フローラさんから手紙が届く
No87
フローラさんから手紙が届
アンリエッタ邸でのデモンストレーションから数日経ち、アンリエッタ邸の倉庫の一つが綺麗になり、さらに、ハルジオンにいるフローラさんから手紙が届いた。
手紙が届いた日はめちゃくちゃ嬉しくて、討伐依頼と採取依頼を受けちゃったぜ!
普段ならしょうがなく受ける依頼だけど、今回はニコニコ顔で依頼を受けた。別に普通に受ければ良いんだけど、つい顔がニヤニヤしちゃって....エヘヘ!
その際には受付嬢のシンディさんには、「どなたからの手紙かは分かりませんが、浮かれすぎると手紙を読む前に死にますよっ?」
と、冷静に言われた。
そんな冷たく言わなくてもいいじゃんか! こっちに来てまだ、馴染める人もいないし、好きな人からの初手紙が来たら誰でも喜ぶだろっ!
前の世界じゃ、手紙のやり取りするカップルなんて珍しかったし、手紙を書く習慣すら無かったんだから....
もうプリンを作ってやらないぞ? いいのかっ? んっ?
さて、ちゃっちゃと討伐して採取してフローラさんの手紙を読まなきゃ!返事も書かなきゃなぁー!
そんな風に考えてると、マダラから思念が飛んできていた。
『--おい、セイジロウ! 聞いてるのかっ!?』
「えっ?.....あぁ、悪い聞いてなかった。なんだっけ?」
『じゃから、どこの門に向かうのじゃ?』
「あっ、えっと...第2西門かな、そこから出て西に半日...俺達なら数十分だけど、その辺にコボルトの集団が確認されたらしい。その討伐と採取依頼だな」
『しっかり気を引き締めんと、命を落としかねん。どうせ、フローラからの手紙で浮かれておったんじゃろ?』
「へへ、わかる?」
『分かるに決まっておるわ。セイジロウを守護するのはワレの役目じゃが絶対ではないのじゃ。覚えておくんじゃぞ?』
マダラにちょっと説教されながら、一緒に第2西門にむかった。
ちなみに、ルインマスの街は東側に海があって、北、西、南に縦長い街になってる。前の世界のチリみたい形? まぁ、あれよりもっと幅が広く規模は小さいけどね。
で、ルインマスの街は城壁に囲まれているわけで、俺とマダラが最初にくぐった西門が第1西門で、今向かっているのが第2西門、さらに、第3西門と第4西門がある。北と南は1つずつしか門がない。
「じゃ、気を引き締めて討伐に向かいますか....」
『当然じゃ、夜は肉を所望するぞ。最近は魚ばかりで、ちと飽きたからの』
「はいはい、ならその分頑張れよ」
と、第2西門からマダラに股がり討伐に向かった
コボルト集団が確認された西森に行く途中で、数匹のゴブリンを狩りつつ目的地につく。
「多分、この辺かな.....マダラ、適当にちょっと調べてくれる? 人は傷つけちゃダメだよ」
『わかっておる、しばし待っておれ』
俺は、マダラがコボルト集団を探してる間に、採取依頼のマッシュボックリを探して採取する。これは茸? の様な木の実で香り豊かで、水で洗って細かく刻んでサラダに添えてもいいし、薄くスライスしてステーキの付け合わせにしても旨い木の実だ。
周囲を警戒しつつマッシュボックリを採取してると、マダラが茂みから現れた。
『セイジロウいたぞ、どうやら食事中らしいな。少し拓けた場所で仕留めた獣を食っていたぞ。数は7匹だな』
なら、警戒心も緩くなってそうだな....
「じゃ、行くか....」
俺は、マダラに股がりコボルト集団がいる場所の近くまでいく。
『ここから、100メートル程の先にいる。準備はいいか?』
『いいよ、行ってくれっ!』
マダラが素早くコボルト集団がいる所まで駆け出した。俺は、体内で魔力を練り上げ魔法のイメージを作り出し準備をする。
すると、すぐにコボルト集団の眼前に出た。確認と同時に、
「土穴葬送っ!」
コボルト集団の足元にポッカリと穴があき、コボルト集団が穴に落ちた。そしてさらに、
「土針葬舞っ!」
土穴の中の側面から土針が何本も現れ、瞬時にコボルトの体を突き貫く。落とし穴と針のダブルコンボだ。
「さて、討伐完了だな。マダラ、コボルトを糧にしていいよ」
マダラは討伐されたコボルト集団の死体を影に入れ、俺は自分で作った土針と落とし穴を元に戻す。
『しかし、ワレから見てもセイジロウは慈悲がないの。まるで、刑を執行する執行者のようだな』
「もうちょっと、言い方あるでしょ? 俺だってこんな悪辣なやり方はしたくないけど、確実なんだからしょうがないじゃん
。現実と物語は違うだよ...命のやり取りに綺麗事は要らないんだよ」
異世界ファンタジーの戦闘のように、多彩な魔法や目が覚める様な剣舞は必要ない。いかに安全に素早く殺せるかによって、自分の命の有無が決まると俺は思ってる。
「さて、まだ陽は高いしこの間に行った沢に行こうか。あそこなら見張らしもいいし、広いから魔法の特訓ができる」
『ふむ、あそこか....分かった。ワレは周囲で体をうごかしていよう』
話が決まり、沢に向かった。そこで陽が暮れる少し前まで魔法の特訓をしてからルインマスの街に帰った。
冒険者ギルドに向かい、依頼報酬を受け取ってから宿へと戻った。宿の夕食を食べてから、部屋でフローラさんの手紙を読む。
手紙の内容は、俺がハルジオンの街を出てからの事と近況報告が書かれていた。そして、俺が居なくて寂しいとも書かれていた.....
俺はすぐにマダラの影から手紙セットを出してもらい、フローラさん宛に手紙を書いた。