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第75話 まさに、地獄

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 目の前に広がっていたのは、まさに地獄。

 それ以外に表現することはできない。


 奴の巨大な眼球の真下には、奴によって召喚された大量のモンスターが残った彼らを襲っている。ゴブリンやスケルトンといった普通のモンスターから、巨人やマーナガルム、バジリスクといった上級モンスターまでもが限りなくこの場に存在する。


 数人の治安兵士メンバーはもう既に息絶えていた。1人はゴブリンの持つ棍棒によってボコボコに殴られて息を引き取り、また別の1人はバジリスクの持つ鋭くしなやかな腕によって胸を貫かれていた。他の人もまとめて首を撥ねられて亡くなっていた。


 目の前で人間の死体が転がっている。こんな悲惨な状況、もちろん出くわしたことなんてない。思わず吐き出しそうになったが、胃には何も入っておらず吐き出せる物がない。ただ呼吸が苦しくなるばかりで、胸を押えても目の前の光景が目に無理やり入ってくる。


 手は震えているが、力の石の付いた剣を持つと落ち着く。これも力の石に秘められた力なのか。


 とにかく周りには大量のモンスターがいて身動きが取れない。それにシータやユーゴの姿も見えない。ジャラもアイの姿もだ。まだ生きているといいが……いや、そんなことを考えている暇は無い。


 今は目の前にいる大量のモンスターをどう討伐するか。それだけでいい。


 と、まず俺に立ち向かってきたのは5体ほどのゴブリン。手には血の付着した棍棒を持っていて、奴らも返り血に染まっている。コイツらが、治安兵士の彼を殺したのか……と思うと涙が止まらない。


 剣を右手に、盾を左手に持ち戦闘の態勢に。5体のうち1番最初に動いた奴、真ん中の奴目掛けて剣を頭に突き刺す。ゴブリンの体は柔らかいから、簡単に貫通する。ブシャッ……という生々しい音は鳴るが。


 立ち向かってきた別のゴブリンに対しては、盾で地面に押さえつけてから剣を心臓に刺す。その後背中を殴ろうとしてきたゴブリンに対しては、回し蹴りをして動けないようにしてからお腹に刺す。


 この場から逃げようとした2体のゴブリンには、別のゴブリンが持っていた棍棒を思いっきり投げつけた。当然、棍棒は鈍器だ。それを頭に投げ付けられた2体のゴブリンは地面にバタッと倒れた。その隙に剣を突き刺して決着をつける。


 ……さて、目に見える範囲のゴブリンは討伐し終わったが、まだまだモンスターはいる。後何百体いるのだろう、この量をたった数人で倒しきれるのか。


 考えている間にも、別の治安兵士メンバーが黒いバジリスクに襲われ、命を落としそうになっていた。俺は急いでその場に行き、バジリスクの首に向かって剣を投げつける。その間に盾で近くにいたスケルトンの首をへし折りつつ、治安兵士メンバーの彼をバジリスクから離す。


「バベル城以来、私はずっと待っていた」


 黒いバジリスクは首に剣が刺さっているままなのに話を始めた。バベル城を知っているということは……バベル城を襲っていたバジリスクと同じ個体なのか? いや、そこにいた奴は完全に討伐したはず。


「私たちは記憶を共有している、以前は暴走したが今なら全てを破壊することができる」


 記憶を共有している、か。面倒くさそうな話だ、前は白いバジリスクと融合したかと思えば急に虹色に光り出して、その後ジェスを巻き込んで爆発した。ジェスは復活しないのに、お前は復活するのかよ。


 そう少しだけ過去のことを思い出しつつも、目の前にいるバジリスクに対して怒りがふつふつと湧き上がってきた、その時だった。


 突然、奴の首が赤く光り出した。また前みたいに爆発するのか……と身構えていたが何も起こらない。それどころか、ヌポッと生々しい音を立てながら剣がゆっくり首から抜けていくのだ。剣は自動で俺の右手に戻っていく。普通じゃ有り得ない現象だ、物がひとりでに元いた場所に戻ってくるなんて。


 それにバジリスクは赤い灰となって消滅していた。爆発を起こさず、何も発さずに無音で消えていったのだ。爆発するよりマシだが……これは力の石の効果なのか。それともバジリスクの本来の死に方なのか。


 よく分からないが、自動で手に戻ってきた剣の力を試してみたくなり、俺は近くにいたスケルトンの首を狙って投げてみた。すると剣は首に刺さった後自動で手に戻り、何ならスケルトンはその場に倒れていた。口からは白い液体も出ていた。これはモンスターが死んだ合図でもある。


 これも力の石に秘められた力なんだろう。そういえば緑の巨人・ハロークを討伐した時も、首に刺した剣が赤く光っていて、何故かハロークに助けられた。なんて扱いやすい、最高の武器なんだろう。


 脳内にいるガルやフィンもこの剣の効果が分からなかったのか、ずっと感心している。彼らは外に出られない分、俺視点を解析してどこに敵が何体いるのかを正確に教えてくれる。外の世界に出られなくとも、戦闘に参加してくれる。さっきは悪く言ったが……頼りになる仲間だ。


「3時の方向にゴブリン6体、9時の方向にマーナガルム1体。マーナガルムは覚醒すると厄介だから心臓に一発ぶち込め」


 脳内から状況を事細かに伝えてくれるソールの声を元に、目の前にいる敵を次々と倒していく。右にいたゴブリン6体に向かって、地面スレスレに剣を投げる。そうすると剣は勝手にゴブリンらの足を切断するように動き出し、6体分の足を切り終えると今度は頭を切るようにして戻ってくる。


 ゴブリンは剣に任せておいて、俺は左にいるマーナガルムを討伐しに行った。剣は自動で右手に戻ってくる、だからそれまでに心臓付近まで移動する必要がある。煙のせいで周りがよく見えないが、その分的は巨大だ。踏み潰されなければいいのだが。


 まずはスケルトンの死体を踏み場にして高く飛び跳ね、マーナガルムの頭部に乗った後腰に差していたナイフで奴の頭部に切り傷をつける。小さなナイフだが対モンスター用に作られているため、傷は浅くとも深いダメージを負うはずだ。


 右手に剣が戻ってきたタイミングで奴から降り、前足の付け根あたりから剣を突き刺す。奴も四足歩行で前足の筋肉も発達しているから刺さりにくいが、それは剣を足で深く踏み入れることで解決する。


 ソールによると「覚醒させなければ倒せる」とのこと。俺も前に討伐した時は首を狙って覚醒させてしまった。だから心臓を貫けばいいだけの話。


「グルルッ……ウォッ……」


 奴は呻き声を上げ、そのまま倒れた。覚醒せずに、そのまま。口からは白い液体も出ている。これでマーナガルムの討伐は成功したが、周りにはまだ何百体ものモンスターがいる。


 何ならさっきより増えている気もする。煙であまり見えないが、空気の流れが変わっていることくらいには俺でも気付く。


 まずはシータとユーゴがどこにいるか。ジャラもアイも。特にアイがいたら呪文で助けを呼べる、遠くの地で立ち往生している彼らを。


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