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第69話 世界を救う呪文

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「お前の両親は立派だった。最後まで未来とお前を気にかけていた。俺は祖父失格だ、孫に話すべき事……沢山あったのになぁ……失敗だ」


 ティナの手を握りつつ、村長は語り始める。俺が過去に遡ると決まる前で、村長はずっと真実を語らなかった時。「ティナはもう子供じゃない」とか言って、真実を言うように訴えかけていた頃でもある。


 どうやら村長は昔から秘密主義だったらしい。


 それはそうと俺の横で、映し出された俺の記憶を見ているガルとソールがずっと村長に対しての文句を言っている。「追放した理由は内緒にしてほしいとは言ったが、ここまでとは言っていない」とか「孫娘に不審に思われるって相当だ」とか。


 彼が言ってくれれば助けられた物だってあるが、今更グチグチ言ったとしても、もう遅い。過去をどんなに遡っても干渉出来なかったんだ、元から助けられない物だってある……そういうことにしよう。


「ティナ、今まですまなかった。ランも俺のせいだ……過去を悔やんでも悔やんでも、残されたのは死か未来か。後悔は残されていない。後はマイト・ラスター。お前が全てだ」


 村長は杖を手放し、石を保護する結界を両手で抱え込むように触れ出した。バチバチ……といった電気の走る音が狭い地下室の中で響き渡る。


 そう、彼は結界を自らの手で破ろうとしている。杖を使わないと歩けないくらいに老いた体を酷使して。


 彼のその行為を止めようともしたが、周りは白い光に包まれていたし、何より目的がまだ分からなかった。石をどうにか取り出すのかと思っていた。彼が自分の体を犠牲にするとは思わなかったから。


 で、気づいた時には遅かった。彼の体には電流が走っており、止めようにも体に触れることすら出来なかった。力持ちであるシータやユーゴが加わったとしても。




「最後に……ツ--・ワ---。世界をす--ための呪文だ」




 ……彼は何かを言って消滅していた。ツ……ワ……? 世界を何する呪文と言ったんだ? 彼の声はどうやらガルやフィンも聞き取れたらしく、記憶を巻き戻すよう俺に伝えてきた。


 あの時は周りから電流の走る音がビリリと鳴っていたせいであまり聞き取れなかったが、今なら邪魔する音も少ない。ならば、もう一度聞いてみよう。




「----最後に……ツイン・ワンネス。世界を救うための呪文だ」




 彼は確かに、ツイン・ワンネスと言っていた。世界を救う呪文とも。聞いたことはないし、もちろん使ったこともない。それでも俺には馴染みのある言葉のように聞こえた。聞いたことないはずなのに。


 ガルやフィン、ソールやサタナも聞き取れたそうだが、言葉の意味から効果まで何一つ理解できなかったとか。「世界を救うための呪文」って言われても、それをどうやって使ってどうするのか、そこまでは説明してくれなかったため、俺たちは戸惑うしかないのだ。


 記憶はここで途切れた。もうこれ以上見せる必要が無いと、脳が勝手に判断したのか。それは置いておいても、世界を救うための呪文らしき物を手に入れた。彼が死ぬ直前に発した言葉だ、当たり前だが、意味があるに違いない。


「ツイン・ワンネス」と呟いてみるも、呪文の訓練を受けていない俺には到底使えっこない。何の効果も生まれず、ただ単語を呟いただけになった。


 時の賢者・クロースの孫であるアイとウィドウは特殊な訓練を積んでいたのか、賢者の孫であるからなのか分からないが呪文を使える存在であった。10年程訓練していたと言っていたし、前者でもあり後者でもあるのだろう。


 ……なら、この中で呪文を唱えることのできる人間はいるのか? 前提として俺はできない、呪文に出会ったのはついさっきのことだから。それで他はできるのか?


 サタナとか、力の石を保護する賢者・アキラの孫娘であったはずだ。それにフィン、彼も錬金術師の末裔とか言っていた。2人なら何かしら、祖先から教えられているんじゃないか。


 と思っていたが、彼らは首を横に振っている。どうやら何も教わっていないらしい。まぁ、仕方ない。アキラが魔王に殺されたのは、サタナがまだ5歳の時。呪文についてを教えるのはまだ早い。


 で、フィンも教わっていないとなると、絶望的じゃないか。錬金術師というから呪文とはまた違った物を使うというのは分かる。ただ、錬金術にも呪文にも何かしら通ずる物があると思っている。だから聞いてみたのだが……残念ながら何も知らないと。


 振り出しに戻った気分だ。でも、何かしらでいい。何かヒントが残されていないのか。また記憶を覗いてもいい。何でもいいから、早く外の世界に出て魔王を止めてやりたい。



「呪文を使えるのは2人だけだと思ったか?」



 そう口にしたのは、デリーシャのリーダーであるガルであった。彼は特殊な家系でもないだろう、どういう意味だ。


「俺らは魔王の中に何年閉じ込められていたと思う?」


 ……確か、8年くらいか。いや、時間の感覚が薄らと消えていっているからよく覚えてないが、大体そのくらいだった気がする。


「この世界は時間の進みが外の世界と違う。早い時もあれば遅い時もある。だから俺らはそれを利用して、ずっと呪文の訓練を積んできた」


 どういうことだ。このデリーシャの拠点であった倉庫に見える背景を使って、呪文の練習なんてできるのか。確かに外の世界とは時間の進みが違うとは聞いていたが、完全な環境が整っていない中で訓練を積み重ねることはできるのか。


「急いでんだろ。説明は後だ。問題は生命エネルギーだが、どうやって用意する?」と彼は倉庫の荷物を片付けつつ、俺たちに質問をした。説明はしないつもりだろうが、今は置いておこう。


 それで呪文を唱えるには、生命エネルギーという物が必要と聞いていた。時の石を俺の体に埋め込むのにも、周辺にいた人間からエネルギーを借りていた。だが今は、この空間に5人しかいない上、魂の集合体だから生命なんて物が存在しない。


「いいや、僕たちには力の石があるだろ」と提案したのは、黒いローブを脱いだ姿のフィンだった。


「力の石がマイトを無意識に動かしていたのなら、それなりのエネルギーが石に込められている」


 確かにその通り、生命エネルギーに変換できるかは別として、人間を無意識に動かすほどのエネルギーがあると思えば、石は強力な動力源となる。問題は……呪文が成功するかどうかなんだが。


「失敗したら、その時は考えればいい。成功したら……世界を救おう」


 ガルの掛け声と共に、俺たち5人は部屋の真ん中で手を重ね合わせた。どうやって呪文を唱えるか、どうやって世界を救うかは分からない。ただ中に入っている力の石の本能が、俺たちを正しく導いてくれる気がする。だから俺たちもそれに従うのみ。


「行こう。ツイン・ワンネス」


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