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第46話 俺が犠牲になる

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 二大賢者……? さっぱり意味が分からない。世界を裏から保護していた賢者が2人存在していて、そのうちの1人がクロースという人。クロースの孫が目の前にいる、白いローブを纏った男2人。


 賢者の意味すらよく分からないのに、その上畳み掛けるようにして「世界の保護」とかいう言葉を出された。先程まで戦闘していたのも相まって、理解が追いつかない。


 横にいるティナも、奥でメモを取っているホークもタイガも、誰も意味を理解できていない様子。しかし1人だけ、最初から意味を理解していた……いや、分かっていた人物が居た。




「ティナ、言っておかなければいけないことがある。お前の両親と俺は、二大賢者の手伝いをしていた。デリーシャの正体が--であることも知っていた」




 村長は古びた杖を使って立ち上がり、そうティナに告げた。村長が口篭ったために聞こえなかった部分もあったが、それでも衝撃を受けたことに変わりはなかった。


 もちろんのことながら、俺もティナも周りにいたノーマッドのメンバーも理解が追いつかない。確かに村長は村で仕事をせずに、村の外で何かをしていた。だからティナも俺も困惑していた。もしや村の外からの干渉を断り続けたのも、これが理由だったりするのか。


 村長の行動には不自然なものが多い。

 ティナの両親が亡くなった時も、外部からの干渉を断り続けた時も、俺に不合格とか合格とかを告げた時も、俺に赤い石の付いた剣を改めて渡した時も、デリーシャが復活すると書かれた新聞をグシャグシャにした時も、教会に来いと言った時も。


 今思い返してみれば、全てはコレに繋がったのかもな。


 と、ここで白いローブを纏った男達が、震えている村長に代わって話を続けた。


「ウェール村の村長さんには大変お世話になりました。私達が幼い頃面倒も見てくれて、忙しい私の両親に代わって助けてくれました。あの時の恩をどうやって返せばよいのか……」


 賢者の孫達は村長にお世話になったと話している。しかし俺は別のことを思い出していた。それはティナ、彼女の両親はとても忙しく家に帰ってくる日が少なかったと聞いた。


 それなのに村長は自分の孫に対して「祖父」として接さずに、頑固なのか「村長」として接していた。だから周りの村人が代わりに面倒を見ていたのに、2人の面倒は見るのか。


 そして村長は秘密主義が過ぎる。


 俺に少しでも言ってくれていたら。もしティナの面倒も見て外部からの干渉を受けていたら、ウェール村が廃れることはなかった。


 もし「あのデリーシャは偽者」と言ってくれてたら、ランの死は確実に防げていた。もし俺が追放された理由をもっと早く話していれば、こんなに悩まなくて済んだのに。


 俺たちに話していれば、こんなことにはならなかった。


 村長の今までの行いに腹が立ってしまった俺は何も考えずに立ち上がり、座っている村長の目の前に立った。


 ここから何をしようかも考えていない。秘密主義な村長を殴りたくなった。村長からしてもランは曾孫だ、自身の秘密主義のせいで曾孫であるランが命を落とすことになったんだ。


 村長は何も言わずにただ震えているだけ。歩くにも杖が必要になったのだ。そんな村長を殴ることはできないが、どうしても怒りは収まらない。もっといい方法があったはずなのに。


「方法はある。俺が犠牲になれば」


 そう提案したのは、俺の目の前にいる村長だった。何をする気なのだろうか、怒りは収まらないがとりあえず村長の話を聞くことにした。


「時の石で時間を変えるのだ。奴--が生まれる前に遡って、奴--を叩き潰す」


 また村長が口篭ったために聞こえない部分があるが、それにしても……できるのか?奴が生まれる前に遡ることなんて。創作物の中での話か、と思うくらいに現実離れしている。


 これには他の人も驚いた様子を見せている。ノーマッドのメンバーやティナはもちろんのこと、時の石の番人である賢者の孫の2人までもが驚いている。


「村長……いや、トリガさん。その方法は危険です、何十人かのエネルギーを奪うことになりますし……それに----」


「この方法しかない。もう残されていない。全ては俺のせいなんだ。俺が黙っていたから、俺がお前らに真実を言わなかったからこうなったんだ」


 村長は俺に視線を移し、話を続けた。


「でもな、お前みたいに強い人間じゃないんだ。お前は幼少期からずっと強かった。力を与えられる前からずっと」


 力を与えられた……いつの話か。それに俺のことを村長は幼少期から見ていたのか。どこから、それも何で。


「俺は言ったはずだ。結婚式の夜に……老いぼれだとか覚えているか」


 俺とティナの結婚式の夜、珍しく村長に励まされた。次の世代に託すような発言をしていたから、一言一句全て覚えている。「意志もなければ力もない。時間も残されていない。だからお前に託す」と村長は言っていた。




「あぁ、俺は言った。お前みたいに”石”もなければ力もない。時間の石も残されていない。だから”石”を持つお前に託す……とな。全てはお前に託した。臆病な俺を許してくれ、次の世代はお前が救うのだ。実際、俺の方が早く死ぬからな」




 そんなことを彼は言っていたのか。


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