表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAESTRO-K!  作者: RU
S1:赤いビルヂングと白い幽霊
8/70

5.イケメン王子

「あの、すみません」


 不意に声を掛けられて、俺は何も考えずに頭を上げながら、後方に振り返ろうとして、目の前に星が飛ぶ。


「ってぇ〜…」


 うずくまって配線作業をしているうちに、自分が机の下に潜り込んでいることをうっかり忘れ、後頭部をイヤってほど机にぶつけたのだ。


「すみません、急に声掛けちゃって。大丈夫ですか?」


 目を開けるとイマドキのイケメン俳優みたいな若い男が、心配そうに俺を覗き込んでいる。


「ああ、ええ、ダイジョーブ…。ええっと、今日はカフェは休みですよ」


 どう見てもロックのアナログレコード目当ての客…って感じはしなかったので、俺はそう答えた。

 MAESTRO神楽坂を営業していても、マエストロ神楽坂を閉めているのは毎度のことで、カフェ目当ての客が()るのも珍しいことではない。


「いえ、(もう)(わけ)無いけど客じゃないんです。道を教えてもらえると助かるんですが」


 イケメンは立ち上がろうとする俺に手を貸しながら、用件を述べた。

 口調は礼儀正しく、爽やかな笑顔が少女マンガの王子様みたいにピタッとハマっていて、まさに白い歯がキラリンと光りそうだ。

 イケメン王子は、ポケットからきちんと折りたたまれたメモを取り出すと、俺に差し出してくる。


「スマホの地図アプリを見ながら来たんですが、なんだか私道みたいなほうに案内されちゃって…」

「この辺は路地が入り組んでますから、地図アプリもあんまりアテにはならないんですよ」


 差し出されたメモの住所を見たら、イケメンの持っているスマホの地図を見るまでもなく、俺には場所が判った。


「ああ、このマンションなら、この道であってます。このまま登って行って大丈夫ですよ」

「ええっ? だってこの先って、なんかアパート? の私道みたいでしたけど?」

「あれ、公道なんで。そのまま進むと、マンションの裏側に出ますよ」

「裏? じゃあ俺、やっぱり道を間違えたのかな? メトロの東西線で行けと言われたんですが…」

「東西線でこの道なら、あのマンションの最短ルートです。初めてのヒトは戸惑うような、ほっそい路地ですけどね」

「そうですか。分かりました、ご丁寧にありがとうございます」


 イケメン王子は礼儀正しく俺に会釈して、急勾配の坂道をキビキビとした軽快な足取りで登って行った。

 なんとなくどこかで見知った態度に似てる気もしたけど、俺にはあんなイケメン王子の知り合いは居ない。

 ぶつけた頭を擦りながら、なんとなく時計を見たらもう昼を過ぎていた。

 作業に集中してると、時間が経つのが早い。

 時間を認識したら腹が減っているような気がしてきたので、俺はその場を適当に片付けて、昼メシを食うことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ