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動機のない殺人はありえない。

なんとなく書きました。

久しぶりなので感想等をいただけると訂正などしやすく助かります。

 「動機のない殺人はありえない。」

 そう言ったのはポワロだったか、昔読んだ本に書かれていたが、そうとも言い切れないと思う。

 理由なく、ただ息をするように殺すということは私の身近にあるものだった。

 初めて見た殺人は誰が起こして誰が死んだのかすらもう覚えてはいない。


 私の足元をはしゃいで通っていった子供だって例外ではない。


 (しかし動機とはどこからが動機となるんだろう…)


「すいませーーん!!」


「ボール取ってくださーい!」


 そう言われて足元を見ると野球ボールが転がっていた。


「はぁ…はぁ…ごめんなさい!」


(わざわざ走ってきたのか。歳はいくつくらいだ?日本人の年齢は分かりづらいからな…)


「はい。あとこれ、レディが汗まみれなのは見過ごせないからね。」


「え、あ、ありがとうございます!」


そう言って少女は頬を赤らめた。腐ってもやはり女ということなのだろう。渡したハンカチを大切そうに握る姿に笑そうになる。


「それじゃあね。」


「あ、あの!お兄さんお名前は??」


「『僕』は名乗るほどのものじゃないよ。」


 そう言って立ち去るこの女。彼女に名前は本当になかった。生まれた土地、その年齢すら本人は知らない。彼女にあるのはフリーの殺し屋という肩書きだけだった。


○○○○


(さて、今夜のターゲットは…)


「相葉」と書かれた表札を前に渡された写真と裏に書かれたターゲットの情報を確認する。


 「この家で間違い無いみたいだな。」


わざわざ、家に押し入る必要もないが、もしもの時のための確認として今夜は来ていた。


「きゃぁぁぁぁ!!!」


部屋の中から女性の悲鳴と花瓶の破られる音がした。


「先客か……」


今回のターゲットである男は某ジャーナリストとして、ある真理教に迫っていた。私自身は過去にこの男によってネタにされたという者からの依頼で来ていたわけだが、


(まさかダブルブッキングするとはね…)


ドアを開けると荒らされた部屋と壁には生々しい血の跡が付けられていた。


(悲鳴を聞いて逃げた…わけないか。)


背後から迫る男の顔面へスーツ越しに鉛玉をぶつけてやると男は倒れた。


部屋を探索しつつ犯人と思しき男を殺して行くと少女と大人の男女計3名の亡骸が見つかった。


(私としたことが先を越されるとは…まだまだかな?)


そう思い、帰ろうとした瞬間。ガタッと音がした。


古い家だとは思っていたが、床下に荷物置きがあったとは想定外だった。ドアを開けるとそこには昼に見かけた少女がボロボロになって縮こまりながら倒れていたのだ。


少女は声を殺し、怯えながら泣いていたのだろう。目元は赤く擦った跡が見える。


「ふむ。どうしたものか。」


「やめ…て………」


(やっぱり私はまだまだのようだ。)


振り返るとそこには死んだと思っていた少女が襲ってきたであろう男の拳銃を片手に起き上がっていた。


「レディ。貴女にそんな物騒な物は似合いませんよ?安らかな眠りのお手伝いでしたらお任せください?」


「なに…が。レディよ。妹には…くっ………手を出させないん…だから!!」


 ドラマや小説はよく読む。だからこそ、このセリフを現実に言う者がいるとは思わなかった。


(美しい姉妹愛ですね。)


「いや、見事です。素晴らしい。拍手を送らせてください。しかし、見たところ貴女のその力ではその銃を撃ってもまともに当てることは愚か、自身の身体をさらに傷つけるでしょう。」


荒い息のまま銃口を向けたまま。レディの目にはきっと私が悪魔にでも映っているのでしょうね。


(きっとこちら側で働けばそれなりの実績を残せるでしょうに。実に惜しい。)


長く喋らせ過ぎただろうか。少女は先ほど以上に起き上がっているのが辛そうだ。


「喋るのも辛いでしょう?さぁ、レディ?安らかな眠りに…。美しいまま終わらせて差し上げましょう。」


「やめ…て……やだ……」


可哀想に。痛いでしょう。苦しいでしょう。

レディにそんな思いをさせるなんて私は罪な人間だ。


少女は近づこうとする私の足元に数発の弾丸を撃ち込み同時に自身の肩が外れたのだろう。

悲鳴を上げた。


「ほら、言わんこっちゃない。」


「いも…と…たす…け…て……」


「いい加減寝てくれよ。」


「いや…いや……いや……」


(ちっ…いい加減…………。あぁ。いけないな。)


「わかりました。では貴女の年齢は?」


「じゅ…14」


「では妹さんは?」


「6…」


「なるほど。とてもキリのいい離れ方をしていましたね。では14年。貴女の妹を生かしておいてあげましょう。6と14合わせれば20です。この国では20歳になれば大人として扱われるんですよね?」


少女からの返事はない。というよりそんな力もないのだろう。


「yesなら一回。noなら0回指でもいいです。動かしてくださいな。」


すると少女は右の中指を一度動かした。

契約は成立。


「では妹さんはお任せください。貴女も安らかに眠ってもらいますが、ご安心を」


物音は立てず、少女の血塗られた顔を綺麗に拭き眠らせた。


(さて、なぜ私はこんなくだらない約束をしなければならなかったのですかね。まぁ、約束は守りますが。)


「さぁ、レディ。お姉様にご挨拶を。そして、新しい世界へようこそ。」


眠ったままの少女に麻酔を嗅がせたあと抱きかかえ、家に火を放ちその場をあとにした。


「ゆっくりお休み。小さなレディ。」








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