自分の選択・5
No94
自分の選択・5
俺はマレルさんと酒場に来ていた。マレルさんが料理が旨いと聞いた店に入り料理を食べてみたが、実際は口に合わなかった。
その後すぐに店を出てから俺がアルタロスのスベンさんに紹介してもらった酒場にきて、こうしてラームエールとシシャモンを食べながらマレルさんの話を聞いていた。
そして、俺は本題へと話を変えていった。
「マレルさん、今日お時間をとってもらったのは他でもありません。私が考えてる計画に参加してほしいのです。それに、参加すればマレルさんの夢が限りになく近くになる事と私の知る調理法を教えます。どうですか?」
マレルさんの目的、夢は、ルインマスの街で自分の店を持つ事と肉汁溢れる肉の調理と旨い肉料理または、旨いと思える料理を作る事だ。
なら俺が話した提案に乗ってくれるはずだ。俺はマレルさんに今考えられる、俺の最高の選択肢をマレルさんに提示した。この計画に乗れば、マレルさんの夢は叶う。あとは、やればやるだけ幸せになるはずだ。
そして、俺にも利はある。俺の中で冒険者ギルドの食事処の改装計画は決定済みだ。あそこをマレルさんに任せて"鉄板焼き" と"天ぷら" の元祖になってもらう。
改装準備期間中にアンリエッタさんの料理人達に調理の基礎を教わり、かわりにマレルさんが持つ魚介類の知識と調理法をアンリエッタさんの料理人に教えるギブアンドテイクだ。
互いの利があって、そして切磋琢磨する事で知識も技術も相乗的に何倍にもなるはずだ。誰もが利を得て損失は最小になる。ローリスクハイリターンだ。
「セイジロウはどうしてそんな話を俺にするんだ? 俺はただの元露店主だぜ? 商才も無いし頭も悪い。セイジロウが考える計画は多分だが凄いんだろう....もっと他にいるだろう?」
「そうですね、確かに他に相応しい人はいるでしょう。別に私が人を集めなくても逆に集まってくるほどです。ですが、私はマレルさんが良いと判断しました。私がそれを選んだのです」
最初はちょっと罪悪感があった。串焼き肉は売れないと最後宣告をマレルさんに言った。でも、それはマレルさんが悪いと思った。もっと試行錯誤出来てたらこうはならなかったはずだと。
マレルさんが店を閉めると言った時は、罪悪感がありつつも納得する自分がいた。仕方ない、しょうがない、あなたが悪い、俺は悪くない、そんな自分自身を納得させる言葉を探していた。
だが、マレルさんは自分の意思で選択したのに俺は何を選択したのか? と、マダラの言葉を聞いて考えた。そして、マダラの言葉と俺自身の選択を考えだした。
俺とマレルさんの最上となる選択肢を。
「マレルさん、私はあなたが作る肉料理が食べたいです。正直言えば、魚介料理も食べたいのですが....私があなたを選びました。マレルさんは俺を選びますか? あとはマレルさん次第です。私にこれ以上の選択肢は用意出来ませんから」
俺はマレルさんの前に手を出す。出来れば手をとってほしいが、別にとらなくても良いと思う自分もいた。俺はマレルさんに選択肢を与えられただけで満足だった。
ただの自己満足かもしれない。きっとそうだと思うが、それでもマレルさんからしたら可能性の選択肢が目の前にあるのは変わらない。
だが、マレルさんの手と俺の手はしっかりと握られた。
ガシッ!!
「いいぜっ! セイジロウに任せるぜっ!どうやら、田舎に帰るのはもう少し歳をくってからだな!」
「はい、もう少しシワが増えてからでいいでしょう」
マジやったぜ! あそこまで準備してスカウト失敗しちゃったっ! なんて言えないからな....では、時間も少ないから....ん?時間......あっ!!
「マレルさんっ! マズイですっ俺、依頼途中なんですよ! すでに、一時間以上オーバーしてます! すぐに、俺と一緒に来てください!」
「おっ! おい、セイジロウっ! 引っぱんなよっ! おーいっ!」
俺はマレルさんを連れてすぐにアンリエッタ邸へと向かった。そして、執事のシバスさんとメイドのメイリーンさんに心配をかけてしまった。
午後の倉庫整理に向かおうとしたが、アンリエッタさんとマダラが裏庭で日向ぼっこをしてるらしく、この後はマレルさんに計画の話と夕食に行う鉄板焼きの説明時間に変更した。
「マレルさん、これからよろしくお願いします」
「おうっ! セイジロウ、よろしく頼むなっ!」
さて、マレルさんにはしっかり勉強してもらってたくさん作って俺の小金を稼いでもらうかな...ククク、ついでに俺達のメシも作ってもらおう。




