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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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チョロいマダラ

No89

チョロいマダラ





 アンリエッタさん所有の倉庫を昼まで整理して、今はアンリエッタさんと一緒に裏庭のテーブル席で昼食を食べている。

「セイジロウさん、サッちゃんと例の話を進めてますからもう少し待っていてください」


「はい、私の方は構いませんよ。アンリエッタさんがやり易いようにやってくれれば」


 アンリエッタさんが言った例の話とは、俺が先日デモンストレーションをした"鉄板焼き" の話だ。


 冒険者ギルドは、俺の料理レシピを使い福次収入を得たいと考えてる。

 アンリエッタさんは、俺の料理を使い自身の料理店をルインマスを始めアーガニウム国さらに、他国に展開して収益及び自身の魔導具を広めるつもりだ。


 で、俺は料理レシピじゃなく、調味料レシピを冒険者ギルドかアンリエッタさんに買い取ってもらい、売り上げの一部を定期収入したいと考えてるわけだ。


 あのデモンストレーションで作った料理レシピはすでに、アンリエッタさんの料理人達に知れ渡っているので、交渉はアンリエッタさんに分がある。


 まぁ、料理だけでも客は集まるが、味付けにいずれ飽きてくるはずだ。塩、胡椒、ハーブでは限界がある。長い目を見れば新しい調味料が開発されていくだろうが....


 だが、料理レシピも調味料レシピ、さらに調理法を知ってる俺が飲食店を開店させればどうなるか? 一代にして食の革命を起こし莫大な富と権力を築く事は想像に難くない。


 しかし、俺はそれを望んでいない。俺は平々凡々に楽しくのんびり暮らしたいのだ。明らかに社畜ワーク、ブラックワークが見えてる未来に興味はない。そんなのは、やりたい奴にやらせればいいのだから。

「セイジロウさんはそう言いますけど、サッちゃんが納得してくれないんですよ?サッちゃんが主体で進めていいよって、わたしは言ってるのに、"あなたも一緒にやるのよっ!"って」


 そりゃ、そうでしょう。天ぷらに唐揚げ、さらに鉄板焼きの調理法は話題性抜群だ。噂が広がれば後は爆発的に拡散する。


 そうなれば、もし冒険者ギルド主体でやったらサーシャさんの仕事がとんでもない量になる。一人で捌けるはずもない。さらに、富と権力に渇望する有象無象もやってくるだろうな......

「ギルドマスターも必死なんですよ。商業ギルドは絡んでないんですか? 仕入れに販売、店舗、魔導具なんかが絡めば、自然と商業ギルドも動きますよね?」


「そっちもサッちゃんが話を回しているみたいですよ。だから、今はちょっと機嫌が悪いみたいなんです。この間行ったら、"今は忙しいからまた今度っ! 少し待ってなさいっ!"って、言われました」


「ハハハ....なら待つしかないですね。....それより、料理の研究は進んでますか?」


「まだ、何ともですね。天ぷらは色々な具材を油で揚げて試してるみたいです。唐揚げは下味の試作と揚げる食材を試してるそうですよ。同時にトンカツもですね」


「そうですか...今は料理メニューを増やす事に時間を使うのは良い事ですよ」


「それと、セイジロウさんが作った調味料の研究もしてますよ?」


 えっ? それはちょっと不味くない? あれがバレちゃうと俺の手札が減っちゃうし、小金が稼げ無いんですけど....


「....それで、進展はどうなのですか?」


「全然、分からないそうですよ。あの調味料が無いと料理の完成度が極端に落ちると、料理長が言ってました。唯一、分かるのがスッパの実を使った和え物ぐらいで、カモンネーズにタルタルソースはお手上げだそうです」


 よっしっ!! あぶねぇ....さすがにあの2つがバレたら小金ウハウハ計画が台無しだからな....スッパの和え物はしょうがないか。素材名が出ちゃってるし...


「でも、2つの調味料が無くても料理としては成り立つのでは?」


「わたしもそう料理長に言いましたけど、いずれ類似料理が出てくれば汎用になってしまって、数多ある料理の一つになると言ってました。あの調味料があるからこそ料理が引き立つと」


「すいぶんな評価で.....私は条件の良い方に調味料レシピを売るだけですから」

 しかし、マヨネーズとタルタルソースを考えた人をさすがだよな。それに醤油と味噌も.....使う素材は特別な物じゃないのに。


△▽△△△▽▽△


 アンリエッタさんとの昼食会とマダラとアンリエッタさんのモフモフ休憩時間も終わり、午後から夕方にまで倉庫整理に汗を流す。

「マダラ、こっちの木箱は確認したから影に入れてあっちにおいてくれるか?」

『ふむ、わかった。次はそっちか?』


「う~ん?....だな。そっちを片付けてスペースを確保するか」

『ふむ、手早く片すぞ』

「なんだ? ずいぶんとやる気じゃないか?」


『ふむ、昼食の時にアンリが余った料理をくれると言ってくれてな』

「えっ?....それってタダで?」

『そうじゃ。アンリの料理人達が料理の試作の為に作るのはいいが、処理するのが大変らしいんじゃ』


「それで、マダラにくれると?」

『そうじゃ、ワレとしては断る理由がないからの』


 そりゃ、マダラにとってはそうだけど....いいのか? 貸しとかじゃないよな? アンリエッタさんがまさか無理やり恩着せがまし事をするとは思えないけど.....


「マダラ、その時にアンリエッタさんから何か言われた? 頼まれ事とか、俺の調味料レシピの事とか.....」


『んっ? なんじゃ、アンリが画策してるのではと疑っているのか?』

「まぁ....無いとは言いきれないし、疑いたくないけど....」


『心配するでない。ちゃんと釘をさしてあるわ。ふん、ワレはその程度でなびくはずないじゃろが!』

 イヤ、力強く言っても説得力ないし、すでにやる気出してる時点でダメじゃん.....


「うん....なら良いんだけど....ホントに大丈夫だよな?」

『大丈夫じゃと言ったではないか、聞いてなかったのか? さっさと、木箱を確認せんかっ! 料理を減らされたらどうするんじゃっ!』


 はぁ....手遅れだったわ......どうしよ?



 俺は倉庫整理をしつつも、マダラの餌付けに対してどうアンリエッタさんに対抗するかを考えながら、メイリーンさんが迎えに来るまで倉庫整理をした。


 馬車に乗ってアンリエッタ邸に着いた後、試作の料理をマダラの影に保管し、明日も朝から来る事をメイリーンさんに伝えて宿へと帰った。


 ちなみにマダラは、馬車移動中は影の中に入ってもらってる。

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