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第22話 2人きりの旅

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 討伐支援金と追加の取材費を間接的に受け取り、その半分以上を村の立て直し費用に充てた。


 村を立て直すには金を稼がねばならない。しかし、討伐パーティーに居続けてはいけない……となって、俺は力仕事でこの村を支えていくことになった。


 俺は討伐パーティーで金を稼いでいこうと思ったが、村長がそれを許さなかった。理由を聞いても「後で面倒になる」とだけ。俺には全く理解ができなかった。


 ティナとは会話から敬語が外れるほど仲良くなった。同い歳というのもあった上、更に同年代が村の近くに存在しないため、お互いすぐに良き話し相手になった。


 ティナも外に働きに行く訳でもなく、ただ村で作業を行うのみ。昔は外に働きに行こうとしていたみたいだが、村長がまたそれを止めたようだ。


 それで今は、村を立て直そうとどうにか頑張っているらしい。例えば古い家の草を毟ったり、ガラスの破片を片付けたり。そんなの俺がやるのに。それに村長は何をしたいのだろう。


 彼の行動のほとんどが、村の寿命を縮める原因に繋がっている。村長は村のことを手伝おうともせず、いつも「用事がある」と外に出ている。孫娘に苦労をさせて、当の本人は……。


「大丈夫、慣れてるから」と彼女は平気なようだが。


 そういえば、彼女の両親について1回だけ尋ねたことがある。フォルス・ウールという名前は彼女の両親の名前から取ったものだが、名付けた時は詳細を聞くのが怖くて聞けなかった。今なら仲良くなれたし聞けるだろうと思い聞いたが、内容は重かった。


 まず彼女が幼少期の時に、事故で亡くなっている。何の事故かは彼女も把握していない。昔から帰るのが遅く、他の村人に世話をしてもらっていたそうだ。祖父である村長も、両親の仕事を手伝っていたらしく、彼もまた帰るのが遅かった。


 ある日突然、早めに祖父が帰ってきたと思ったら、両親が事故で亡くなったことを告げられたとか。仕事先での事故なのか、行き帰りで事故にあったのか、それすら教えてくれずに……今に至るそう。


 彼女が幼かったから……というのもあるかもしれないが、あまりにも説明不足すぎる。それに成長した今教えればいいのに、彼は何の意図があってか彼女に教えない。彼女が傷つくと思っているなら大間違いだ、彼女はもう強い大人なんだから。


「ありがとう、そう思うよね」


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 力仕事でこの村を支えていく……といっても、やることは沢山ある。本来この村は畑を作れる土地なので、ティナと協力して畑を完成させた。1から耕して、1から種を植えた。所々はコンテストに参加していない、暇な人達に手伝ってもらった。


 畑を作り終えて暇になったら、次はコンテストに参加する人達に技を教えた。彼らは俺のことを「マーナガルムを討伐したパーティー・ノーマッドの一員」として認識している。故に技を教えても何ら違和感が無い。デリーシャ関連の事柄を知っているのは、ティナと村長だけ。


 コンテストに単体で参加する場合は、下級モンスターが相手になる。ノーマッドのメンバーも単体で下級モンスターを倒せるのかというと微妙だが、どちらにせよ技は持っておいた方がいい。


 技といっても色々な種類がある。

 俺が主に教えたのは、剣術。自信はないが、それでも一人前の実力はある。デリーシャには五人前の実力が必要だったが、普通の世界では一人前の実力で大丈夫。


 それに俺が知っているモンスターの弱点を全て教えた。彼らも真面目だから素直にそれらを聞き入れ、コンテスト対策にと頭に叩き込んでいた。


「頼りになりますよ、ホントに」

「師匠って呼ばせて下さい!」


 コンテストに参加する浮浪者たちは、対モンスターの知識を教えてくれる俺を”師匠”や”頼りになる”と言ってくれる。俺もそこまでじゃない、ただ基準がおかしいパーティーに慣れただけ。


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 あれから月日が経った。


 コンテストに参加した浮浪者たちは優秀な成績を収め、金をガッポリと稼いできた。何でも俺の教えた知識が役立ったようで、すれ違う度に「あの時はお世話になりました」と言ってくれる。何もそこまでやっていない。


 それでノーマッドのメンバーの1人がウェール村で暮らしていることがバレた。最初は新聞会がウェール村を訪れて来たため、俺も必死に顔を隠して生きてきたが、今ではそれも収まり……仮面をせずに暮らしている。


 それにしても、一体どこからバレたんだろう。


 それはそうと、良いことはあった。

 ウェール村にノーマッドのメンバーが暮らしている……となって軽く騒動になった時、俺はティナと2人で遠くに逃げ出した。というより、村長が「遠くに隠れろ」と命令した。畑仕事の邪魔になるから、と。俺だけでいいのに、ティナも連れて行けと言った。


 このおかげで、俺はティナと2人きりで旅をした。結構な長旅だった。今暮らしている国・セントリーを周ってきた。それでも広い国なため、半周するだけでもかなりの月日が経過した。結局、その半周で諦めて帰った。


 無防備では行けないと思い、剣と盾を持って彼女と共に旅をした。砂地にはマミーといったモンスターがわんさか出現していたため、その場で討伐した。行った先で金を稼ぐ必要があったため、彼女には悪いが、モンスターを目の前で斬ることもあった。


 彼女も最初は「残酷だよ」と気を落としていたが、モンスターに襲われそうになっていたのを助けると、感謝せざるを得なくなっていた。


 残酷であることに変わりはない。モンスターといえど、生物の命を奪っているんだから。でも襲われたら仕方がない。運命を受け入れる訳にもいかないから、抵抗する。


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