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第51話 姿の見えない何者か

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 背景は教会の地下室、前回は俺が行ったことのない地下室だったが、今回は行ったことのある方。ティナもノーマッドのメンバーもそこに居たし、何なら俺はそこで時の石を入れられた。


 つまり、教会には地下室が2個あったという訳だ。それは置いておいても、今いる地下室の中には……フォルス、ウール、賢者であるクロースの3人しか居なかった。


 ウェール村の村長であるトリガも、賢者の孫である2人の姿も見当たらない。彼らはどこに行ったのか。


 よく観察してみると、ティナの母親であるウールの髪型が少し変わっている。前は髪を結んでいたが今は解いている。つまり、少し時が経ったということか。日付が書かれた板を見てみると、そこには「12/11」と記されていた。


 つまり俺が過去に来た時から3日は経っているということになる。俺はぶっ続けに彼らのことを覗いているが、彼らからすると3日経ったことになる。時間の流れが違う……ということになったりするのか。よく分からないが、一旦彼らの会話に耳を傾けてみる。


「今朝、ある予感がした。封印が解ける可能性があると、ワシは感じた。だから今から……石と教会に結界を張る。準備はいいな」


 時の石を保護する賢者・クロースは、横にいるティナの両親・ウールとフォルスに向かって問い掛ける。白いローブを纏った2人は頷き、ウールは石の入った箱の前に、フォルスは地下室の入り口に立った。


「それでは呪文を唱えよ」


 クロースの合図と共に2人が呪文を唱え始める。何を言っているかさっぱり分からないが、結界を張る呪文であるのは間違いない。この間にクロースは時の石を箱の外に出し、紫色に光る本の上に石を乗せる。すると石は天井から糸を吊るされたように勝手に浮いた。


 よく分からないが、これが魔法とか錬金術ってやつなのか。


「大切な人を思え、痛みは我慢しろ……行くぞ」


 クロースの新しい合図と共に、2人は自身の腹に何故かナイフを突き刺した。突然の事だったから俺も理解が出来ないまま、前に歩もうとしてしまいバランスを崩して転倒しそうになった。が、足は動かないためバタバタと腕を動かすことしかできなかった。


 ナイフの刺さった2人の腹からは血ではなく、緑色に光る液体が流れ出ていった。それらは石や教会に絡み付いていき、徐々に結界を形成させていく。2人の血らしき液体が、結界の正体だったのか。


「ありがとう。フォルス、ウール。全ては世界を救うためなのだ」


 クロースが悲しく独りで呟いた時、結界は完成した。緑色に光る液体は石や教会の全体に浸透していくのと同時に、2人の死体は灰に消滅した。これが……ティナの両親の死の真相で、村長は破った結界はティナの母親の物であったのだ。


 結界のお陰で、クロースが鈍器で石を叩いても傷一つ付かないようになった。教会も同じく、壁を叩いても一切傷付かないどころか、攻撃を衝撃波として跳ね返すようになった。




「アキラ、全てを託したぞ」




 クロースがそう呟いた瞬間、彼は死んだ。突然のことだった。姿が見えない何者かによって、彼は背後から腹を槍で貫かれて即死した。


 背後にいるのは俺だが、突然槍が現れたと思ったら、彼はそれに貫かれて死んだ。誰がやったのか検討もつかない。


 と思ったのもつかの間、姿の見えない何者かは、自ら姿を現した。赤く尖った長い槍を2本持った奴は、トゲトゲしい見た目をしている。紫色をした体に鋭い爪と鋭い牙、それに黄色く光る目を持っており……禍々しい。


「次は力の石」と呟き、そいつはまた消えていった。それと同時に……周りの背景もまたグルリと変わっていった。


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 次の背景もまたどこかの地下室らしい。辺りは暗く、ロウソクの光で周りを照らしつつ、向かって正面にいる髭を生やした老人が何か作業をしている。


 足は動かないため、どうにか腕をバタつかせながらも覗き見てみると、その老人は赤い石を特殊な手袋をして触れていた。この赤い石ってのが、言われてきた時の石ってやつか。それにしてもどこかで見たことがあるな。


「おじいちゃんはもう死ぬからね、後は任せたよ」


 目の前で立って作業している老人が急に言葉を発した。俺に向けて言っている言葉ではないため、恐らく独り言だろう。だって俺は干渉できない側の人間だから。その場に居る訳じゃないから。


「サタナ……サタナにも分けなきゃいけんの。辛いなぁ」


 彼は今、サタナと言った。サタナを知っているのか。赤い石が力の石とするなら、彼はそれを保護する賢者でアキラということになる。『力の石を保護していたサタナの祖父』とか言っていたのもあるが。


 分けなきゃいけない、何を分けるつもりなのだろうか。サタナにも……ということは、他の人にも分けるという物なのだろうが。


 と、考えていた次の瞬間、彼の目の前に置かれていた力の石がバキン……という派手な音と共に爆散した。目の前にいる彼のことを心配したが体は動かない、煙が収まるのを待ったが彼は無傷だった。


 どうやら彼が故意に起こした爆発らしく、彼は粉々に割れた赤い石を手袋をしたまま持ち上げ、6つに分けた。こんな簡単に石がバラバラになるのか。


 時の石は俺の体を過去に転移させる力を持っているし、強固な結界によって保護されていた。それが力の石はこんな簡単に割れている。力の石も『力』と付いている位だから、半端ない力を持っていると思っていたのに。


 彼は6つに分けた力の石を、何らかの呪文で浮かせた後にまた呪文を唱えると……それらは勝手に空に浮かび上がったまま飛んで行ったのだ。行く先は俺も分からない。そもそも彼は分かっているのだろうか。子供の手よりも小さなサイズの石が、聞いたこともない呪文によって空を駆けていく。


 彼はそれを終えた後、透明な何者かに刺されて亡くなった。姿を現したのは、クロースを殺した紫色の奴だった。こいつが、魔王って奴なのか。


 魔王は高らかに笑った後、地下室の中の本が全て燃やした。地下室どころかその建物自体に火が移り、都市の外れにあった図書館であろう建物は、火に包まれていった。


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