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第66話 何でここにいるの?

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 今は魔王の視点から、外の世界を覗いている。奴の体は巨大であるため、視点もハロス城の頂上と同じくらい高いのだが……慣れるはずもない。高所が苦手な訳では無いが、魔王はその巨大な体で人を踏み潰したり握り潰したりと、様々なことをやってのける。


「助けてくれ!」と叫ぶ兵士が目の前にいる。彼は腰を抜かして立てない様子。しかし巨大化した魔王に手のひらで押し潰された。


「逃げろ!」と他の皆に伝えている兵士は、巨大な魔王によって蹴られ、粉々になってしまった。


 それと同時に近くに建てられたハロス城の塔も、魔王の蹴りの衝撃に耐えられずに崩れていく。瓦礫の下敷きになった者も存在する。


 もう見てられない……となった時のことだった。突然、魔王はその体のままその場で飛び跳ねた。


 着地した瞬間、凄まじい衝撃波が発生する。


 魔王の下に居たものは消滅し、少し離れていた人間も有り得ない程吹き飛ばされ帰らぬ人となった。生き残った者も存在はするが、残念ながらもう二度と歩けないくらいまで体を損傷している。


「実に愉快だ」


 魔王は余裕そうに外の世界で暴れている。久々に外に出たのだ、こんなに暴れるのも無理はないが人を巻き込むのだけはやめてほしい。いや、生物を巻き込むこと自体やめてほしい。または永遠に封印出来たらどんなに楽なことか。


 で、俺はもちろん基地にいる彼らのことを心配している。だって魔王の視点からは何も見えないから。基地があったはずの場所は焼け切っており、その近くに人は誰もいない。


 ノーマッドのメンバーが生きているかどうか心配だし、唯一呪文を扱うことのできる賢者の孫達も生きているか心配だ。特に2人が死んだら、魔王を討伐できる手がかりが完全に消滅することになる。並の人間だけでは到底討伐できない、力の石を持った4人が倒せなかったのだから。


「私は絶対に勝利する存在なのだ」


 奴はそう言うと、体をより巨大に変化させていった。ハロス城の塔の頂上と同じくらいだったはずの身長が、今では雲を突き破るくらいの高さに。手も頭も足も何もかもが大きくなり、視点はもう人間が視認できないくらい。


 更に姿も変化していった。魔王という言葉通り、悪魔のパーツを人間に押し当てたような体をしていたが、今では完全に人間の体をしている。人間の体と言っても生殖器や毛は生えておらず、体は半透明で紫色。人間である俺たちの魂を吸収したせいか?


 それで奴はたった1回、足踏みをした。それだけで巨大な衝撃波が発生し、シティスト全体を衝撃波で破壊していった。ハロス城も教会も俺の家があったであろう場所も、ソールが言っていた裏通りも何もかもが衝撃波によって消滅した。


 もう……絶望。


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 気が付くと俺は元の世界……魂の集合体の方に戻っていた。目の前で残虐な光景を見せられたんだ、汗だくで恐怖から目も開けられない。息は切れ、手もずっと震えている。


 だってシティスト全体が衝撃波によって消滅したんだから。ポリスタットの一部も巻き込まれたんだから。彼ら……基地にいたはずの彼らはどうなったんだよ。ティナもタイガもユーゴもホークもジュリーもシータも、賢者の孫であるアイもウィドウも、治安兵士のリーダーであるジャラも。


 流石にもう遠い所に逃げているよな。呪文で遠くにワープ出来ているよな。流石に……助けられているよな。誰に? 知らないけど、誰かが助けてくれているはず。俺たちが最後の砦な訳ないもんな。頼むから……生きていてほしい。絶対向こうに戻るからな。


 手の震えを抑えようとするも、恐怖には勝てない。だからもう諦めて、次の策を考えることにした。それは「この魔王の中から出る方法」についてだ。魔王の中から出れば……力の石を持つ我々だ、後で何かしら出来る。


「マイト、大丈夫か?」と疲れ切った俺の表情を見てソールが心配してくれる。


「大丈夫だ……それより、記憶を映し出す方法を教えて」


「……フィンの体に触れろ。後の操作は俺が教えられるから」


 ソールの言葉通り、その震えた手でフィンの肩に触れた。するとまた色々な記憶が自分の頭の中に入っていく。その記憶というのも、全て過去に自分が経験した物ばかり。混乱に陥らないよう何とか自身を奮い立たせ、ソールの指示に従った。


「暗闇から自分を探し出すように、目を閉じてから今までのことを思い出す。そうすれば勝手に納連動する」


 彼の言葉通りに、今までに起きた出来事を思い出してみる。出来事なんて生まれてからいくらでもあるが、今は魔王討伐の手がかりを見つけたいんだ。それに関する出来事を探ろう。


 例えばウェール村を初めて訪れた日とか。フィンや何でも屋の主人がウェール村に行くよう仕向けてたなんて思わなかったな。村長も時の石の保護を手伝っていた訳だし、細かなヒントでも過去に発していそうだ。


 村長繋がりで言うなら、彼が結界を破るために犠牲になった日。といっても今日の話である。結界を破ってから過去に遡り、真実を見てから魔王に取り込まれるまで、全て今日の話だ。体も心も疲れ切っているが、俺が諦めてしまってはどうしようも無い。


 デリーシャメンバー4人の記憶も見てみたいが、未だに外の世界に出られていないということは、彼らの記憶に手がかりが存在しなかったということ。俺の記憶の中に確実に存在するとは限らないが、見ることが出来るのなら見た方が良い決断だろう。


 4人とは違って俺は長く生きている。実際、彼らとは同い歳じゃなくなっている。魂の中で生き続けてはいるが。で、記憶が他にあるとするならば……デリーシャが復活するとなった時のこと。シティストにあるハロス城が襲われた時……これも今日なんだよな。


 魔王が作ったとされる偽のフィンは俺の腕を噛み切った。本物の魔王に出会ってから痛みを気にする暇も無くなったが、魂を偽物のフィンとはいえ外に出すことが可能なのか。


「よし、映し出されているぞ」とガルが嬉しそうに手を叩きながら教えてくれた。俺に記憶を映し出しているという意識は無かったが……顔を上げてみると、目の前にはある風景が表示されていた。


 それはソールがさっき見せた、幼い彼が過去の俺に助けられる時の風景。また彼が見せているかと思ったが、どうやらこれは俺が見せている物らしい。覚えていないのにどうやって? 分からないが、とりあえずそのまま続けてみる。


 両手を広げ、過去の俺が彼を助けた所まで早送りしてみる。さっき見たところは飛ばして、幼いソールが俺に感謝を述べる場面に到達した。ソールの記憶はここで途切れていたが、俺目線何があったのか気になるな。手がかりにもなるし。


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「君は誰?」


「マイト・ラスター。近所で虐められている君を見つけたから……つい助けた」


「……ありがとう」


 幼いソールはそう言うと、過去の俺に手を振って自分の家の方へ走っていった。もう時間も遅いからな、帰るのは当然だ。で、過去の俺は手も振らずにただボーッと突っ立っている。何で帰らないんだろう……とか考えていたその時。


 過去の俺の目が赤く点滅した。


 これを見ているデリーシャメンバーは驚く素振りを見せつつ、記憶を見せている今の俺を見て「何があったの?」と聞いてくるが俺も分からない。


 少しすると目の光は消えたが、過去の幼い俺はある言葉を発した。


「……あれ、何でここにいるの?」と。


 これには流石の俺も声を出して驚いてしまった。過去の俺だ、なのに覚えていない。それに今の言葉、自分がソールを助けた帰り道っていうこと自体を忘れているようにも見える。目が赤く光ったのと何か関係があるんじゃないか。


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