表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

めでたしめでたし

「ジュール、あなた、海の魔女にそんなお願いをしてたの?」

事の経緯を聞いた私は呆然としていた。

「うん…その、こんなボクは嫌いかい?ダイオウイカのままの方が良かった?」

ジュールがおそるおそる尋ねてくる。

「ううん、そんなことないわ。」

私は首を横に振った。

人魚になったジュールはとても美しかった。

晴れた日の空のような青い瞳に、高い鼻、海中で波打つ金色の髪。

厚い胸板に割れた腹筋が、とても勇ましい。

ミケランジェロの彫った彫刻みたいだ。

腰から下は私と同じ魚の尾がついているけれど、私と違って、尾が太くて大きい。

「今のボク、とてもカッコいいだろう?君が、ボクのことを心から信頼して、抱きしめてくれたから……」

ジュールは自分の姿を見せつけるように、たくましい両腕を広げて、その場で1回転してみせた。

「うん、カッコいい!でも私、あなたがダイオウイカでも人魚でも構わないわ。どんな姿でも、あなたはあなたじゃない!」

私はジュールの手を取り、きゅっと握った。

「……そうかい。」

ジュールは照れくさそうな顔をした。

「ねえ、私たち、これからもずっと、ずーっと友達よ?」

「うん!」

ジュールが笑って応えてみせた。


ハンサムの笑顔はサマになるなあ。

他の人魚から嫉妬を買わないか、少し不安だわ。


後日、「新しい友達ができた」と人魚になったジュールを王宮に連れてきてみたら、父も姉も祖母も、みんなして歓迎してくれた。

このハンサムな人魚が、あの恐ろしいダイオウイカだったなんて、家族の誰ひとりとして、絶対信じないだろうな。


さらに後日、あの女性は結局、王子様との婚約を破棄して、別の国の王子様と結婚することが決まったそうだ。

ちょっぴり弱気だけど勉強家で誠実で優しい男性なのよ、と嬉しそうに語っていた。


王子様はあの後も、しばらくは私を探し続けていたらしいが、最近とうとう諦めて、別の国のお姫様と婚約したみたい。

今度は婚約破棄されないよう願うばかりだわ。

側室を持つなら持つで、せめて相手とよく話し合うくらいはして欲しいものね。


そして私は、家族や友人と海の底で、楽しい毎日を送っている。


最高のハッピーエンドだわ。

めでたしめでたし。






一方、王宮とは別の方向にある海底の洞窟の中。

そこには、海の魔女が住んでいた。

その海の魔女は、その特殊な魔力を利用して、未来予知ができるのだ。

岩のテーブルの上に置いた水晶に、近い未来を映すことができる。


魔女はふと、「男の人魚になりたい」と願ってきたダイオウイカの未来が気になって、彼の未来をのぞいてみた。


そこには、きらびやか王宮で結婚式を挙げる男の人魚と人魚のお姫様の姿があった。


「うまくいったようだね。よかったよかった」

魔女は、近いうちに訪れるダイオウイカの幸福な未来を、心の底から喜んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 思わず一気読みしてしまいました。 『人魚姫』というよりは『美女と野獣』の人魚版みたいでしたね。 二人ともお幸せに!(≧▽≦)
[良い点] おとぎ話がおとぎ話の雰囲気を壊さないアレンジで面白かった。シンデレラと白雪姫への転生は見たことあるけど人魚姫は初めてだったなぁ [気になる点] ダイオウイカにとってサメは餌。 まぁおとぎ…
2021/03/30 21:00 退会済み
管理
[一言] おとぎ話をネタで綺麗にまとまっていて良かったです( ̄▽ ̄) おとぎ話の登場人物はみんな頭がおかしいという意見は同意です。某こち亀で「シンデレラは美人だから成立する話だ!」と力説していたのを思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ