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第63話 記憶旅行の始まりだ

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 俺の前には、デリーシャのメンバーであるサタナとソールとフィンが立っていた。彼らもまた魔王によって魂を抜かれた者たち、ここが魂を抜かれた人の集まる部屋であるなら彼らが居るのも納得。


 3人の服装はどれもどこかで見たことのある物だった。確かサタナとソールは教会で魔王に刺されて魂を抜かれた時の装備で、フィンは顔も隠れるような黒いローブを着ている。

 フィンのその服装は、俺に「ウェール村を立て直してほしい」と言ってきた時と同じ服装だな。


 魔王に魂を抜かれた時の装備で現れているのは2人、その他はまた別の時間帯の装備をしている。フィンは謎の男として俺の前に現れた時だし、俺とガルは追放時の服装で、今居る場も追放時に居た倉庫。不思議だな、これも魔王と何かしら関係があるのだろう。


 それで俺はついさっきまで過去に戻っていたから、デリーシャのメンバーを一方的に見てきた。しかし今、目の前にいる。どう声をかけたらいいか分からない。


 と、俺にフィンの方から話しかけてきた。


「……結婚おめでとう。それとお気の毒に」


 彼はそう言いながらフードを取って俺に顔を見せた。フィンの顔には魔王が引っ掻いたであろう傷が、それも深く付いていた。傷跡は紫色に変色しているし、何より見ていて痛々しい。


 というか、彼らはこの部屋で俺の生き様を見ていたのか。ティナと結婚した時には既に、彼らは魂を抜かれて死んでいた。お気の毒に……ってのも、彼らは見ていたのか。


「君がここに来たから、記憶を覗き見できただけだよ」と彼は倉庫にある箱にもたれつつ頭を抱えながら、ある話を始めた。他のデリーシャのメンバーも、涙を流しているのはガルのみであるものの、皆悲しい顔をしていた。


「魔王に魂を抜かれた後、僕らは魔王の中に閉じ込められた。詳しく説明すると、死んだんじゃない。魂を抜かれただけで、体に魂を戻せば骨になってたとしても復活する」


 俺はデリーシャのメンバーや俺自身が魔王に殺されたと思っていたが、魂を抜かれた段階ではまだ死は確定していなかった。その事実にまずほっとしたが、問題は残っている。その俺たちの魂は魔王の体内に存在していて、俺も今その中に入っている。


 さぁ、どうやって魂を取り出すのか。取り出せたら、時の石も力の石も奴の手から離すことになる。大きいことだが……彼らがここに残っているということは、魂を戻す方法は知らないのだろう。知っていたらとっくのとうに脱出しているよな。


「その通り、魂を元に戻す方法は知らないんだ。だからずっと部屋に閉じ込められていた。部屋も個人で見え方が違う。君は倉庫に見えてるだろうけど、僕には教会に見える」


 部屋の見え方が違う? ここは魔王の体の中で俺たちは魂として存在しているから、物理的に魔王の体の中ということでもないし、体も魔王の中に存在しない。


 だから今俺が目にしている彼らはあくまでも魂であり、目にしている風景は何かによって提供されている場所である。それは魔王によって提供された物では無いとのこと。考えれば考える程訳が分からなくなる。


「深く考えなくていいさ、力の石が僕らを引き寄せていると思えば。ガルとマイトにとっては倉庫、僕にとっては教会、サタナにとってはアキラの図書館、ソールにとっては"ワンダーボルダーの裏通り"が見えている」


 人によって見えている景色が違うのは分かったが、俺は何で追放された時の景色を見ているんだろう。それにガルもだ、その日に特別固執しているとかそうは思っていないはずなのに。


 他は分かる、サタナの祖父であるアキラの図書館の地下室には力の石が置いてあった。だからサタナがそれを見るのも理解できるし、フィンが仲間を亡くした教会を見ているのも理解できる。


 ただ、ソールのワンダーボルダーの裏通りというのは聞いたことがない。彼とは幼馴染で、ずっと仲良く遊んでいた仲だった。デリーシャに誘ってきたのも彼だし、技を教えてくれたのも彼だった。


 実際はサタナが皆を集めたのだけれども、俺にとってソールはかけがえのない幼馴染。だから危険な仕事である討伐者の道を勧められても、断ることなく彼の元へ行った。サタナに言われというのもあるが、前提としてソールの存在もある。


「魔王は今もなお、外の世界で暴れ続けている。力の石と時の石を手にした魔王だから、世界征服までもう時間が無い。それまでに対策を練らないといけないけど……」


 で、彼らは俺がワンダーボルダーの裏通りって物を知っているていで話を進めようとするから、余計ややこしい事になる。作戦を練ろうとしている今聞くべきことじゃないかもしれないが、後悔するよりかは今聞いておこう。


「そのワンダーボルダーの裏通りってやつは何だ?」と俺が尋ねると、ソールが返答する前にサタナが答えた。


「……ソールの実家の近くにあった雑貨店。何で覚えていないの?」と。


 彼女は目を吊り上げ、何も覚えていない俺のことを睨んでいた。無理もないが、俺は本当に知らないんだ。


 ソールと俺は幼馴染だったから、実家もそれなりに近かった。シティストという都市は巨大であるため、中心部にあるハロス城から離れていたとしてもどこでも栄えているような印象であった。家は貧しくもなく裕福でもなく、ただハロス城に暮らす人間からしたら貧しく見えるような環境。


 それでソールの家の近くにある雑貨店ということは、もちろん俺の家の近くにもある店でもある。しかし……家の近くに雑貨店なんてあったか、俺は明確には覚えていない。あったとしても、それがワンダーボルダーという名前かどうか、それすら覚えていない。それの裏通り……?


 で、ソールは何でそれを風景に思い浮かべているんだ? フィンが教会、サタナが祖父の殺された地を思い浮かべるのは分かるが、ソールにとってそこは思い入れがある場所なのか?


「流石に覚えていないか……フィン、記憶を見せよう」と彼は部屋の中心部にある椅子の前に立ち、腰に差しているナイフを取り出しそれを地面に突き刺した。すると地面は赤い光と共にひび割れていき、周りの景色も崩れていく。


 やがて周りは真っ黒の終わりの無い空間へと変わっていった。あまりの恐怖に叫びそうになったが、ここはグッと堪えよう。


 少しずつ真っ黒の空間にも等身大の人間が生成されていき、それらはデリーシャメンバーの彼らと同じ見た目になっていった。


「記憶旅行の始まりだ」


 周りの景色はどこかで見たことのある物へと変化していった。


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