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第18話 上級モンスターの出現

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 あくまでも非公式の討伐パーティー、故に手続きをする必要がない。そのため、俺とタイガが手を取り合ったあの瞬間から、討伐パーティー・ノーマッドは活動を開始したことになる。


 それで、どこにどのモンスターが出没するかは彼らがよく知っている。俺が知っているのは上級モンスターの出没地で、今は関係のないことだ。

ジェスによると、ポリスタット南の海周辺にスノットリングがよく現れるらしい。


 スノットリングとは、ゴブリンやオークよりも小さく、集団で人を襲うといった厄介なモンスター。とても簡単に倒せるが、少しでも油断すれば命を落とすことも。


 金の稼ぎ方は、モンスターの死体を各部位に分けた後、都市が設定する公式取引所に持っていく必要がある。これは公式だから、前のように裏切られる心配性は無い。死体を運ぶのが難しいかもしれないが、モンスターの死体は基本軽いから大丈夫だろう。数が多くなれば人手も欲しくなるが。


「スノットリングはそこまで高くない、スピリットでいいんじゃ?」とホークが口にした。


 スピリットとは、人型のモンスター。身体が半透明なため、そもそも見つかりにくい。そのため死体の一部が高価になりやすいが、俺でも見つけられるか不安だ。空き家や森の中の洋館だったりと、人が少ない所によく出没する。もしかしたらこの近くにも……いないか。


「それならマミーはどうだい、ちょい遠いが場所を知っている」とジュリーは皆に聞こえるような大きな声でそう言った。


 マミー、別名はミイラ。人型で、全身を包帯に巻かれたモンスター。口も耳も目も包帯に覆われているのに、正確に人を襲う。一体どこから見ているんだろうな。マミーは砂地にしか出現しないため、中々お高い値段で買い取ってもらえるはず。


「まずはタイガの傷を治してからだ、その間5人に技を教える。タイガにも後で教えるからそこで休んで。これは俺が昔……仕事していた時に上司から習った。上司は剣術の達人で……その話はいいか、とにかく皆に教える。モンスターを倒すためには、こ----」


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 討伐パーティー・ノーマッドを結成してから2週間が経過した。タイガの傷は完治し、技も彼らに教えることができた。技と言ってもそんな大して立派なものではない。

 ただ、訓練所で受けた授業の真似事をしてみた。彼らに共有できる情報があれば共有し、よりノーマッドが強くなれるように、鍛えあげようとした。


 彼らにも向上心がある。だから俺の言うことを鵜呑みにして、やる事成す事を全て真似していった。その結果、彼らはグングンと成長していき、剣術も俺までとはいかないが、結構仕上がってきた。


 途中から訓練に参加したタイガは少々遅れをとったが、元の身体能力が優れている上に、他のメンバーに追いつこうと必死に努力したため、一部の面で言ったら5人よりも強くなった。何なら俺よりも強いかも。


 俺たちはこれから、あるモンスターを討伐しに行く。


 今日は……上級モンスター・マーナガルムの出現予定日。『月を食べるほど巨大』といった逸話があるほど体が大きく、攻撃力も高い。数日前から新聞で騒がれていたため、この日のために鍛錬を続けた。


 上級モンスターの、更に上の級になるにつれて、彼らは人間界に姿を見せなくなる。しかし、ずつと森の奥で暮らしている訳にはいかない。少しだけなら……と外に出る時もある。例えば食糧の調達だったり、人間界の様子を覗いてみたりと。


 新聞に載っている専門家によると、その森の外に出る時間帯をまとめたデータが古代から引き継がれているらしく、次が……今日。その次は20年後。


 森の中に討伐しに行くのも手だが、そもそも倒せない。森の中は危険だ、渓谷もあって足場も不安定。それに大量のモンスターが住み着いている。マーナガルムだけを気にしていると、他のモンスターや環境に殺されてしまう。


 万が一討伐したとしても、マーナガルムの死体は巨大で持ち運べない。質量は軽くなるが、巨大なのは変わらない。木につっかかって、変に傷が付くだけ。あくまでも万が一の話で、まず森の中で討伐なんてできない。


 で、その出現地とされているのが、シティストとポリスタットの中間に位置する森。上級モンスターを討伐すると、多くの報酬を貰える。そのため、出現地の情報を見た別の討伐パーティーがわんさか、森の近くに集まっていた。


 非公式のパーティーから、俺でも知っている有名なパーティーまでもが集合していた。逆にマーナガルムに逃げられそうな程に。


 他のパーティーの格好も面白いが、この中では俺たちが1番奇抜な格好をしている。黒いローブで全身を覆い、手を隠すように手袋を着け、カラフルな仮面を被っている、俺たちが。


 森の小道を通り他のパーティーとすれ違う度に、色々な言葉をかけられる。心配する声もあれば、煽るような声も。


 それはそうと、出現地の目星はついている、以前にもそこである上級モンスターを討伐した。名前はサイクロプス、目を1つしか持たない巨人だ。マーナガルムの方が大きい、しかし巨人繋がりってものも存在すると思う。だから俺らノーマッドは他のパーティーがいる場所から離れ、川近くに移動した。


 情報より、経験が物を言う。


 と、そこで森の奥からガサガサ……と大きな音が聞こえた。木が擦れ合う音か、それにしては大きすぎる。もしやもう動き始めたか。


「おいフォルス、音……遠ざかってないか?」


 そうタイガが発した。

 フードを取り耳を澄ますと、確かにガサガサといった木の擦れ合う音は遠ざかっていった。ただの動物でもただのモンスターでも起こせない音、間違いなくマーナガルムの起こした音なのだが…俺を遠ざかっているな。


「フォルス、急いで音の先に向かうぞ。俺の予測が当たっていれば、さっきの小道だ」


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