[第一章]#2 出会い頭に一発
俺の立てた作戦はこうだった。
――出会い頭の一発。
玄関を開いて誘導し、入り込んできたところで一気に叩くというものだった。
洋館は構造を把握しきれていない部分が多く、また、館内の内側にある中庭も含めると様々な移動経路が予想できる。
また、バリケードなどで封鎖するにも限界があることから、侵入経路を絞りつつ、化け物が現れた瞬間に一気に叩く。
俺の他に、剣や斧といった近接的な武器を持つ甲斐田と和久津を前線に用意する。
さらに、女子生徒の中でも比較的落ち着いている委員長の愛山は、弓を持っていることから俺のすぐ後ろに配置し、それ以外の生徒には応接間側で控えてもらった。
狙うべきポイントは、奴のデカイ口だ。
奴が獲物を狙おうと大きく口を開けた瞬間を狙い弓を打ち込み、剣と斧で頭を潰す。
どんな生態系か知らないが、身体の内部から硬い生物ではなさそうではあるからだった。
では、どうやって口を開けさせるのか。
それはもちろん、俺が、最も手前で、囮になる。
俺のスキルは指揮系統に寄ってはいるものの、直接的に攻撃を行える種類のものではない。
ただ、普通の人間なら怯むだろうその瞬間ですら、俺のスキルによって生徒たちは動き、躊躇うことなく攻撃を繰り広げられる。
勝負は一回きり。
俺は、変わってみせる。
何ものでもなく、生徒たちからも尊敬もされるはずのない人間だった俺が、生まれ変われるチャンスなんだ。
失敗は許されない。
「委員長。大丈夫か?」
「……はい」
「甲斐田、和久津も、俺の指示を聞けばいいからな」
「はい! 先生」
「わ、わかってます……」
扉を半分開いてこちらを見やる生徒達も、俺に縋るような目線を向けている。
「もうすぐ10分……気合い入れるぞ!」
瞬間。
玄関へと続く森の奥からダダダダダっというものすごい勢いでこちらへと走ってくるような音が聞こえた。
「……くるぞっ!」