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第34話 全ての元凶・ノーマッド

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 このままじっとしていても、埒が明かない。


 そう思っていた時に、ちょうど兵士たちが門からゾロゾロと入ってきた。今度は俺たちに「動くな」等は言わずに、そのままジェスの近くで頭を下げている彼の方へ駆け寄って行った。


「ヴァールハイト様、お怪我はございませんか?」


「大丈夫だ、それより彼らを。彼らは街と私を救ってくれた」


 ジェスに対して頭を下げていた男は、ヴァールハイトと言うのか。聞いたことはある。何度かデリーシャ時代に名前だけなら、会ったことはない。この男はパワー・コンテストにも居なかったため、初めて会うことになる。


 他の4人は、全員パワー・コンテストで見たことがある。上にある見学席で、俺とモンスターを見下ろすようにして、リラックスしながら座っていた。


 と、突然。後ろで立っていた4人が口々にこう言った。


「ノーマッドから離れろ、全ての元凶はノーマッドだ!」


「ヴァールハイト様は操られている、今すぐにノーマッドを殺せ!」と。


 あまりに突然のことだったため、俺たちもジェスの遺体から離れて身構えてしまった。兵士も身構えた俺たちに対抗するように、対人間用の剣を構える。


「私は操られてなど……」


「いいえ、貴方は操られています。全ての元凶、ノーマッドによって!」


 黒い髭を生やした、目の尖った人間が率先して、俺たちを全ての元凶だと言っている。


 違う、確かに「諸悪の根源」とかは言われたが、俺たちはやっていない。洗脳など高度な技術を俺たちは持っていないし、そもそもバジリスクを倒したのは俺たちだ。


 それも全て、自作自演だとでも言うのか。

 俺たちはただ、バジリスクを倒しただけなのに。


「早く、ノーマッドを殺れ」


「ですが……ユーベル様、私どもは----」


「黙れ。ヴァールハイトは操られているのだ」


 戸惑っている兵士に向かって、俺たちを殺すように指示した。その人の名はユーベル、遂には兵士から剣を取り上げ、それを俺たちに向けた。


「森に帰れ、または地獄にな!」


 ユーベルはそう言い放った後、ヴァールハイトさんの制止を振り切って、前にいたタイガに向かって剣を振り下ろし----




「待ちなさい」




 ----振り下ろそうとしたが、ユーベルはそれを寸止めした。今どこかからか、声が聞こえたような。


「ズロー・ユーベル、グラート・クローフィ、グロム・ヤード、ゴーラ・シクレータ。『都市及び国家反逆の疑い有り』より、身柄を確保します」


 ありとあらゆる門から、あの4人を取り囲むようにして大量の兵士が現れる。対人間用の剣を持っているが、城の兵士とはまた違った服装をしている。


 4人は抵抗虚しく取り押さえられ、ヴァールハイトさんのみが保護された。唖然としている俺たちに向かって、身柄を確保すると発した金髪の女性が話し始めた。


「失礼しました、私たちは治安兵士”です。どこからも干渉されない、独立した組織。セントリーで主に活動しておりますが……。以前からポリスタット内で違法にコンテストが開催されていると聞き、調査を進めていました」


 治安兵士……聞いたことがない。


 セントリーの中心部にある都市・ツェッペリンには行ったことがないからか。それとも単純に俺が知らないだけか、または秘密裏に存在する組織か。


 コンテストというのは、パワー・コンテストのことだろう。確かに、あれは違法で秘密裏に開催されている。それ故に怪我をしたとしても、後は自己責任でと放っておかれる。更に報酬も違法で、どこから出ているかも分からない。俺はそれを分かっていて参加したのだが。


「治安兵士は先日、ポリスタットへの潜入を開始しました。そこで今日、白いモンスターが城内で暴れ出したのを、ここにいる彼が見つけました」


 彼……と呼ばれた青年は、誇らしく手を挙げた。


「彼はバベル城に潜入し、白いモンスターが出現する瞬間を目撃しました。近くにいたのは、コンテストを主催する4人。もう後は分かりますよね?」


 その4人は舌打ちをしながらも、黙って彼女の話を聞いている。


「彼の証言によると、4人が『コンテスト用のモンスターの運搬を業者に願っていた』そうです。本当かどうかは分かりませんので、これから聞いていきます。もちろん、ツェッペリンの方でね」


 彼女は4人を外に連れて行くように命令した。他の兵士と治安兵士の人たちは、ヴァールハイトさんとジェスの亡骸の保護に徹した。この場に残ったのは、潜入していた彼と彼女と俺たちのみ。


「紹介が遅れました。私はジャラ・ウー。聞き慣れない名前でしょう。私もストーズ出身ですから。治安兵士は、出身や性別による差別を反対しています。誰でも能力があれば所属することができるチームです」


 肌の色は俺とさほど変わらないが、確かに名前は変わっている。それがストーズ出身とは驚いた、メンバーも皆驚いた顔をしている。治安兵士、いい組織じゃないか。


「もちろん無理にとは言いませんが、私たちはあなた方を受け入れます。興味があれば、いつでも連絡をください。あなた方の所へ飛んでいきますから」


 彼女はそう言い終えると、上を指した。

 急に辺りが暗くなってきたのもあり、不思議に思いつつ見ると、真上に白い何かが飛んでいた。何かが浮かんでいる、糸もなく翼もなく。


「あれは飛行船です。治安兵士所属の技術者が開発した、空を飛ぶ船です。私たちは最新を生きていますので」


 彼女たちは、その場を去っていった。

 船に乗るには、船が地面に着地する必要がある。これくらいの巨大な船が着地できる場所といったら、シティストとポリスタットの間の草原くらいか。


「最後に、あなた方のお仲間さんが門の外で待っています。まずはそちらに。ジェスさんの遺体は、あなた方にお任せします」


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