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第54話 もうお前は必要ない

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 またグルグルと回転しながらも周りの景色が変わっていく。次はどこで、今度は誰が居るんだ。もう時間を遡る旅も辛くなってきた。どんどん新事実が分かるのは良い事だけども、見てはいけなかった物や目を逸らしたくなる物が全て目に入ってくる。動けないから尚更。


 次の場所は……酒屋の倉庫だ。デリーシャの本拠地でもあった場所で、俺がガルから追放と言い渡された場所。もちろん追放された意味は未だに分からない。分からないけども、理不尽な理由で辞めさせたのではないことくらいは察せる。


 明らかにおかしいから、人をパーティーから追放するのに「一人前は必要ない」というのはおかしい。せめて嘘でも「半人前だから要らない」とか言えばいいのに。


 酒屋の倉庫の扉が開き、ガルが入ってくる。まだ俺は到着していない。炎の巨人・ムスルについてを都市の役所と話し合っていたから。この日はサタナもソールも居なかったから大変だったのだが、今になって理由が分かる。


 と、ガルともう1人、ある男も倉庫に入ってきた。それは酒屋の主人である。タオルを頭に巻き酒屋を仕切っていた彼が、今何故ここに? 俺が追放されたのは夜のこと、酒屋は大忙しのはず。


 扉を閉めて深刻そうな顔のまま、ガルは話し始めた。


「サタナとソールが殺された。俺たちも直に殺される。助けてくれとかは言わない、魔王をより長く封印して力の石の保持者を遠くに逃がすために、ある作戦を手伝ってほしい」


 ガルは駆け足で説明するのだが、説明を受けた酒屋の主人は特に何も言わずに黙って言われたことを聞いている。もしや前から石の話を聞いていたのか?


「それは、マイトをデリーシャから追放する。あいつには悪いが、追放支援金は出る。その金でウェール村に行くように仕向ければいい、俺とフィンも手伝うし、村に行かせれば後は村長の仕事になるから」


 俺が追放された理由が、やっと判明した。それは俺が一人前だったからでも力不足だったからでもない。俺……力の石の保持者をより遠くに逃がすためだった。今思い出したが、追放する時の彼は俺に向かって「辞めると言うな」とか言っていた。それも、追放支援金を出すためだったのか。


「……それは何とでもなるが、何故お前らはマイトを逃がそうとする?魔王は石に戻ったんだろう、なら3人でバラバラに散ればよくないか?」


 それもその通り。1人が逃げるよりも、3人がバラバラに逃げた方が見つけにくい。が、それをガルは頑なに断る。


「無理だ、完全に封印するには俺たちの犠牲が必要だ。割合が低いマイトと剣が逃げるしかない、それに……」


 それに、何だ?


「村長はあいつの行動力を見ていた。あいつになら任せても問題ない。事情は伝えなくていいが、もし魔王がまた復活したらこの手紙をあいつに渡してくれ」


 ガルはそう言って、酒屋の主人にある封筒を手渡した。俺はそれを見たことがない、もしかすれば……もう現実世界には無いのかもしれないな。俺が主人に会ったのは、ジュリーとシータを回収した時。その時は急いでデリーシャの元に向かおうとしていたため、彼も俺のことを止められなかったんだろう。


 今、角度的にちょうど覗き見できる立ち位置だ。手紙が現実世界には存在しない可能性を考えるに、見るなら今しかない。動けないが、何とか上半身を動かして覗いてみると、そこには汚い文字でこう書かれてあった。


 ”追放してすまなかった。理由は酒屋の店主から聞いてくれ。俺はもう死んでいると思う、だから二度と会えないし話せないから、アドバイスだけ残しておく。魔王を倒すには力の石が必要だ、それはお前の中にも剣にも存在する。意志を持つ者は強いと、ウェール村の村長に教えられてきた。今のお前なら分かってくれるはず。”


 謝るなんて彼らしくない。モンスターを討伐するためだけの集まりであったから、彼の詳しい内面までは分からないが、彼は頑固で頑なに意見を変えなかった。俺を追放してきた理由にもそれが含まれているのかと思っていたが、違った。


「あぁ、確かに手紙は受け取った。もう少しでマイトが来るんだろ? 俺は下で仕事に戻る、お前は酒飲まなくていいのか?」


「酔ったまま魔王と戦いたくねぇ。とりあえず、シティスト郊外の教会に来てもらうよう言ってほしい。3日までなら待てる」


「俺の知り合いに元役者がいる、店で雇っているが、一肌脱がせてみるか。安心しろ、マイトは俺たちが救う」


 彼らの会話を聞いているとうちに足音が聞こえてきた。これは多分俺の足音だな、俺が倉庫に入る時の。


「悪ぃ、俺は酒屋に戻る。後はきっちり……ケリはつけてこい。マイトにとってもガル、お前にとってもな」


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「マイト、お前は今日限りでクビだ。お前は前回の戦いで活躍したか? これだからお前はダメなんだ、もうお前は必要ない」


「辞めるよ。俺」


「その言葉は発するな!」


 俺の目の前で、過去の俺がガルによって追放されていく。


 昔の自分は何でもこなせると思っていた。実際にデリーシャに入り、実際に上級モンスターをたった5人で討伐していたから。それが何度「運が良かっただけ」と言われようとも、それは実力だと信じていた。実力もあっただろうが、力の石の影響が大きい。


 色々とあって俺はガルに追放された。その時は唐突すぎて理由を言われても納得できなかったが、次第に追放してきた側を少し恨むようになった。ところがどっこい、追放してきた側であるデリーシャが全く新聞に載らなくなったのだから、少し不安になっていった。


 今思えばメンバーは俺に隠れて、魔王を封印しに行ってたのだから、新聞に載らなくなったのは当たり前。


「お前を今日付けで、パーティーから追放する」


「……最後に言わせてほしい、ソールはどこだ?」


「ソールかサタナのどっちかは忘れたが『役立たずの顔なんか見たくない』と言って、どこかへ行ったな」


 過去の俺は呑気にソールの行き先を確認している。ソールとサタナもついさっき、魔王に魂を抜かれたっていうのに。その時の俺は何も把握していなかったから仕方ないのだが、2人の名前を口に出すのは辛かっただろう。ガルも大変だったんだな、あの時。


 で、今過去の俺がガルに追い出されるようにして倉庫から出ていった。この場にはガルと今の俺のみ。ガルからすれば独りなのだが。


「本当にすまない、マイト・ラスター。方法が思いつかないんだ。二大賢者が十数年前に殺されて、もう世界を守る者も居なくなった。都市の役人に言おうとしたが、魔王の封印を解いたのは彼らの都市開発のせいだ。無理に頼るなんてのはできない。だからお前に託すことになる、本当に……すまない」


 彼は独り、倉庫の中で号泣していた。大粒の涙を流し、地面に頭を付け声を上げながら。彼の決意がこの涙に詰まっていると思うと、こっちまで泣けてくる。


 今頃、過去の俺は途方に暮れていて、シティストの方に追放支援金を受け取りに行っていたところだっけな。その後酒屋に向かったはず。


 と、また背景が変わっていった。目まぐるしく変化していく背景に、俺はもう目が壊れそうだった。もう十分に過去は見たはずだし、もう1時間以上は経ったはず。まだ過去はあるのか、いや、過去は永遠にあるのか。まだ俺に関するイベントが存在するのか。


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