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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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探し物

No96

探し物





 マレルさんのお披露目会が終わってから数日が経った。あれから、アンリエッタさんと話をしてしばらくの間、アンリエッタさんの料理人達の下で料理の修行をさせてもらえるようになった。


 俺の方はいつもの日常へと戻り、この数日もアンリエッタさん所有の倉庫整理に汗を流していた。


 そんな中、マダラとの思念の会話はマレルさんの話をしている。

『セイジロウ、マレルはなかなかに見所がある奴だったのぅ』

「何だよ、突然?」

『いや、改めて思うとセイジロウには先見の明があったのだなと思ったんじゃよ』


「んな事は無いさ、たまたまだろ。もしあるとしたらそれはマレルさんだろうな」

『なぜじゃ? セイジロウがマレルを料理人に推したのではないか』


「いや、最初の出会いはマレルさんからの声かけだったから、俺がマレルさんを見つけたんじゃなくて、マレルさんが俺を見つけたんだよ」


 そう、マレルさんがあのとき俺に声をかけなければ、俺はマレルさんの露店に寄ることはなかったのは確かだ。


 マレルさんの串焼き肉には何の魅力もなかった。だから、俺もマダラも声がかかるまでそこに露店があるなんて気がついてなかった。でも、マレルさんからは俺達が見えていたんだ。だから、声をかけて串焼き肉を買わないかと話をしたんだ。


 自分達から見た視点と自分以外から見た視点の違いを考えれば、先見の明はマレルさんにあると俺は思う。あるいは強運なのか神の巡り合わせなのか.......


『ふむ.....セイジロウがそう思うならそれでよいじゃろ。お主がもしかしたら鼻高々になっているなら、斬り落としてやろうかと思ったじゃが.....つまらんの』


「どこがだよっ?! いちいち脅しが物騒なんだよ、マダラはっ! そして、なんでそう思ったの? 俺、何かしたかっ!?」


『最近、爪が疼いての。ちょっと適当に斬りたいんじゃよ。討伐依頼で外にも出ていないしの』

「この間依頼受けたじゃん....なんだよ爪が疼くって、(厨ニ病かよ)....まぁ、討伐依頼はこの倉庫を片してからだな。あと少し頑張れば終わるだろ.......それに、探してるんだけど無いんだよな....」


『何が無いんじゃ? 探し物があるのか?』


「うん...前の世界で言うとビールサーバーなんだけど.....温いエールを冷やして飲みたくてさ。マダラも温い果実水はあまり好きじゃないだろ? それに、そろそろ火水季が近いから冷たい飲み物があれば売りに出せるかなって」


『なんじゃ、また商売の話か....お主は商人では無かろうに....世界を股にする冒険者では無いのか? 未知の遺跡で財宝を探し、魔物が溢れるダンジョンに入り己の力を振るいダンジョンを踏破する。さらに、この世界の最強と噂される古代竜に挑み、富と名誉を欲する冒険者ではないのか?』


「なんだよ、それ?.....どっからそんな話を聞いてきたんだ? どこかのゲームで使われるキャッチコピーみたいだな....」

『街中でたまに耳にするのじゃ。あれは流暢な喋りでなかなかの語り部だとワレは評価したんじゃ』


「語り部...??......吟遊詩人か? 旅先で見たり聞いたりした事に脚色してる人か....」

『うむ、語り部の話はなかなかに面白いからのぅ。真か嘘かは分からぬが、どの語り部も才がなければ道行く人は耳をかさんからな』


「へぇ....俺も今度からは気にして周りを見てみようかな」

『して、何を探してるんじゃ? だいたい目録を見れば分かるではないか?』

「いや、さすがに全部は分からないよ。この世界では名前も違えば用途も違うだろうしさ」


『では、アンリに聞くのが早かろうに。もし無ければアンリに作ってもらえば良かろう』

「簡単に言うけど.....マダラから頼んでよ。そうすればアンリエッタさんは嫌とは言わないだろうし」


『ワレを出汁に使うと?....それはデカイ貸しになるぞ? それに、アンリにも貸しを作る事になるがそれでいいんじゃな?ん?』


「.....なんだよ、ケチっ...」


『ハンッ! ワレを出汁に使おうなぞ、万年早いわっ! そら、手を動かせ! 木箱を確認せんか! 整理が終わらなければ討伐依頼を受けれんではないかっ! ワレがうっかりお主を討伐してしまう前に終わりにするんじゃ!』


「こえぇよっ!バカっ! どこの世界に従魔が主をうっかりで討伐しちゃうヤツがいるんだよおぉぉっ!」


 俺はこの後、マダラのうっかりにビクビクしなが必死に木箱を確認して倉庫整理に奮闘した。その奮闘のお陰で二つめの倉庫が片付いた。アンリエッタさんの依頼の倉庫整理もあと二つの倉庫を片付ければ依頼完了だ。


 陽暮れに迎えにきたメイドのメイリーンさんに倉庫整理が完了した事を伝え、倉庫内を確認してもらった。


「.....確かに確認しました。きれいに整理されてますね、お疲れ様でした」

「いえ、依頼ですから。それと、一つ聞きたいことがありまして...」

「はい、なんでしょうか? わたしに答えられる事でしたらお答えします」


「えっと...温い液体を冷やす魔導具はありますか?」

「魔冷箱でしょうか?」

「いえ、温い液体を瞬時に冷やして、その場で飲める...みたいな? 分かりますかね?」


 メイリーンさんは俺の説明を聞きながら顔をちょっと傾ける仕草が可愛いと思ったのはフローラさんに内緒だ! 俺だって男だからたまに考えちゃうのはしょうがない....しょうがないだろ?


「....やはり分かりませんね...申し訳ありません。ですが、アンリエッタ様ならお分かりになるはずです」

「いえ、メイリーンさんに非はありませんから、気にしないでください。アンリエッタさんには私から話をしますよ。今日は宿に帰って、明日伺います」


「わかりました、その様にアンリエッタ様にお伝えします」

 と、この日はアンリエッタ邸に戻ったあと、メイン通りで軽く買い食い改め買い溜めをして"餌付け亭" に帰った。


 その夜に女将のロゼッタさんに、液体を瞬時に冷やす魔導具に心当たりがないかを聞いてみたが、

「知らないねぇ....魔冷箱で冷やして飲めば良いじゃないかっと、言いたいが高いし冒険者には無用の長物だしね....」


 と、ごもっともな意見を言われてしまった。


 ビールサーバーがあればなぁ.....

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