[序章]#4 クエストマスター
まるでYoutuberのような挨拶を始める、見知らぬ声。
クエスト、マスターだって?
【みなさんはこれから、あるクエストに参加することになりました!
そのクエストというのがこちら! ドン!
「開かずの洋館」からの脱出〜!
はーい、というわけでね、この洋館はたった今から「脱出不可能」の状態になりました!
そんな「開かずの洋館」の謎を解き、みなさんには無事に脱出をしてもらいたいと思います〜。
ただね、普通に謎解きをしてもしょうがないっていうことで、今から10分後、先ほどみなさんが遭遇したような化け物。を館の中に招き入れようと思います!
みなさんは、化け物を退治するもよし、閉じ込めるもよし、うまく対処しながら、この館からの脱出を目指してください〜!】
「何!? 誰だっていうの!?」
委員長が叫ぶ。
「さっきみたいな……化け物に、また?」
長嶺が焦点の合わない目で震える。
【混乱する気持ちはわかります。でもでも、みなさんには対抗するための手段が用意されています〜! それがこちら! ドン!
必殺スキルです〜! 拍手!】
「スキルって……ゲームかよ」
オタクの和久津が立ち上がる。
【スキルはそれぞれの特性に応じて、それぞれのタイミングで発動できるようになりますので、楽しみにしていてくださいね!
それじゃ、早速ですが始めていきましょう!
クエストー…スタート!】
「え? あ、ふ、服が?」
クエストマスターと名乗る男の掛け声と共に、この場に残る12人の衣服がそれまでの制服から変わり、まるでゲームのような、西洋ファンタジー感のある服へと変わった。
よくよく見ると、一部制服の名残もあるようだが、人によっては武器のようなものまでついている。
「今の、一体……?」
「ちょっと待てよ!」
動揺する女装家の湊、そして柔道部の甲斐田は玄関の扉の方へと走って向かう。
「……くそ!! 本当に開かなくなってやがる!!」
そして遠くからそう告げた。
「さっきの話が本当なら、ヤバいよ、さっきの、アイツが、来ちゃうって」
「どうしよう……ルイくん」
「え? でも、どうしようって言われても……! わかんないよ!」
動揺が波紋のように広がっていく。
混乱が、手に取るようにわかる。
言葉を発していないのは、僕と、西牧くらいだ。
このままじゃヤバい。そう思った時だった。
「みんな落ち着け!」
担任の春日居が、さっきまでに死にかけていた時とは全くの別人のように、生気のある大声で場を諌める。
「さっきの奴が誰かはわからない。でもさっきの言葉は本当だ」
「え? 先生……それって?」
担任は今までに見たことのないような笑顔を浮かべてこう言った。
「――先生な、能力……スキルに目覚めた」