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第6話.エリザベート(真相)

ヒロイン回です。

第6話.エリザベート(真相)


「ヨイチさん!ごめんだけど、医務室使っていい!?」


ヌラリカさんがペタペタと走ってきた。

先ほど、小型の宇宙船と接触しそうになったけど、無事回避したということはヴィスから聞いたばかりだが…。

もしかして、遭難してる宇宙船で怪我人を発見したのかもしれない。

まぁ、この医務室はもともと俺のじゃないし、断る理由はない。


「ええ、勿論使ってください。ここはヌラリカさんの船なんだから許可とかはいらないでしょ?」

「そうなんだけどさ、ほら、なんか悪いかなって…」


ヌラリカさん、見た目はホラーだけど、良い奴だな…。


「この船って空き部屋はいっぱいあるから、その中の一つをヨイチさん専用にするから今はここ使わせてもらうね」

「ヌラちゃん~この子、重いよぉ~」

「力仕事はヴィスっち担当でしょ!手がいっぱいあるんだから!」

「これ手じゃないよぉ~足だよぉ~」

「どっちでもいいよ!」


漫才をしながら、ヴィスがぐったりしている人を運んでくる。

え!?人だ!!


「え?そ、その人は?」

「あぁ~ヨイチとおんなじタイプの宇宙人だから親近感は沸くかもしれないねぇ」


完全に見た目は地球人なのに、この人も宇宙人なんだ…


「この子はエリザベート。ボクたちと同じ監獄惑星に収容されていた宇宙犯罪者だよ」

「こ、この人も…」

「うん。A級惑星ゴルマッチヨ星の犯罪者で、ボクたちを見て気絶しちゃったんだ。失礼な奴だよね」


いや、ごめん。普通ヌラリカさんやヴィスを突然見たら気絶するわ。


「とりあえずベットに寝かせてっと…」

「ヨイチが使ってたベットはダメだからね!匂いがうつっちゃう!」

「うわぁ…」「うわぁ…」


ヴィスの変態発言に思わずヌラリカさんと同じリアクションをしてしまった。

と、とりあえず変態は放っておいて、俺がいた隣のベットに寝かされるエリザベート。

その寝顔を見たとき、俺はものすごい衝撃を受けた。


ちょ、超美人さんじゃないか…!


金髪のストレートでサラサラと柔らかそうな髪。

前髪は眉毛にかかるか、かからないかの所で切りそろえられており、若干の幼さを感じさせる。

長くきれいなまつ毛に、瞳は少したれ目気味でお淑やかそうな印象を与える。

すっと筋の通った鼻に、プルプルとした艶のある柔らかそうな唇。

これは、宇宙服かな。

青いロングのワンピースを着ている。

スタイルも服を着ているのではっきりとはわからないがスリムな感じ。

指の形や爪など、手を見てもそのスタイルの良さが予想できてしまう。

まるで西洋のおとぎ話から抜け出してきたような、お姫様のような雰囲気。

今までに地球で出会ってきた、または見てきたアイドルとか可愛い子とはレベルが違う。

俺の中のショートカット娘最強説がグラつくレベルでヤバイ。

あぁ、いかん。なんだかドキドキしてきた。

…待てよ?

エリザベートさんの種族のように見た目が地球人と変わらない宇宙人もいるってことか。

って事は…彼女をつくる事も不可能ではないのでは!?

そうだよ、まだ希望はあるじゃん!

魔法使いにならずに済む、俺救済ルートが存在するはず!

よし!よおし!希望が湧いてきた!!


「とりあえず、看病しないとねぇ」


お、そうだな。


「ごめん、ヨイチさん。こんなことをお願いするのもなんだけど看病お願いしてもいいかな?」

「お、俺ですか?」


ヌラリカさんがとんでもない事をさらりとお願いしてくる。

いや、こんな美女の看病ができるなら役得だけど…。

手を触るくらい…いやいや何を考えてるんだ俺は。

28年間彼女が出来なかったヘタレをなめるなよ。

弱った女性にそんな不埒な真似をしようなんて、最低だぞ、俺!

前の職場でも失敗して落ち込んでいる後輩の女の子を励まして元気づけた俺!

当然弱っているところにつけこむような真似はしなかった。

というか励ますのが下手って笑われた。

その結果、イケメン先輩社員とくっついて寿退社しやがった。へこむ。

ま。まぁ好みじゃなかったからいいんだけどねっ!


「あ~ヨイチが適任かもねぇ。この子、私たちが犯罪者ってこと知ってたし、目を覚ましても怯えちゃうかもだからぁ」

「そういうわけなんだ。頭にタオルを冷えたタオルをかけておくだけでいいから」


そ、それくらいなら俺でもできるか。

よし、頑張ろう。


それから…。







彼女が目を覚まして、軽く挨拶を交わして部屋から出ようとしたところで急に変なことを聞かれた。


「私の、この醜い姿を見て…ヨイチ君…は何も思わないんですか?」


「…え??」


ん?醜い???誰が?どこが??

エリザベートさんは何を言っているんだ?

なんか不安そうに伏し目がちにしている姿ですら美しい。


「え~っと…よくわかんないですけど、俺はエリザベートさんのことを醜いとは思いませんよ」


とりあえず何も考えずに答える。

と、急にエリザベートさんはこちらをまっすぐに見つめてくる。

その眼もとにはうっすら涙が…。


「下手な励ましは止めてください。分かってるんです、私が醜く不気味な姿をしていることくらいは…同情なんてやめてください!」


オゥ、下手なこと言ってしまったらしい。

エリザベートさんはその見た目にコンプレックスを感じているのか…。

俺には解らない問題があるのだろうか。

はっと我に返ったように、再び俯いてしまうエリザベートさん。


「ゴ、ゴメンなさい。看病してくれたヨイチ君に酷いことを言ってしまって…」

「こ、こちらこそ君の気持も考えずに…でも、さっきのは本当にそう思ったから…」

「ちょっと…一人にしてくれませんか?」

「うん…何かあったらすぐに呼んでね」


ガチャ


足早に医務室から出る。

外にはヴィスとヌラリカがいた。俺を待っていてくれたのだろう。


「ゴメン、ヨイチさん、ボクたち盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど」

「ヨイチの身が心配だったからぁ」


…アレ?ヴィスも実はいいやつなのか?変態だけど。

恐ろしいものでこの環境に慣れてきた自分がいる。

人間の適応力ってすごいな。


「エリザベートさん…なんか自分の事を醜いって言ってた」

「あぁ…」


ヌラリカさんが俯いた。何か事情を知っているのかな。


「何か知ってるんですか?」

「ボクもニュースで見て知ったくらいなんだけど、、あの子の星ではその見た目からすごい忌み嫌われていたみたいなんだ。

それで同族から嫌われ引き籠るようになって、ついに犯罪に手を染めたって…」

「あぁ~そのニュース何か知ってるぅ。ゴルマッチヨ星歴始まって以来の筋肉の少ない子でしょ?」









…は?

筋肉??


「ゴルマッチヨ星人はね、筋肉を信仰している種族で生まれた時から筋骨隆々の生物なんだよ。

人の美しさは筋肉の美しさ。筋骨隆々でないものは人にあらず。そういう風潮の星なんだ」

「そんな中でねぇ、筋肉名門のアンデルフィア家に筋肉の少ない子が産まれたことで当時はすごい騒ぎになったんだよぉ」

「だから筋肉のない子はそれこそ迫害対象だったんだ。ノーマッチョノーライフ、という諺もあるくらいだから」


あぁ、宇宙ってやっぱ訳がわからないな。

え?てことは何?

周りは筋骨隆々のマッチョどもばっかりで、そこまで筋肉のない自分は貧弱でみすぼらしい醜い姿だと思うようになった、と。

さらにその星の環境のせいで虐められてきて、ついには引き籠って犯罪者に…。


あんなに綺麗な人が?

なんだろう、この心の底のほうで燻る感情は。

前職の時、お客さんに突然「お前の態度が気に入らないから、これを半額にしろ」と言われた感じ。

はぁ?何言ってんだ?この馬鹿、無茶苦茶じゃねーか。といいたくなる感情。

あぁ、そうだ、理不尽に対する怒りだ。

あの頃は毎日こんな怒りをずっとため込んできた。

なんで仕事を辞めた後もこんな想いをしているのだろう。

なんだか腹が立ってきたぞ。

もう仕事しているわけでもないのでこの怒りをためる必要はないのでは?

ここは地球じゃない、俺の今までの常識が通用しない大宇宙だ。

ちょっとくらい我がままに、心のままに行動しても罰は当たるまい。

そう考えると、体は勝手に動いた。

先ほど一人にしてって言われたばかりなのに再び医務室のドアを開ける。


「エリザベートさん!」

「はい、ゴメンなさい!」


ベットかは半身を起こしていたエリザベートさんはビクっとしてこちらを向いて固まる。


「俺の姿を見てください!」

「…え?」

「俺は筋骨隆々のマッチョマンですか!?」

「いえ…普通だと思いますけど…」

「じゃあ、俺は貴方から見て醜く不気味な姿ですか?」

「…いえ、醜くも不気味でもありません…」


やっぱり思った通りだ。

エリザベートさんが最初、俺を見たときに見せた反応。

タオルを取り換えるときにすぐ近くに行ったのに、この子は俺を怖がる素振りはなかった。

つまり、普通の人として見てくれていた。


「筋肉が無くても醜いとは思わないんですね。ノーマッチョノーライフなんですよね?」

「それは…私はゴルマッチヨ星人で、ヨイチ君は異星人だから…」

「俺からしたらゴルマッチヨ星人であるとか筋肉があるとかないとか関係ないです!エリザベートさんはエリザベートさんです!」


俺がそう言うとエリザベートさんは俯いてしまった。

その美しい髪に隠されて表情は読み取れない。

だが俺はそのまま、お構いなしに言葉を続ける。


「例え、ゴルマッチヨ星人の人々が何て言おうと貴方はと、とても綺麗で素敵で…その、何ていうか…」


いかん、俺は何を口走っているのだろう。言いたいことがまとまらない。

これで、彼女の傷が癒えるとは思えない。

ただ、何かを考える切っ掛けになってくれれば…。


「と、とにかく、さっきも言いましたけど、俺はエリザベートさんの事を醜いとは絶対に思いません!」


「エリーと呼んでください」

「え?」

「ワタシ、家族からはエリーと呼ばれていたので…」

「あ、うん。わかったよエリー」

「ちょっと考えたいから一人にしてください。あと…ありがとう」

「うん、じゃあ失礼するね」


ガチャリ


医務室から出てドアを閉める。

ちょっとは励ませただろうか。

何が言いたいのかもまとめることが出来ず、率直な言葉しか出てこなかったが…。

落ち込んだ人を元気づけたりするのはあの頃と変わらず下手なままだった。へこむ。


「ヨイチー!格好良かったよぉ~」

「ほんと、熱かったよね!いいな~ボクもあんな風に励まされたいな!」


ゲッ、こいつらが盗み聞ぎしてることを忘れていた!


「そんな、こいつら居たんだぁみたいな顔やめてよぉ~」


だから心を先読みしてくるのはやめてくれ。


「ボクのこともヌラリカさんじゃくて呼び捨てで呼んでよ!あと敬語とかも止めてよ!」

「あ~ヌラちゃん、いいないいな!私もヴィスって呼んで呼んでぇ~あと私にも敬語禁止ぃ!」


なんだか、表情が無い二人の感情が解ってしまう。

イメージ的には目をキラキラさせて尻尾を思いっきり振っている大型犬。

たまに犯罪者であるという事を忘れてしまいそうになるな。


「はいはい、ヌラリカとヴィス。これでいいか?」

「ムフーよい感じだよぉムフー」

「うぉ!」


ヴィスがピタッと横にくっついてくる。

いや、慣れたといえどもホラーな見た目してるんだから至近距離は勘弁してください…!


「とりあえず、ヨイチさんの部屋を決めなきゃね!ついてきて、案内するよ。いい部屋があったら言ってね」

「しばらくの間、医務室はあの子の部屋になりそうだしねぇ~」


しかし、なんでこんなに二人のテンションが高いのだろうか。


「そりゃそうだよぉ~…だって、ねぇ」

「そうだね、男同士の熱い友情物語なんてドラマでしか見たことなかったから!」

「「ね~!」」


重なる二人の声。










ン?


待って…待って待って待ってくれ。

オイ、今何って言った?何て言った!?


「?ドラマでしか見たことなかったから…って」

「その前!」

「友情物語?」

「もうちょい前!!」

「男同士の熱い友情物語?」

「ノーーーーーーーーーーーーーー!!!」


うっそだろ、お前!

え?エリーって男!?

どうみても美少女じゃろがい!


「私たちもA級犯罪者だけど、エリーは男性棟に収容されていたから実は初対面なんだよぉ」


返せ!俺のときめきを返せよ!!

あんまりだよ…こんなのってないよ!

…いやまぁ、励ますのは男だろうが女だろうが関係ないよ?

でもさぁ、気分的にさぁ…なんというか。

あれ?そういえばさっきの俺のセリフ、なんか告白っぽくなかったか…?

筋肉なんて関係ない。エリーはエリーだから。キリッ!貴方は綺麗で素敵だ。キリリッ!!みたいな…。

うぉぉ~~!!クッソ恥ずかしい!!!

何言ってくれちゃってんの、俺のバカ!!

絶望に襲われている中、更にヴィスがとどめの一言を俺に投げかける。

絶望を超えた絶望が俺を襲う。


「大丈夫だよぉヨイチ!さっきの一連の流れはしっかり録画してあるからぁ」

「止めろぉー!!」

ヒロイン回と言ったな。アレは嘘だ。

どちらかというと尻アス回。アーッ!

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