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アルビオン王国宙軍士官物語~クリフエッジと呼ばれた男~(クリフエッジシリーズ合本版)  作者: 愛山 雄町
第八部「聖王旗に忠誠を」

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第二十九話

 宇宙暦(SE)四五二五年五月三十日、標準時間一五〇〇。


 第二特務戦隊のZ級駆逐艦ゼブラ626は、大破した通商破壊艦ヴェロニカに向けて最後の接近を行っている。


 クリフォードは士官室のラウンジを借り、調査隊に志願したゼブラの副長マーシャ・フォーブス大尉と宙兵隊の指揮官マイルズ・ホーナー中尉、戦隊参謀のクリスティーナ・オハラ中佐、副官のヴァレンタイン・ホルボーン少佐と協議を行っていた。


「優先すべきことはシステムから情報を引き出すことだ。今回の襲撃の真相を探るための手掛かりが欲しい。特にどの国が関与しているのか知ることは今後にとって重要だ……」


 そこでフォーブスとホーナーを見る。二人は真剣な表情で小さく頷いており、目的を理解していると確信し、クリフォードは話を続ける。


「フロビッシャーの機関長(チーフ)の話では自爆できないほどの損傷を受けているようだが、罠の可能性は否定できない。宙兵隊が先行して内部を調査し、罠の有無を確認する。ここまでで疑問点は?」


 クリフォードの言葉でフォーブスが発言を求める。


「調査の主眼点は理解しました。ゾンファあるいは帝国が関与している証拠を得ることで、これについては問題ありませんが、彼らが証拠を残している可能性は低いと思います。また、商船もヤシマのものでしょうし、システム自体もヤシマのものを使っている可能性が高いと考えます。決定的な証拠を得られる可能性が低いですが、注意しておくべきことは何でしょうか?」


「大尉の懸念は理解できる。これだけ用意周到な敵が証拠を残すような失敗をするとは思えないし、もし残っているとすれば欺瞞情報の可能性も考えられるからな。私としては得られる限りの情報をかき集めてほしいと思っている。我々では調べきれないことでもキャメロットに持ち帰り、諜報部で解析すれば何らかの手掛かりを得られるかもしれないからだ」


「了解です。今回掌帆手(ボースンズメイト)三名、技術兵(テック)五名を率いて調査する予定ですが、メインシステムだけでなく、保安システムのバックデータや擬装用の商品管理システムなどにもアクセスさせます」


「それで頼む。クリスティーナ、何か意見はないか」


 オハラは情報士官出身であり、こういったことを得意としている。


「乗組員の娯楽用のサーバーにもアクセスしてください。こういった任務ではストレスが溜まりますから充実しているはずです。その情報から敵乗組員の実像が浮かんでくる可能性もありますので」


 フォーブスはクリスティーナに頷く。


「了解です。初期化はされているでしょうが、物理的に破壊まではしていないでしょうから情報を拾い出すことは可能だと思います」


「ヴァル、君からは何かないか?」


「生存者がいる可能性は考慮しなくてもよいでしょうか? 大破していますが、全滅する可能性は低いと思います。搭載艇を使える状況ではないですし、脱出ポッドが射出された形跡はありません。捕虜を得る可能性があるのではないでしょうか」


 クリフォードが答える前にオハラが答えた。


「その可能性は低いと思います。ゾンファにしても帝国にしても艦での離脱が困難な場合は自決するでしょうから」


「自決が可能な状況ならそうでしょうが、あれだけの衝撃ですから重傷を負って気絶している可能性があると思います」


「ヴァルの言うことにも一理ある。フォーブス大尉のチームは情報収集に当たる。ホーナー中尉、生存者の捜索は宙兵隊に頼みたい。もしいた場合は麻酔で意識を失わせた上で回収してほしい」


了解しました、准将(アイアイサー)。艦内の捜査を行います」


 その後、艦長であるケビン・ラシュトン少佐から連絡が入った。


『改造商船まで〇・一光秒の位置に到達しました。大型艇(アウル)の準備も完了しております』


「了解した。では、フォーブス大尉、ホーナー中尉、危険な任務だが、よろしく頼む」


 二人は同時に立ち上がると、きれいな敬礼を見せる。


「「了解しました、准将(アイアイサー)!」」


 クリフォードは答礼を行い、戦闘指揮所(CIC)に向かった。

 フォーブスは船外用防護服(ハードシェル)を装着すると、大型艇に入っていく。


(准将のおっしゃる通り、証拠を残すようなヘマをするとは考えられないわ。ただ、爆散しなかったことは想定していないはず。艦の形状が残っているなら、何らかの情報は得られる。それに我々が見つけられなくても、敵が証拠隠滅を行うことはないから、キャメロットから派遣される専門家に任せることも考えておくべきね)


 彼女はそう考え、大型艇に乗り込んだところで部下たちに命じた。


「調査を行うけど、可能な限り現状を維持しておくように。これは宙兵隊も同じよ。ホーナー中尉、安全を優先してほしいし、生存者の調査は必要だけど、できるだけ船内に手を加えないようにしてもらえるかしら」


了解しました、大尉(アイアイマム)。まあ、この状況でブラスターをぶっ放すようなことはないでしょうが」


 そう言って笑っている。


 〇・一光秒という近距離であるため、一分ほどの加速の後、すぐに減速に入る。

 大型艇の操縦席に座るフォーブスからは大きく損傷した改造商船が肉眼で確認できた。彼女はすぐにゼブラのCICにいるクリフォードに通信を送る。


「こちら調査班フォーブス大尉です。改造商船を確認しました。船名はヴェロニカ。船舶識別番号からロンバルディア船籍と確認。大型艇(アウル)のセンサーで確認できる範囲では船内にエネルギー反応なし。調査班及び宙兵隊は最下層デッキの破孔より進入します」


『了解した。調査班及び宙兵隊の船内調査を認める。アウルは万が一に備え、破孔付近で待機せよ。大尉、幸運を祈る』


了解しました、准将(アイアイサー)。これより調査を開始します」


 クリフォードの了解を受け、宙兵隊は大型艇の後部ハッチから宇宙空間に飛び出していく。


 最下層の破孔は縦十メートル、幅五メートルほど。船殻が衝撃でギザギザに裂かれており、中から漏れる非常灯の赤い光によって、巨大な怪物の口のような不気味さを感じさせる。

 ホーナーは部下に突入を命じた。


「宙兵隊、突入せよ」


 フル装備の宙兵隊員が次々と破孔に吸い込まれていく。

 ホーナーもそれに続き、破孔の中に入った。


 中は貨物室(カーゴルーム)になっており、人工重力が切れたため、ダミーの貨物が散乱している。


「各チームは罠の有無を確認しろ! 荷物に不用意に触れるなよ! ないとは思うが、ブービートラップが仕掛けられていないとも限らんからな!」


 三十分ほどで宙兵隊の調査が終わる。


「こちら宙兵隊ホーナー中尉。改造商船内の探査を実施。罠は確認できず。また生存者も発見できず。それどころか死体すらありませんでした。どうやら無人だったようです」


 その連絡を受け、フォーブスが船内に入っていく。


「私の班は予定通り船橋(ブリッジ)に向かう。各班は計画通りに情報収集を行え」


 一時間後、フォーブスたちは各システムから情報を回収した。


「こちら調査班フォーブス大尉です。改造商船ヴェロニカの調査を完了しました。現状では敵の手掛かりになる情報は発見できず。また、乗組員の存在を示すものも見つかりませんでした。完全な無人船であり、私物類も完璧に処分されていました。追加調査が必要でしたら、連絡願います」


 ヴェロニカを含め、タランタル隊の各艦は自分たちの存在を示すものはすべて小惑星帯に廃棄していた。そのため、私物はおろか、廃棄物処理システム内の汚物や空気すら廃棄し、フォーブスはその徹底ぶりに驚いていた。


『状況は理解した。現状では追加調査は不要。船体にビーコンを取り付けた後、帰還せよ。大尉、ご苦労だった』


了解しました、准将(アイアイサー)。これより帰還します」


 調査班は手掛かりを得られなかったことに落胆しながら、ゼブラ626に戻っていった。


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