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第82話 絶対的な支配者

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「マイト、前からムスルが来るぞ。絶対に触れるなよ、火傷するから」


 ムスルというのはハロークやシーハロークと同じく巨人の一種で、炎の巨人とも呼ばれている。デリーシャと他4パーティーが派遣されたのにも関わらず、犠牲者を大量に生んだ。触った物は燃えるため、近くの建物は全て消滅。果敢に近づいた者の体は焼け、それで戦意を失う者もいた。


 そういえば俺が追放される少し前の出来事だったな、ムスルと戦ったのは。「お前はサポートに徹しすぎだ」とか「お前は活躍したか?」とかガルに責められたのはよく覚えている。


 と考えていたら、脳内のガルが申し訳なさそうに小さい声で謝ってきた。


「あの時はお前をウェール村に送ることに精一杯で、追放の理由なんて考えられなかったんだ。別に活躍なんてどうでもいいから、本当にすま……ごめん」


 まぁ、彼も俺のことを追放したくて追放した訳じゃないんだし仕方ないか。それよりも、今は目の前にいるムスルとの戦いに集中しなきゃ。今、俺はムスルと同じくらいの大きさだが、奴に触れてしまうと体が焼けてしまう。だから遠距離からの攻撃でどうにか倒さないといけない。


 そういえば、巨大化すると武器も巨大になるんだったな。これを利用すれば……倒せるぞ。


 可哀想だが、早速足元にいたスケルトンを踏み潰し、そこからスケルトンの腕の骨を手に入れる。今の俺からしたら小さな小さな骨だが、それを天に掲げると骨は一気に変化し、巨大な白い槍になった。鋭いし長い、これなら何でも貫けそう……地球よりも巨大な魔王以外なら。


 スケルトンから作った巨大な槍を手にした俺は、目の前にいるムスルの心臓めがけてそれを思いっきり投げた。槍を扱ったことは少ないが、力で何とかなる。


 結果、メリッ……と生々しい音を立てながらも槍は心臓を貫き、槍の重さに耐えられなくなったムスルはその場に倒れた。意外と才能があるのかもしれないな、力で何とかなった部分の方が大きそうだが。


 少しだけだが余裕を持って討伐できるようになった……と思ったのも束の間、謎の黒い樹木によって体をガッチリと固定されてしまった。


 腕も足も地面から生えてきた根によって。巨大化したハンマーが何とか根を破壊しようと、地面をガンガンと何度も叩くも効かず、逆に何者かの力によってただの棍棒へと変えられてしまった。


 俺の巨大化の力も失われ、またいつもの大きさへと戻っていった。樹木は俺に絡みつくように、また「絶対に逃がさないぞ」という言葉を表しているのか、手足以外にも首まで締め付けてきた。


 もちろん、これを生み出したのは魔王。遠くの方から地鳴りと共に、低い声が鳴り響いてきたのだ。


「…………勝手に進化させてくれた。礼を言おう、後は私が吸収するのみ」


 勝手に進化……何をだよ。吸収するって魂のことか、また魔王の中に戻るのは嫌なんだ。何とか抵抗しようとするも、腕は地面から生えてきた樹木によってしっかりと固定されている上、今度は首も締め付けられているために、少しずつ思考する能力が奪われてきている。


 今は完全に俺を殺す気で来ている。さっきまで俺が力を存分に使って魔王の手下であるモンスターを倒してきたから、魔王は腹を立てているんだろう。何かを発そうにも、首を締め付けられていて何も声が出せない。次第に呼吸も苦しくなってくる。


「…………魂は奪わない。私は全ての宇宙を見た、こんなちっぽけな世界よりも支配すべき世界がある」


 全ての宇宙って何なんだよ、他に世界なんて存在するのかよ。魔王を毛嫌いする世界とかに早く行ってほしいものだ、それか魔王というだけで殺される世界……俺は何を言っているんだ。それじゃただの差別じゃないか、とにかく魔王はとっとと倒れてほしいし、まずこの樹木を消してほしい。


「…………他の世界を見れば分かる。こんなちっぽけな世界など消えた方が良いとな。死んだとしても、いつかは別の世界に転生できるのだ、だから抵抗など諦めろ」


 ……転生か、面白そうだ。他の世界の住人になれるかも、ということか。楽しそうだが、どちらにせよ魔王が支配している世界なら楽しくなさそうだ。とにかく魔王が消えてくれれば、というよりかは無茶な支配をしたがる生物が消えればそれでいいが。


「…………ならば人間が消えろ。我々生物を勝手にモンスターと呼称して、勝手に殺してきたのは誰だ?」


 ……人間だ。間違いなく人間がモンスターを殺した。それは間違っていない、魔王の言う通りだ。モンスターと故障し始めたのも、勝手に殺し始めたのも人間が最初だろう。流石に生まれていないから知らないが。


「…………なら、モンスターと呼ばれる我々が、人間を殺しても文句は無いだろう。お互い様だ」


 急に何も言い返せなくなってきた。その時代を生きていないため分からないが、お互い様と言われたらお互い様なのかもしれない。流石に昔の人間も、今になってモンスターの頂点にこう言い返されることは想定していなかっただろう。


 何も言い返せず、俺の首を絞める樹木の力だけがただ強くなっていく。何も抵抗できないし、何も動かすことができない。剣もハンマーも手元に無い今、俺は何も抵抗できずに死んでいくのか。


 と思っていたが、俺は魔王と違って"あるもの"を持っている。


「待てよ」


 遠くから"仲間たち"が駆け寄ってきた。彼らは俺の首に巻き付いている樹木を次々と切っていった。が、魔王が召喚した樹木だからなのかそれらは次々に再生されていく。切っても切っても、復活する。


 ところで魔王が持っていないのは……仲間だ。手下は沢山いるだろう。近くにいる大量のモンスターも、バベル城を襲ったバジリスクも。しかし仲間はいないし、手下のことを信用していない。


 バジリスク達は「何も知らされていない」と言っていた、つまり魔王はバジリスクに何も教えていなかったんだろう。自分達の仕えていた魔王は封印されるわ、自分達の封印はパワー・コンテストの主催者によって勝手に解かされるわ、で奴らも大変だったんだろうな、同情はしないが。


 最高の仲間を持ったものだ、魔王と違ってな。


 魔王は俺のことを助けてくれる仲間を見て気に触ったのか、俺の周りにある物質を謎の呪文によって全て吹き飛ばした。近くで樹木を切っていたタイガたちはもちろんのこと、何も関係のないゴブリンやスケルトンまでもが呪文に巻き込まれた。


 特にゴブリンの持っていた棍棒や、俺の使い慣れている剣などは……残念ながらより遠くに飛ばされた。手元に戻ってくるようにも指示できない、このまま何も抵抗できないまま俺は死ぬのか。


「…………石を持つ存在を消せば、私が最強の存在となる。私が絶対的な支配者となる」


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