第76話 絶対に許さない
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俺はシータやユーゴといった生き残った者を探し回りつつ、周りにいるモンスターを蹴散らしていった。脳内にいるフィンやガルが正確に敵の位置を教えてくれるから、こっちも対処がしやすい。
それに右手には力の石の付いた剣がある。これは投げると自動で手に戻ってくるし、その上モンスターの弱点を理解しているのか自動で弱点を切ってくれる。手に戻る時も刃がこちらを向かないようにしてくれるから、扱いやすい。
「6時の方向にゴブリンが10体。9時の方向にはスケルトンが8体と巨人が2体。巨人の弱点は背中だ、ゴブリンを討伐するには棍棒でいい」
脳内にいるガルの指示の元、俺は動く。まずは左にいる巨人2体に向かって突進する。10mくらいはあるだろう、それくらい大きい。そいつに向かって盾を構えつつ突進する。もちろん簡単には討伐できないし、周りには邪魔なスケルトンがいる。
でも、今の俺ならやれる気がする。
まずは盾で巨人の拳を受け止めつつ、その場で高く飛び跳ねる。10mくらい飛んで巨人の肩に着地した後、そのまま重力に逆らわず背中を切っていく。簡単な作業だ、手は疲れるが。
続いて向かってきた巨人の足に傷をつけ、バランスを崩させる。倒れた巨人に何体かのスケルトンが巻き込まれたのを確認して、巨人の背中を切りつける。それと同時に押し潰されて動けなくなっているスケルトンにも一発お見舞いする。
そうして近くにいるゴブリン10体に対して剣を投げつける。すると剣は勝手にゴブリンの頭を貫くように動き始め、光の速さで次々とゴブリンを倒していく。そして最後はキチンと手元に戻ってくるし、ゴブリン達も全て倒れている。
ここで一旦盾を背中にしまい、ゴブリンの持っていた硬い棍棒を左手に取った。充分な鈍器、これならゴブリンとかスケルトンくらいなら何体でも倒せる。
巨人やマーナガルムといった上級モンスターの攻撃は厄介だが、普通のモンスターくらいなら腕で受けても大丈夫。囲まれると九死に一生を得ることになるが。
「上空にドラゴンが3匹……悪いが弱点は知らない。というか実在していたんだな」
脳内にいるガルですら分からないモンスターが、今目の前にいる。ドラゴンと呼ばれるモンスターは赤い翼を生やし、鋭い爪と鋭い牙を持っている。空を飛んで視界を遮ってくるのは厄介だな。
と、ドラゴンと呼ばれるモンスターは急に、口から炎を吐き出した。火球は地面に到達した瞬間、一気に炎を拡散する。ただてさえ煙が舞っていて見えずらいのに、そこに更に煙や炎を追加していく。
地面にいるゴブリンといったモンスターも例外ではなく巻き込まれていく。炎に巻かれたゴブリンは黒焦げになり、その場でどんどん倒れている。俺はフィンのお陰で何とか避けることができたが、これでは行動できる範囲も限られてしまう。
「……ドラゴンの倒し方は分からない。とりあえず翼を折ってみよう」
脳内にいるフィンの考え通りに、俺は助走をつけて高く飛び、飛んでいるドラゴンの背中に乗った。奴は俺をどうにか落とそうと回っているが、剣を背中に刺してしがみついているため振り落とせはしない。
赤い背中から赤い血が噴出しているが痛くないんだろうか。俺が乗っているドラゴンとは別のドラゴンが、俺ごと殺したいのか火の玉を吐こうとしている。今吐いてもいいが、俺の下にいるドラゴンも犠牲になるぞ。しかし周りにいる2匹のドラゴンはお構い無しに火球を吐いてくる。
下のドラゴンに当たってしまえば俺も巻き込まれて死ぬ。それに下の奴も生きたいのか、必死に火球から逃げている。この隙にまず火球を飛ばしてくるドラゴンの口めがけて左手に持っている棍棒を投げつける。すると見事に命中し、棍棒は奴の口の中に入っていった。
異物が入ったため吐き出そうとするドラゴンだが、同時に炎も吐いてしまったのか口からはオレンジ色の煙が漏れている。おそらくだが、棍棒は奴の喉の中に入ったんだろう、作戦通りだ。
奴は異物を吐こうとするが喉でせき止められている。諦めて炎を出そうとするも、喉でせき止められているため炎の行き場が無くなり……ドカンと大爆発を起こす。その爆発に巻き込まれて後ろに着いていた別のドラゴンも堕ちていく。
俺の下にいるドラゴンは生かしてあげたいが、魔王に操られていることに変わりはないため、そっと剣で翼を切り頭を軽く貫いた後墜落させた。
と、ちょうどドラゴンの爆発を見たのか……遠くから男の声がした。この声、聞き覚えがある。何を言っているのかは遠いのと、空気の焼ける音で聞き取れなかったが明らかに聞いたことのある声。
「……生きていたか」
この声と共に、向こうから大剣を持った男が走ってきた。大剣を手にした男は1人しか知らない、そう……ユーゴだ。魔王によって作り出された偽物のガルとソールをその大剣で撥ねたくらいの実力者だ。
彼はその大剣で周りに群がるゴブリンの首を撥ねつつ、俺の方に向かってきた。よかった、まだ生きていたのか。彼はノーマッドのリーダーとして皆を引っ張り続けてきた。実際はタイガが仕切っていたが。とにかく……とても頼りになるし、今も周りのスケルトンの首を切っている。
本当によかった、そう安堵している時に……脅威は見えない所からいきなりやってくる。
地面が突然割れ、下から巨大なモンスターが顔を出す。鋭い牙を持っている四足歩行のモンスターで……と確認しているうちに、自分の立っていたはずの地面もユーゴの下にあったはずの地面も、両方とも巻き込まれて割れていった。
足場を失った俺たちは何かに掴もうとするも、木も建物も掴める物は全部焼かれたため、割れた地面の奥底に落ちそうになった。俺は何とか剣を地面に刺すことで耐えたが、ユーゴは大剣を持ってして立て直そうとするも……ダメだった。
彼は落ちる前に、その巨大な四足歩行のモンスターに食べられてしまった。
下からガブリと、下半身は丸ごといかれてしまったようにも見える。彼の上半身はペッと吐き出されたが、もう死んでいるだろう。亡骸は近くにいたゴブリンやスケルトンによってグチャグチャに掻き回されていった。
俺は何とか剣を使って這い上がったが……これは止められなかった。脳内にいるソールもサタナも、残酷な状況を目の前にして皆唖然としている。いつもならフィンとかガルが教えてくれるのに、今回はできなかった。地面の下から現れたのだ、対処できるはずがない。
……地面が割れてしまったせいで、俺は向こう側に行くことができなくなってしまった。向こうにはユーゴのことを噛み殺した四足歩行のモンスター、マーナガルムがいる。
ああ、憎い。何でこんな目に遭わなきゃいけないんだ。バジリスクのせいでジェスを亡くして、マーナガルムのせいでユーゴを亡くす。それにマーナガルムなんて、彼らの前で1回倒したことがあるだろ。今の、もう少し彼との距離が近ければ俺なら助けられた。
どこからいけなかったんだよ。
ユーゴの亡骸はもう失くなっていた。近くにいるゴブリンとスケルトンに掻き回され蹴飛ばされ、まるで玩具みたいに扱われていたから。こんな残酷な死があっていいのか、こんな最期があっていいのかよ。
魔王を許さない、前以上に……絶対に許さない。
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