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「すげぇドカ雪……」

「ね、今日結構降るね」



学校の窓から外を見ると辺り一面雪だらけ、朝は少し降って来たなと思いきやそれから2時間くらいでもう積もってる。



「こりゃバイク運転自信ないなぁ」

「そ、そうだよ新庄君! 危ないからダメだよ」



田舎ってこんなに雪降るんだな、俺が施設にいた時そんな都会の方じゃなかったけどここまで降ることはなかった。



「新庄君また怪我したら笑えないもんねぇ」

「舞、怪我したら笑えるわけないでしょ」

「新庄君怪我結構してたもんね、ボコボコになったり死に掛けたりとか」

「ふん」

「ありゃりゃ」



あの3バカトリオの先輩と殴り合ったりバイクで事故ったりほんの少し前は本当にそうだったな、やっと怪我も癒えたとこでまたバイクでこけて怪我なんてしたら目も当てられない。



俺は席に戻ってボーッと外の方を見ていると……



「こんなに降るのそんなに珍しい?」

「え? いつの間に座ってたんだ?」

「ええ〜? 窓の方見てたのに見てなかったの? 新庄君が席に戻ってすぐに私らも席に戻って来たのに」



斉藤は少しム〜ッとほっぺを膨らましてそう言った。



「ああ、ただ単にもう冬になったかって思ってさ。 施設からここのド田舎の高校来てわけわかんねぇ奴に絡まれたりボコられたり事故ったりしててあっという間だったなって」

「わ、わけわかんねぇ奴って宗方さん?」

「言葉の綾だよ、まぁそうなんだけどさ」

「…… もうすぐ冬休みだね」

「は? まぁそうだな」



突然話がぶった切られ冬休みとか言い出すからだからなんだ?と思っていると斉藤が少しだけソワソワしていた。



「2週間ちょっとだけど長いなぁ」

「そうか? 学校がある時は来るけど休みってなら出来るだけ多い方がいいんじゃねぇの?」

「ま、まぁ普通はそうだけど…… 遠回しじゃダメか」

「え? 何が?」



斉藤が「はぁー……」と溜め息を吐いて口を開く。



「クリスマスとか大晦日の時一緒にいたいな……」

「は?」



俺がここでそんなリア充みたいな展開になるとは思わなかった。 クリスマスとか大晦日は今まで施設でみんなで祝ってたし誰かと過ごすなんてのは一人暮らしになったからにはもうないだろうと思っていたのだけれど。



「わ、私友達とかとは祝ったことあるけど、す、好きな人とはまだ一度もなくて」

「俺だってないよ。 何していいかもわかんないし俺と過ごしてもつまらなかったら意味ないし」

「つまらくないし意味ないわけないよ」



斉藤が少し大きい声で言ったのでみんなの視線がこっちに注がれるのを見て斉藤はコホンと咳払いをして静かに話す。



「だって私毎日新庄君とお話してて楽しいしつまらないって思ったことなんて一度もないしその上クリスマスなんて一緒に過ごせたらどうしようなんて考えてるし、えと、その…… 」

「わかったわかった、ごめん。 俺も斉藤と話してて悪い気なんかないし俺がこう気を許して喋るのも斉藤と青葉くらいしかいないし」

「じゃ、じゃあクリスマス一緒に!」

「ああ、そうしようか」



そう言うと斉藤は目の前で肩がプルプルと震えて小さくガッツポーズをして「やったやった!」と言って嬉しそうだった。



つーか斉藤のこの主張さっきから青葉が見てるんだけど大丈夫なのかな? 



「へぇー、あいつとクリスマスするんだ?」

「やっぱわかったか」

「そんなことだろうと思った」

「あれ、怒ってないの?」



もっとこう激しい責め文句喰らうかと思ってたんだけど。



「怒ってないと言えば嘘になるけど私が怒り狂ってあいつをまたボコって前みたいになったら嫌だし。 それにクリスマスは2日あるんだし残り1日は私に付き合ってもらうわ、それでいいわね?」



青葉が人差し指を俺の胸に当ててそう言った。 これは断れないな…… こいつがこんな平和的な提案するなんてちょっと意外だから断る気もないけど。



「ああ、わかった」

「ああ、わかったって。 私みたいな美人がクリスマス誘ってあげてるんだからそこはありがとうございますでしょー?」

「ええと、ありがとな」

「…… なーんかしっくりこないけどまぁいいわ」






その日の夜眠ると夢を見た。 前にあったことをボーッと上から眺めているから夢だと気付く。



よりによってこの時かよ…… 青葉と斉藤が大喧嘩した日か。



「とどめ……」

「いい加減にしろ宗方!」

「世那君邪魔ッ!!」

「どかねぇぞ!? それともこのまま俺を道連れに斉藤をやるか?」

「ず、ずるいよそいつ!! 世那君にそこまで思ってもらうなんて、私にはそんな怖い目するくせに」

「お前がこんなこと今すぐやめればいいだけだ!」

「し…… 新庄君」

「斉藤、大丈夫…… じゃないよな」

「え、へへ…… 凄い顔になっちゃったかな? ごめん」

「お前が謝ることじゃないだろ」

「…… 新庄君王子様みたい」



それからグニャリと場面が歪んで別の場面に移り変わる。 今度は俺が事故った時か。




「てっきり…… いい気味なんだと」

「…… 私もあんたのことに失望してそう思うと思ってたんだけど。 バカじゃないの世那君は! 今そんなこと言うとこ!?」

「はは、は…… お前にこうされるはずだったけど、こんなしっぺ返しくるなんてな、ごめん」

「私は出来なかった…… 凄く許せなかったのに今だってこんなに悲しい気持ちなのに出来るはずない! もう世那君は黙ってて」

「青葉……」

「こんな時だけ名前で呼ばないでよ! やっと呼んでくれたと思ったら死に掛けなんて冗談じゃないわ、最後のお別れみたいじゃない」

「なあ、斉藤と仲良くしてやってくれないか?」

「今あいつのことなんて考えたくないッ! どうしてこんな時に……」

「こんな時だからだ、伝えられなくなったら後悔しそうだからさ」

「仲良くなんてなれるはずない、見たでしょ? 私あいつボコボコにした」

「ああ」

「だったらわかるでしょ、いくらあいつがバカでも無理だって」

「斉藤はあの怪我お前にやられたなんて病院でも両親にも言ってないんだ」

「え? …… バカじゃないの」

「だよな、バカみたいに優しい奴だ。 だからきっとお前でも仲良くなれる」

「青葉……」

「世那君!? 世那君ッ!!」

「あ、お…… は」

「わかった、わかったから死なないで!! しっかりして世那君!!」






そしてそこで目を覚ました。 



なんでこんな夢を見たんだ? まぁ凄く印象に残ってるからかな……



俺は青葉と斉藤が好きだ、好きだって言うのはどっちかと付き合いたいからとかそういうのは抜きで好きだ。 青葉自身が好きで斉藤自身が好き、それでどっちかを選んで欲しいとかってそうじゃないとダメなのか?



そんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡った。



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