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「あーお腹すいた」
「んじゃ早く帰れば?」
「違うよ宗方さん! 今日は3人で夕飯でしょ」
斉藤の提案で学校帰りにどこかで3人で夕飯を食べることになった。
外食か…… 出費だなぁ、あまり無駄金使わないように節約してるんだけど。
「ほら見なさいよ、世那君だってあんまり乗り気じゃなさそう」
「うえッ…… やっぱり嫌だった新庄君?」
斉藤が申し訳なさそうに俺にそう聞いてきたけど金が勿体ないって言っていいのかな?
「お金もったいなぁーい! 俺無駄金使いたくなぁーい!」
「「え?」」
「世那君の今の心境を私が言ってあげたの。 合ってるでしょ?」
「そ、そうなの?」
「…… うん、まぁ………」
学校周辺はクソ田舎だし青葉と斉藤いるから流石にバイクじゃいけないしバスを使って街の方まで来たのだ。
「わ、私出すよお金! 全然大丈夫!! ね!? 新庄君」
「お、おう…… それは助かる」
「ちょっと待ってよ、私あんたに無理矢理誘われたんだけどまさか世那君だけに奢るつもりじゃないでしょうね?」
「う…… そんなことないよ全然平気、大丈夫」
大丈夫なのか? 最後は消え入りそうな声になっていたけど。
「やっぱ出そうか俺? ないわけじゃあないし」
「ちッ、ほら出たよ世那君の甘やかし〜」
「いや別に甘やかしってわけじゃないしお前も誘いに乗ったわけなんだから出せって」
「だったら最初から渋った顔するなッ!」
「ま、まあまあ、私気にしてないし」
余計なことを匂わせてしまって斉藤に気を遣わせてしまった。 いやまぁどうでもいいか、斉藤も気にしてないって言ってるし。
「ねぇ、どこで食べたい?」
「オシャレで高くて美味しいとこ」
「お前奢られる気で言ってるだろ?」
「あ、あはは…… じゃあそこのファミレスでいいね?」
斉藤は青葉に選ばせたら本当に高いところに行きそうだと思ったのか手前に見えたファミレスを指差した。
「はいはい、そんなとこだろうと思った」
「どこでもいいだろ」
「じゃあ決まったことだし入ろう、ね?」
ファミレスか、施設の奴らと一回だけ行ったことあったなぁ。
中に入ると窓側の奥のテーブルにしようということで座ろうとすると青葉と斉藤の体がぶつかる。
「あ、ごめん宗方さん」
「気を付けなさいよウドの大木」
斉藤の方が青葉よりちょっと大きいけどウドの大木はないだろうにと思っていると2人は俺の席側でまだ立ってる。
「何してんだ?」
「何してんのよ?」
「む、宗方さんこそ」
「あんたがそこから動かないから座れないじゃない」
「宗方さんがそっちに行くのかなと思って」
「はぁ!? あんたがそっちに行けばいいでしょ?」
まさかこいつら俺の隣に行こうとして言い争ってるのか?! なんてバカらしい…… ていうより見ていて恥ずかしくなってくる。
「いい加減にしなさいよ? ノコノコここまでついて来てちゃっかりしてんじゃないわよ!」
「わ、私奢るから! だから今日は私がリードしようかなって」
「誰も頼んじゃいないわよ恩着せがましい」
「お前らがいい加減にしろよ、2人とも向かいに並んで座ればいいだろ」
お前らが騒ぐから他の客がチラチラこっちを見てるんだよ!
「あッ…… そうだ宗方さん」
「は?」
奥の席は広いから何も向かいに座らずに俺を真ん中にその隣に青葉と斉藤が座ればいいという結果になった。
「え、えへへ…… これなら大丈夫だよね?」
「何が大丈夫よ? そこまでしたいの?」
「俺を挟んで言い合いしないでくれるか?」
「そもそも世那君が二股するのがいけないんでしょ!!」
「声を抑えろ!」
二股と聞いて他の客が俺達を見る。 というか俺を……
「何か頼もう? ほらメニュー」
「ふん」
「はぁ……」
斉藤に渡されたメニューから適当な物を選び青葉と斉藤も決まったようなので注文した。
「それにしてもなんなのよ? あんたから夕飯の誘いなんて何か良からぬことでも企んでんじゃないでしょうね?」
「お前がそれをよく言えるな」
「な、何にも企んでなんかいないよッ、ただこの前新庄君と宗方さんが前田君といざこざあって私何も出来なかったなって思って……」
ああ、そのことか。 斉藤は俺が行くんだったら自分もってなかなか引き下がらなかったしな。
「あんたが来たって前の二の舞になるだけよ。 てかよく私と仲良くしたいなんて思うわね、もう前のこと忘れたの?」
「いや別に…… 忘れるわけないよ」
そりゃ斉藤からしたらトラウマレベルに怖い思いしたからな。
「でも私宗方さんのことよく知らなかったし宗方さんも私のことよく知らないしもしかしたら仲良くなれるかもしれないじゃん?」
あそこまでやられておいてこいつと仲良くとか言える時点で斉藤も斉藤で懲りない奴というかお人好し過ぎるというか……
「何にしたってあんたは私にとって邪魔でしかないんだからね。 世那君があんたと仲良くしろなんて泣き付かなきゃ誰があんたなんかと」
「泣き付いてはいないだろ」
「うん。 ありがとう新庄君、宗方さん」
「うわ……」
青葉はちょくちょく斉藤に噛み付きながらもその日は平和に3人で夕飯を食べて帰った。