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MAESTRO-K!  作者: RU
S1:赤いビルヂングと白い幽霊
6/70

4.二つの店の関係(1)

 コグマのセリフ通り、シノさん不在ではマエストロ神楽坂は休業だし、本業のMAESTRO神楽坂には滅多に客など来ない。

 というか、MAESTRO神楽坂は現状、ネットでの取引のほうが主力になっている。

 ここしばらくはアナログレコードが再注目なんて言われているけど、シノさんが扱っているのは洋楽だから、そういう意味ではムーブと言うかブームの蚊帳の外って感じだ。

 だから実店舗に客が()るなんて滅多にない。

 今日は作業をしている時にチャチャを入れてくるシノさんも居ないことだし、俺は以前からちょっと考えていた、試聴用コーナーの手入れをすることにした。


 MAESTRO神楽坂は、併設のカフェ "マエストロ神楽坂" でゆっくり試聴をしながら、美味しいお茶と軽食が楽しめます! ってのが、店の売り文句の一つなのだが。

 どう見たって、カフェのためのスペースのほうが広いし、使われている食器は高そうなアンティークだし、カフェ側に置かれている家具もやっぱり高級だし、主力はカフェでしょ? って佇まいをしている。

 と言うのも、実はカフェの(ほう)にはかなり頼りがいのあるパトロンが付いているからだ。

 だが俺はそのパトロンってのを見たことは無いし、ぶっちゃけシノさんから「出資者がいる」と聞かされているだけだ。

 ビルのリフォームをした時、シノさんは一階で真面目に店をやる気なんて、1%ぐらいしかなかったと思う。

 でもその謎の出資者と知り合ってから、閑散としていたフロアが、あっという間におしゃれカフェに変貌していた。

 その手腕にしろ、シノさんに対する肩入れの仕方にしろ、色々微妙な感じがしたので、俺はその謎の出資者を、とりあえず "エセ紫の薔薇のヒト" と呼んでいる。


 どんだけ財力があるのかはともかく、そのブッ太い(ぶっとい)パトロンの力によって、カフェはすっかり素敵になったが、一方で同じ空間に共存しているMAESTRO神楽坂の(ほう)は見劣りが甚だしくなった。

 エセ紫の薔薇のヒトは、アナログレコードにはなんの興味も湧かなかったらしく、こっちには全く出資をしてくれなかったからだ。

 マエストロ神楽坂に押しやられたMAESTRO神楽坂は、現在店の奥の(ほう)に、アナログレコードを飾ることが出来る収納棚と、事務用品通販で購入したちゃちなパーテーションで区切りをしただけの試聴コーナーがあるだけだ。

 飾り棚は、シノさんがどこぞから調達した、いわゆるレコード屋のレコードラックって格好をしている。

 上の(ほう)にアルバムジャケットをカッコ良くディスプレイ出来て、中段と下段に収納出来るようになってるやつだ。

 シノさんはかなり自分勝手な性格をしているけど、それを補って余りあるコミュニケーション能力の持ち主なので、商店街の上層部とか地元の顔役なんかにも、なかなか可愛がられている。

 俺はコミュ障が固まって出来ているような人間なので、それらシノさんの知り合いのネットワークとは全く疎遠なのだが、エセ紫の薔薇のヒトから受けた援助…以外の家具類は、そういう伝手から貰ったりしているらしい。

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