[第二章]#1 クラス委員長・愛山
私、愛山あいな・16歳はクラス委員長をしている。
クラス委員長というと、真面目で堅物というイメージがあるだろうが、私はまさしくそのタイプだ。外見はメガネで三つ編みとか、そこまでステレオタイプなわけではないが、今時の普通の女子高校生。可愛くもなくブスでもない。中の中。まさしくフツーといった感じ。
他人からの評価はこう。
――人が嫌がることを率先してやる子です。
通信簿にはいつも似たような賛辞が書き連ねられている。
ただ、私は人のためになることに悦びを感じているわけでも何でもない。
打算によって作られた自分のイメージを、貫くための嘘の連続。
きっかけは些細なことだったと思う。
4歳年の離れた妹がいた私だが、ある時二人で遊んでいた時に大事な花瓶を割ってしまった。
妹はその時まだ2歳。
まともに会話ができる年齢ではない。
両親が帰ってくると、今まで見たことのないような形相へと変わり、私に向かって掴みかかってきた。
「誰がやったの!」
私はいつも温厚な母のその怒号が、表情が、力が怖く、こういった。
「妹が! 私がお手洗いに行っている時に、大きな音がして! そしたら」
母は掴んでいた肩を離すと、やり場のない怒りをぶつけるように妹を担ぎ上げ。
「2度とやったらいけません!!!2度とやったらいけません!!!わかった!!!?」
と何度も妹のお尻を叩きつけた。
妹は何が起こったのかわからないという表情で、大声で泣き叫ぶ。
キンキンと耳に煩い。私はその不快感と、罪悪感とで気持ちの整理がつかなくなっていた。
しばらくして、母がこちらを見やると、いつもよりも数倍優しいような笑顔でこう言う。
「あいなちゃんはお利口さんだから、何かあったら止めてくれる?」
「……うん」
私はお利口さん。
私はお利口さん。
呪いのようなその言葉は、私の人生を大きく狂わせた。
私はその日から、怒られない子へと変わった。
何か不手際があると、すぐに他人のせいにする。
それもできない時には、体調のせい、病気のせい。
怒られないために、打算的に、言い訳をする人生になった。
そうしてできたお利口さんのレッテル。
母はいつも口癖のように言う。
「あいなちゃんはお利口さんねえ」
大人に近づくにつれて、その言葉が重く、肩にのしかかるように感じていた。
そして、その呪いは、こんな世界に来てもなお、私を縛り付けていたのだった。
――私は。
能力に気がついていることを、打ち明けなかった。
その能力は、私にとっては理不尽な能力だったからにすぎない。




