガルはムスルの体内に囚われてしまったのか、いや違うな。彼は自らの意思で外に出て、自らの意思でムスルの体に入った様子。その証拠に、シータが近くにあった巨人の死体に剣を刺したところ、巨人は起き上がりサタナと同じ声で喋るようになった。
「……いい気分ではないけど」とサタナは嫌がっている様子だが、剣で刺した相手には乗り移れるようになったのか。それならどんどんやっていこう、そうしてフィンとソールにも体を与えよう。
近くにいたスケルトンをハンマーで一発殴り討伐、そこから骨を奪って槍を作り、その槍で空中を飛んでいるドラゴンの目を刺した後すぐに心臓も貫く。その後堕ちてきた死体にシータが剣を刺すことにより、ソールもドラゴンの体を動かせるようになった。
「僕はマーナガルムで行きたい」というフィンの要望に応え、俺は近くにいた別のドラゴンの視力を槍で奪った後、翼をへし折って飛行能力を手に入れる。翼を駆使してマーナガルムを探し出し、噛まれないように背後から長く鋭い槍で心臓をグサリと刺す。これでフィンもマーナガルムの体に入ることができた。
こうやって見ると、異質なパーティーだ。
デリーシャは巷で最も有名なパーティーとして、よくシティストの新聞に載っていた。「次はどのモンスターを討伐してくれるのか」と期待してくれていた。
それが今では……人間、マーナガルム、巨人、ムスル、ドラゴンの集まりになってしまった。前代未聞だろ、モンスターを討伐するパーティーのメンバーの大半がモンスターだなんて。実際はモンスターの体に彼らの魂を植え付けただけだが。これを発見したシータとジャラにも感謝しなきゃな。
さぁ、絶対的な支配者と自称する魔王を討伐しに行こう、デリーシャの5人で。
翼を持ったドラゴンもといソールは、暗い空を舞いながらも他のドラゴンや巨人といった巨大なモンスターを倒していっている。
巨人に対してはその鋭い牙で首や背中に噛み付き、倒せなかった分はムスルとなったガルが代わりにスケルトンの槍を使って討伐する。
空を飛んでいるドラゴンに対しては、ソールが囮となって攻撃を受けている間に、またしてもスケルトンの槍を持ったガルがドラゴンに向かって投げる。当たらなくとも、巨人となったサタナが見事な跳躍で槍を直接ドラゴンに刺してくれる。
周りにいる小さいモンスター、ゴブリンやスケルトンやオークやスライムといったモンスターに対しては、マーナガルムとなったフィンがその鋭い爪と牙で次々に蹴散らしていく。四足歩行で扱いずらいかもしれないが、彼は暴れ回りつつも配慮しているのか人間に危害は加えていない。
残った俺は、モンスターの素材を使って新たな武器を作るのに専念した。魔王は今、体が大き過ぎて地球に収まりきっていない。だから見上げれば絶対に目に入る奴の眼球は、地球の外にあるということ。そのため、雷を落とすことはできない。
ハンマーや槍がどこまで届くか分からないが、魔王に傷一つでも与えさえすれば……作戦通りに行けば魔王を討伐することが出来る。まずは魔王に直接攻撃をしなければ、といっても地球の外にいる魔王にどうやって攻撃する?
……ちょうどあるじゃないか。
何よりも巨大な槍とハンマーが、ちょうどここにあるじゃないか。何なら巨人やムスルの中に入っているサタナとガルがそれらを持っている。それらを投げて、地球の外にいる魔王に届けさえすればいいんだが、そう簡単にいけるか?
測ったことは無いが、とてつもなく距離が離れていることには間違いないはず。巨人やムスルとなった彼らがハンマーや槍を投げたところで、魔王に届くかどうかは……正直分からない。
と、フィンの声がマーナガルムの方から聞こえた。そう、マーナガルムからフィンの声が聞こえてくるんだ、これほど恐ろしく不気味なことは無い。サタナの声も巨人の見た目から聞こえてくるんだ、これも怖い。
「僕に作戦がある。名付けて……"無限巨人化作戦"だ」
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